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six socks  作者: AI子
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night movie

 凌生がリビングのテレビにDVDをセットしているのを見て、大翔は首をかしげた。


(珍しいな、いつもは自室のパソコンで見るのに)


 シェアハウスのリビングは広く、大きめのテレビが置かれている。けれど、ここで映画を観る人はあまりいない。なぜなら、リビングは共有スペースなので、途中で誰かが通ったり、話しかけられたりすることもあるからだ。凌生は一人で集中して映画を観るのが好きなタイプだと思っていたのに、どういう風の吹き回しだろう。


「一緒に見るか?」


 唐突に言われ、大翔は少し迷った。


「……うん、いいよ」


 タイトルもあらすじも聞かされていないが、せっかく誘われたのだから付き合うことにした。凌生と二人で映画を見るのは初めてだ。


 映画が始まる。映像はのどかな雰囲気で静かな田舎町を舞台に、仲の良い友人たちが穏やかに過ごしている。


(なんだ、普通の青春映画じゃん)


 しかし、物語が進むにつれ、徐々に空気が変わっていった。ある夜、登場人物の一人が「消えた」。家にもいない、連絡も取れない。周囲の人々は不安を募らせながらも、日常を続けるしかない。


 次の日、また一人いなくなった。


(……え?)


 何かがおかしい。


 残された人々が真相を探る中、画面に映し出されたのは、巨大な影。ぼんやりとした黒い影が、静かに彼らを見下ろしていた。


 次の瞬間、悲鳴とともにカメラが揺れ、誰かが地面に引きずられていく。


 大翔はごくりと喉を鳴らした。


 恐ろしい怪物が、姿を現したのだ。


「っ……!」


 思わず隣に座る凌生にしがみついた。


「邪魔なんだけど」


 凌生は短くそう言うと、大翔の腕をペリっと剥がした。


「そんなこと言うなよ!怖いんだから仕方ないだろ!」


「なら、クッションでも抱いてて」


 と、ソファーのクッションを投げ渡された。大翔はしぶしぶソファのクッションをお腹に抱え込む。


 その後も映画は容赦なく恐怖を積み重ねていった。誰も信じられない、どこにも逃げられない。闇の中に潜む怪物が、次々と人を襲い、画面は悲鳴と血に染まる。


(やめたい……でも……!)


 途中で止めたら、結末がわからずモヤモヤしてしまう。恐怖に耐えながら、大翔はなんとか最後まで観続けた。ようやくエンドロールが流れ、リビングには静けさが戻った。


「ふう、面白かった」


 満足そうな凌生の声に、大翔は呆れた顔を向けた。


「……こんな怖い映画だとは思わなかった」


「こういう映画は、やっぱり大画面だな」


「せめてタイトルとあらすじくらい教えてくれたってよかったのに!」


 もう二度と油断せず、事前に映画の情報を確認しようと、大翔は固く心に誓ったのだった。

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