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six socks  作者: AI子
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オープンキャンパス漫才


 大学のオープンキャンパスを盛り上げるため、在学生による企画の一環として漫才が行われることになった。そこで、学内でもひそかに「ボケとツッコミが息ぴったり」と噂される沢弥隼哉と井田晴也のコンビに白羽の矢が立った。

 ――とはいえ、二人は漫才経験ゼロ。シェアハウスの仲間たちも巻き込み、ネタ作りが始まるのだった。



「俺がボケで、井田がツッコミ。これはもう確定」


 隼也がホワイトボードを叩きながら宣言すると、晴也は腕を組んで「いや、勝手に決めんなよ」と眉をひそめた。


「いやいや、晴也がボケっての、想像できないけど、もしかしてやりたかった?」


「そもそも、漫才がやりたくない」


「これはもう決定事項だから覆りませんー、残念でした」


「なんかムカつく」


 慎一が横で頷きながら「もう会話が、漫才っぽいよな」と笑うと、晴也は「そんなことねぇよ」と反論する。


 「で、ネタのテーマはどうする?」


 颯がカラフルなノートを開きながら問いかけると、大翔はメモを取りつつ「やっぱり大学の紹介がテーマだから、キャンパスライフをネタにするのがいいんじゃない?」と提案した。


 「それいいじゃん! 例えば、キャンパス内の施設とか、大学生あるあるとか?」


 凌生が腕を組みながら言うと、「大学生あるあるは外せねぇな」と颯が頷いた。


 「じゃあ、みんなで案を出してみよう」


 ホワイトボードにそれぞれが思いついたネタを書きだしていった。


授業に出たら最前席で寝てる猛者がいる

サークルの勧誘が戦国時代

『単位』という言葉の重みが高校時代と全然違う

休講が決まったときの盛り上がりが異常

学食のコスパが良すぎて「もうここ住めばよくね?」ってなる

図書館、意識高い系と爆睡勢が共存

研究室の教授、だいたい仙人みたいな生活してる


 「めっちゃ面白いの集まったじゃん!」


 颯がテンションを上げると、「でも、これをどう繋げるかが問題だな」と凌生が冷静に指摘する。


 「ここは漫才の流れを意識しないと。導入、本題、オチって形をしっかり作ろう」


 慎一の提案により、ネタの流れが整理され、ようやく形になった。何度も修正をして、侃侃諤諤の話し合いが行われ、食事中もあーでもないこーでもないと話し合いが始まろうとすると、慎一の無言の圧がかかった。慎一は圧をかける、を覚えた。



 そしてオープンキャンパス当日を迎える。

 ステージには隼哉と晴也。会場には入学希望者や在校生が大勢詰めかけていた。二人は深呼吸し、いよいよ漫才が始まる――。


隼哉「どーもー! 我々、青天井です!」

晴也「よろしくお願いします」

隼哉「いやー、カッコいい名前だよな、青天井!」

晴也「そうか?」

隼哉「だって、俺の『隼』って文字が鳥で高いところを飛ぶじゃん?んで、お前の『晴』が青空って意味になってるんだぜ?」

晴也「まぁ、そういう意味を込めたからな」

隼哉「しかも青天井って、“上限がない”って意味だからな! 俺たち、どこまでも行けるってことよ!」

晴也「お前はネタのクオリティの天井をもうちょい上げろ」

隼哉「……頑張ります」


隼哉「ま、気を取り直して! どーもー! 大学紹介漫才、はりきっていきましょう!」

晴也「いや、そんなにテンション上げる話でもないだろ」

隼哉「今日はね、オープンキャンパスということで、大学生活のリアルをお届けします!」

晴也「無視された、まあいいや、おう、しっかり伝えろよ」


隼哉「まず大学といえば、なんといっても “単位” ですよ!」

晴也「まぁ大事だな」

隼哉「高校の頃はね、『単位』って言葉を聞いてもピンとこなかったけど、大学に入った瞬間、もう『単位』が命! 水と同じくらい大事!」

晴也「いや、水はもっと大事だろ」


隼哉「授業に行ったら最前席で寝てるやついるし!」

晴也「教授も無視しているからな」

隼哉「俺も最初びっくりしたよ! そしたら周りのやつが『あれはレジェンドだから』って」

晴也「伝説作んな」


隼哉「あとね、サークルの勧誘が戦国時代なのよ!」

晴也「まぁ、新入生の取り合いすごいな」

隼哉「講堂前でビラ配ってるかと思ったら、校門のとこで待ち伏せ! 逃げても、どこからともなく先回りされてるからね!」

晴也「それもう忍者だろ、大学じゃなくて忍びの里行けよ」


隼哉「学食のコスパが神すぎて、俺、半分住んでるもん」

晴也「お前、正式に学食の住人だよな」

隼哉「でも学食って、コスパいいだけじゃなくて、絶妙に不思議なメニューあるよな?」

晴也「あるな、なんか知らんが謎カレーとかたまにある」

隼哉「『シェフの気まぐれ〇〇』っていうメニュー、シェフが気まぐれすぎて、時々チャレンジ精神強すぎるんよ!」

晴也「お前、前に“チョコレートカレー”頼んで後悔してたな」

隼哉「甘いのか辛いのかどっちかにしてほしかった……」


隼哉「そして、大学生の最大の敵、それは 『レポート』!」

晴也「まぁそうだな」

隼哉「提出期限、だいたい深夜23時59分とかになってるじゃん?」

晴也「ああ、あれギリギリに出すやつ」

隼哉「教授『余裕を持って出すように』→学生『23時58分提出』」

晴也「いや、もうちょっと余裕持てよ」

隼哉「俺なんか、23時59分に提出ボタン押したら、Wi-Fiが死んで、そのまま俺も死んだ」

晴也「それはお前が悪い」


隼哉「てな感じでね、大学生活って最高に楽しいんですよ!」

晴也「最後にちゃんとフォロー入れたな」

隼哉&晴也「だから、みんな! ぜひウチの大学へ!」


 ――会場は大爆笑と拍手に包まれた。


「……漫才、意外とウケたな」


 晴也がぽつりと呟くと、隼也がニヤリと笑った。


「俺ら、本気でM-1目指す?」


「いや、やめさせていただきます」


 こうして、青天井のオープンキャンパス漫才は大成功を収めたのだった。

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