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転生したら推しが魔王様になってた件~①三千年の時を超えて会いに行きます!  作者: 銀文鳥


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第十三章(1):三千年の時を超えて、愛を叫ぶ


創造神ガイア様が天空へ撤退し、神と魔王の戦いが終わった。


世界の危機は去り、張り詰めていた緊張感は嘘のように消え去り、穏やかな空気が世界を包み込む。


ルシアン様から放たれる魔王としての圧倒的な威圧感が、徐々に収まり、やがて消え去っていくのがわかった。


長く伸びた銀白色の髪はそのままに、角はなくなり、牙も消え、爪も元の長さに戻り、その姿は、あの頃の、少し大人びた人間の青年の姿に戻っていく。


深淵の魔力の奔流は止まり、纏う気配は、あの頃の、懐かしいものとなった。


歪んでいた空間も元に戻り、まるで何もなかったかのように平和な時間が流れ始めた。



ガイア様を退けたのは、魔王となったルシアン様。


宝珠の隠された力、創造神の力を吸収する能力……


ルシアン様が異界で手に入れた力は、本当に規格外だった。私の、私の最推し、最強すぎる……!





異界へのゲートの傍らで、私たちは、三千年ぶりに再会したルシアン様と、言葉にならない感動に包まれていた。


カスパール君は号泣し、ローゼリアちゃんは涙し、アルドロンさんは静かに安堵の表情を浮かべている。



そして、私は……



魔王としての圧倒的なオーラを纏いながらも、私に温かい微笑みを向けてくれたルシアン様を、ただただ見つめていた。



私の、私のルシアン様だ。


どんな姿になっても、彼こそが私の世界の中心。


私の最推し!


会いたかった……!



ルシアン様は、私たちが宝珠の導きで自分を探し出してくれたことに感謝を述べてくれた。


宝珠は、本当に私たちとルシアン様を繋ぐ、ルシアン様が遺してくれた希望だったんだ……!





「そして、……セラフィナ」



ルシアン様が、私の名前を呼び、私に視線を向ける。


彼の蒼い瞳に、何か、言葉にするのを躊躇うような光が宿っている。





「お前の……その……『推し活』……というものも……見ていた」



「……は?」





***





(ルシアン回想)



アルドロン、ローゼリア、そしてセラフィナ。


彼らが天寿を全うしたあと、宝珠の光は完全に途絶えたように思えた。


だが、ほんのわずかだが、紫色の光が遠くに見えた。


そして、俺のいるこの異界のすぐそばに、ある気配を感じるようになった。



「カスパールか……」



宝珠で彼の様子を見ることはできない。


おそらく異界と現実の狭間のような空間にいるのだろう。

彼は禁忌を犯したはずだが……。


カスパールは魔導の力をうまく行使し、その身を保っているのだろう。



「異界のすぐそばまで来るとは……カスパールもかなりの力を持っている。よくもここまで、血の滲むような努力をしたものだ。」


カスパールの俺への強い思いを感じる。



俺はここで腐っているわけにはいかない。



いつかカスパールをこの狭間から助け出すためにも、そして俺自身のためにも!



俺はヴェクスと何度も、何度も、戦った。


この場所で得た新しい技、高度な魔法で、ヴェクスを追い詰めていった。



そして、ついに、この異界でヴェクスを完全に打ち倒す時が来た。


ヴェクスは相変わらず強大だったが、俺はもう、比べ物にならないほど強くなっていた。



異界の魔力を完全に掌握し、自身の力に変えていたのだ。


異界の魔力は特殊で、俺の体を維持し、年を取らせなかった。


俺はあの頃の青年のままだった。



しかし、異界のおぞましい魔力を取り込むことで、俺の体は変化していった。


銀白色の髪は長く伸び、漆黒の衣を纏うようになった。


頭部には、闇を宿したかのような漆黒の角が生え、指先には鋭い爪が伸びていく。


俺の瞳の蒼は、異界の深淵を映すかのように冷たい色を帯びていく。


体から放たれるオーラは、人間を畏怖させる「魔」の気配となった。



俺は、異界の理そのものとなり、魔力を完全にコントロールできるようになった。


意識すれば魔力を抑え込み、人間の姿に戻ることもできたが、異界では常に魔力が必要だった。



「終わりにしよう、ヴェクス。」



俺の瞳が強烈な光を放つ。


その光だけで周囲にいた魔物たちは消滅した。



終焉の一撃(エンド・ストライク)!」



俺は異界の根源的な魔力を解き放ち、ヴェクスの存在そのものを、世界の理から、根源から消滅させる一撃を叩きつけた。


ヴェクスは断末魔の叫びをあげ、黒い泥となって完全に崩れ去った。


二度と再生できないように、その存在の根源から、完全に消滅させたのだ。





ヴェクスを倒したことで、俺はこの世界における絶対的な力となった。


魔物たちは、俺の圧倒的な強さと、ヴェクスを滅ぼした力を見て、恐れおののいた。



抗う者はいなかった。



逆らう者は、容赦なく排除される。


俺は、力をもって魔物たちを従え、新たな秩序をもたらした。


それは、かつて彼が護ろうとした人間界の、ガイアが定めた秩序とは全く異なる、力による、絶対的な支配だった。



魔物たちは、俺の冷徹さと圧倒的な力を恐れながらも、俺を絶対的な王として崇拝した。


彼らは俺に忠誠を誓い、俺の命令に唯々諾々と従った。





俺は、魔界の玉座に座る。





圧倒的な力を得て、魔界を支配する存在となった。





俺が異界に跳び、十数年が経った頃、人間界では三千年もの歳月が流れていた。



かつて勇者として共に歩んだ仲間たちは皆、それぞれの天寿を全うし、彼らと俺を繋ぐ宝珠の光は、完全に途絶えて久しかった。



そんなある時、ふと、俺の黒い宝珠の指輪が微かに輝き始めたのだ。


魔王としてこの身を異界に置く俺だが、再び人間界の様子が見えるのではないかという淡い、しかし胸を焦がすような期待を抱いた。



柄にもなく、緊張でごくりと喉を鳴らしながら、俺は宝珠の力でその光景を覗き込んだ。





すると、彼らが、あの頃と変わらぬ姿で転生し、再び宝珠を手にし、俺を探し求めているのが見えた。



アルドロンは相変わらず賢く、ローゼリアは優しく、カスパールも無事に転生できているようで安心した。


宝珠を通して、彼らが力を取り戻していく様子を見守った。


彼らの成長、そして……変わらぬ絆。



そして……セラフィナ……。



彼女は、俺を探すことを、人生の目的としているかのようだ。


彼女のまっすぐな瞳、俺の名前を呼ぶ声、俺への溢れるような感情……それらが、この魔界の孤独の中で、俺を人間として繋ぎ止めてくれた。





宝珠を通して見た、セラフィナの様子は……


度肝を抜かれることばかりだった。



「ルシアン様、マジ尊い!」「今日のルシアン様の髪の靡き方まで完璧……!」なんて、よく分からない言葉を口にしながら、俺の姿を描いたという、小さな板のようなもの(アクスタと呼んでいたな)を嬉しそうに眺めている。


俺の活躍を「推し」として熱狂的に応援し、時には涙ぐみ、時には奇妙な踊り(尊いダンスと呼んでいたな)を踊り出す。



そして……



自分が日本の女子高生だったこと、俺が彼女の元の世界の「物語」に出てくる存在だったこと、そして俺が彼女の「推し」であると、仲間たちに熱く語っている様子も見た。


彼女が語る「推し活」という概念も、俺には全く理解できなかった。


俺という存在を、そんな風に見ているのか?



「推し」とは何か?



熱狂的に応援し、全ての情熱を捧げる存在……?


それは、俺がかつて勇者として目指した「世界の守護者」とは、全く異なる概念だ。



だが、彼女の目に宿る、偽りのない、純粋な「大好き!」という感情……それは、この異界の深淵よりも、遥かに深く、温かい光を放っていた。



セラフィナの、俺に対するまっすぐな、隠そうともしない好意は、宝珠を通して痛いほど伝わってきた。


そんな彼女の純粋さに触れるたび、魔王としての冷たい外見とは裏腹に、俺の心は温かくなるのを感じた。



他の誰でもない、セラフィナ。



彼女の揺るぎない信頼と、向けられる、あまりにも強すぎる「推し愛」は、この異界の孤独の中で、俺にとって、何よりも代えがたい、心の拠り所、宝物だった。


冷静な仮面の下で、俺は静かに、しかし確かに喜びを感じていた。


魔王となった俺に、こんなにも純粋な、熱い感情を向けてくれる存在がいるなんて。



そして、彼女の言葉を聞くたび、彼女の俺を思うときの熱っぽい表情を見るたび、俺の心臓は、ほんの少しだけ、速く鼓動するのを感じていた。


これが……人間としての感情……?


それとも……?


「推し」とは……


本当に、理解不能だが……


面白い概念だ。



特に、彼女が俺の「アクスタ」というものを大切そうに持っているのを見た時……なんだか、こそばゆくて、少し……照れた……なんて、魔王の俺が思うなんてな。





魔王となった俺を見て、彼女は恐れるだろうか?


失望するだろうか?


その考えが、胸を締め付ける。



だが、彼女が俺を探し続けてくれているという事実だけで、俺はどれほど救われたか。


彼女の「推し」への愛が、俺を人間のままここに存在させてくれた。



アルドロンは、相変わらず冷静で、賢者としての探求心を失っていない。


ローゼリアは、以前にも増して優しく、世界の人々を癒やそうとしている。


カスパールは……


辛い境遇で心を荒ませていたが、俺を探し求める執着心は失っていなかった。


彼らが力を取り戻していく様子を、宝珠を通して見守っていた。


宝珠が彼らの縁の地へ導き、彼らの力を覚醒させていく仕組み。



それは、俺が来るべき脅威に備えて宝珠に仕込んだ機能の一つだったが、まさか、彼らを俺の元へ導くための道標となるとは、開発した当初は思ってもみなかった。


宝珠は、俺と彼らの絆そのものだった。





そして、ある晩……



宝珠の光が捉えた光景に、俺は息を呑んだ。



セラフィナが、アルドロンやローゼリア、カスパールと共に、俺の姿が描かれた板『アクスタ』を囲み、真剣な顔で……毎晩のように、俺の無事と帰還を祈る言葉を捧げているのだ。


彼らの嘘偽りのない願い、宝珠を通して伝わってくる強い思いは、異界の深淵にいる俺にも、痛いほど伝わってきた。



彼らが、毎日、その祈りを捧げるようになってからか、俺は、創造神ガイアの存在を強くはっきりと感じ取ることができるようになった。



彼女が異界に干渉しようとしている。


異界から放たれる、俺の力の高まりに気づいたのだろう。


そして、俺のことを恐れている。



彼女は……


勇者たちが俺を探し出すことを阻止しようとしている。


自分のお抱えの聖裁騎士団を使って彼らを攻撃させてまで、もうなりふり構わずといった感じだ。



勇者たちが危険に晒されるかもしれない。


ガイアの冷たい神光が、彼らに向けられるかもしれない。



もう二度と、大切なものを失いたくない。



ヴェクスを異界に送ったのは、彼らを護るためだった。


その俺が、彼らを危険に晒すわけにはいかない。



決意を固めた。


異界から現れる時が来た。


彼らを護るためには、直接対峙するしかない。



魔王となった俺の力で、創造神ガイアを止める。



(ルシアン回想終わり)





***





ルシアン様の言葉に、私の頭の中は真っ白になる。


「推し活」……異界から……ルシアン様が……私の推し活を……見ていた……?





「え……えええええええええええええええええええええええっ!?」





私は、顔が真っ赤になり、両手で顔を覆った。



私の……私のルシアン様尊いノート(通称:推しノート!)とか、ルシアン様のアクスタを拝む様子とか、ルシアン様への愛を叫び散らかしていた様子とか……っ!


その全てを、推し本人に……っ! 見られていた……!?


羞恥心で、今すぐ異界に跳びたい衝動に駆られる!



アルドロンさん、ローゼリアちゃん、カスパール君も、ルシアン様の告白に驚いている。


彼らも、まさか自分たちの日常、特に私の推し活が、異界にいるルシアン様に見られていたなんて、思ってもいなかったのだろう。



カスパール君は、私の様子を見て、引きつったような顔をしている。



「ルシアン様……! ぜ……全部……見てらっしゃったんですか……!?」



私は、顔を覆ったまま、震える声で尋ねた。


ルシアン様は、少しだけ……本当に、ほんの少しだけ、頬を染めたように見えた。


そして、穏やかな、だけどどこか照れを含んだ声で答える。



「ああ……全部……見ていた。お前が、俺を探し続けてくれる様子……俺への……その……熱い思い……見ていた」



(推しが……私の推し活を見ていて……しかも、照れてる……!?!?!?)



私の脳内語彙力は、今度こそ完全に崩壊した。


羞恥心と、そして、それ以上に、ルシアン様が私の推し活を、私のルシアン様への思いを、見ていてくれた、受け止めてくれた、そして少しだけ……照れてくれたという事実に、途方もない「尊い」が押し寄せ、私の心臓は爆発寸前!



ああ、尊い……



尊い……



尊い……!



「う、うう……すいません……! でも……でも、ルシアン様は、私の、私の……最推し、ですから……! 大好き、ですから……っ!」



恥ずかしさのあまり、声が裏返りそうになりながらも、私は、ルシアン様への、偽りのない、まっすぐな気持ちを伝えた。



もう、隠せない。



隠したくない。



ルシアン様は、そんな私の様子を見て、優しく微笑んだ。



その微笑みは、魔王としての冷たい外見とは裏腹の、温かい、そして愛おしむような光を宿している。


「知っている。お前のその気持ち……宝珠を通して、痛いほど伝わってきた」



ルシアン様が、一歩、私に近づく。


そして、両手を、私の顔を覆う私の手に、そっと重ねた。



「セラフィナ……前世では、勇者として、世界の平和を護る使命があった。創造神ガイアの騎士として……感情に流されるべきではないと……お互いの気持ちに、気づかないふりをして、距離を取っていた。互いの立場、世界の均衡……様々なものに縛られていた」



彼の蒼い瞳が、私の緑の瞳をまっすぐに見つめる。



「俺は……異界へ行って気づいた。二度と、大切なものを失いたくない。もう、後悔はしたくない。俺が魔王になった今でも推しでいてくれるか?」



「もちろんです!!魔王のルシアン様も本当に素敵です!もう、素敵すぎて言葉がありません。前のルシアン様も素敵ですけど、どんなルシアン様も私にとっては最高のルシアン様ですっ!」



ルシアン様は、私の顔を覆っていた私の手を取り、彼の温かい手で、私の頬を優しく包んだ。



「俺は……お前だけの推しになろう。だから……もう、俺から離れるな。俺の傍にいてほしい」



ルシアン様の言葉に、私の心臓は、止まるかと思うほどに大きく跳ねた。


彼の、温かい手。


彼の、まっすぐな、真剣な瞳。


彼の、私への想い。



(ルシアン様が……私の推しが……私に……告白……!?)



恥ずかしさなんて、もうどうでもよくなった。


あるのは、途方もない喜びと、そして、この温かい手を、二度と離したくないという、強い思いだけ。



「ルシアン様……っ……はい……! はい、ルシアン様……! どこへも行きません……! ルシアン様の……傍にいます……!」



私の声は、感動と喜びで震えていた。


私は、ルシアン様の温かい手に、そっと自分の手を重ねる。


この手は、もう、離さない。


二度と、大切な「推し」を失う悲しみは、味わいたくない。


前世では、使命ゆえに抑え込んでいたこの気持ち。


異界での別れを経て、ルシアン様も、私も、素直になることを決めていた。



アルドロンさん、ローゼリアちゃん、カスパール君は、私たちの様子を見て、ただただ呆然としている。


目の前で、魔王となったルシアン様と、聖剣の使い手である私が、お互いの気持ちを告白し合い、両思いになっている。


想像もしていなかった光景だろう。


ローゼリアちゃんは、目を丸くして、感動したように胸に手を当てている。


カスパール君は、口を半開きにして、完全に固まっている。


アルドロンさんは、目を細めて、静かに、そして温かい眼差しで私たちを見守っていた。彼も、この時が来ることを、どこかで願っていたのかもしれない。



こうして、魔王となったルシアン様は魔界へは戻らず、私たち四人の勇者と共に人間界で共同生活を送ることになった。


ルシアン様を含め、真の五光がここに再集結したのだ!





ルシアン様が魔界へ戻らないのは、人間界がまだ完全に安定しておらず心配なこと、そしてガイア様は一時的な休息に入っただけでいずれ復活する可能性があること。



そして、何よりも……


「ここは、俺にとって、お前がいる、大切な場所だからだ」


ルシアン様が、優しく私の頭を撫でてくれた。


その蒼い瞳には、私への深い愛情が揺らめいている。


(私を「大切な存在」なんて……っ、ルシアン様……っ、尊い……!)



まさか、私の最推しであるルシアン様と、両思いになれるなんて!


信じられない……!



魔王となっても、こんなにも優しくて、愛おしい推し。


これからもずっと、彼を愛し、推し続けることを誓う。

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