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白い靴のまま、消えなかった

作者: 花守 ことは
掲載日:2025/12/25

「消えなかった、という感覚について。」

「まだそこに立ってるの?」


体育館の隅で、床を見ていたユキは顔を上げた。

声をかけてきたのは、片づけ係の男の人だった。


「すみません、今、行きます」


そう言いながらも、足がすぐには動かなかった。

さっきまでいた場所を、まだ体が覚えている。


ユキは今日、前に出て何かをする役目だった。

準備もしたし、頭の中では何度もなぞった。

でも途中で、ひとつ大事なところを落とした。


「途中、止まったよね」


更衣室で、友だちが言った。

責める感じじゃなくて、確認するみたいな声だった。


「うん。落とした」


「そっか。でも、戻ってきたじゃん」


ユキは黙ったまま、靴ひもを結び直した。

白い靴に、うっすら汚れがついている。


「戻ったけどさ」

「戻ったけど、あれは失敗でしょ」


友だちは少し考えてから言った。


「失敗かどうかは知らないけど、

 途中でやめた人じゃないのは確かじゃない?」


ユキは顔を上げた。


「やめた人じゃない?」


「うん。やめる人は、座るか、逃げるかするでしょ」


その言い方が、妙に具体的で、少し笑ってしまった。


帰り道、風が冷たかった。

自販機の前で立ち止まり、ユキは温かい飲み物を選ぶ。


「今日は、ダメだった日だよな」


独り言みたいに言うと、

隣にいた知らない人がちらっとこちらを見た。


でも、カップを持つ手は震えていなかった。

足も、ちゃんと前に出ている。


ダメだった。

でも、消えなかった。


白い靴は少し汚れたけど、

まだ履ける。


ユキはそう思いながら、

信号が変わるのを待った。

読んでくれて、ありがとうございます。

うまくできなかった日のあとに残る感覚を書きました。

もしどこか一行でも、心に残ったらうれしいです。

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