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six socks  作者: AI子
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本と甘いもの

 駅前の書店のドアをくぐった瞬間、鳴渡颯は軽快な足取りでファッション雑誌コーナーへと向かい、桜間大翔は迷いなくコミックの棚へ進み、安堂凌生は参考書コーナーの方へと歩いていった。

 

 ようやく、名字が出てきました。作っていなかったわけではなくて、ど忘れしていただけです。後の三人もそのうちフルネームで出てきますので、お楽しみに。本のジャンルで分かってもらえると思いますが、三者三葉、それぞれの個性が出ています。


「じゃ、またあとでなー」


 そう言い残して散らばっていく三人。それぞれの趣味に一直線だ。


 颯はトレンドの服やアクセサリーを紹介する雑誌を手に取り、ページをめくる。春の新作コレクション、カジュアルだけど洗練されたコーディネート。目を惹くアイテムを見つけては、「これ、似合うかな?」と心の中でシミュレーションしながらページを捲る。


 一方、大翔はコミックコーナーで最新刊をチェックしていた。表紙のイラストを眺めるだけでワクワクする。お気に入りのシリーズの続きが出ているのを見つけ、さっそく手に取る。試し読み用の冊子を開くとたちまち物語の世界に没頭していった。


 凌生は静かな参考書コーナーで、新学期に向けた専門書を探していた。大学の課題やゼミに追われる日々、少しでも役立ちそうなものはないかと、じっくりとタイトルを見て回る。ふと、以前教授が勧めていた書籍を見つけ、ページをめくると、思ったよりも興味深い内容で、そのまま読みふけってしまう。


 それぞれが自分の世界に没頭すること小一時間。腕時計やスマホで時刻を確認し、三人は店の入り口近くで落ち合った。


「さて、この後どうする?」


 颯の問いに、大翔と凌生が同時に口を開く。


「ケーキ!」


「頭使ったから、何か、甘いもの食べたいな」


 同じような答えを出した二人に、颯が思わず吹き出す。


「おまえら、甘いもん好きすぎ」


「お前だって、桜のスイーツ気になってるって言ってたじゃん」


「……まぁな」


 行き先はすぐに決まった。三人がよく行くカフェには、ちょうど春の期間限定メニューが並んでいる。


 店内に入ると、ふわりと甘い香りが漂っていた。ショーケースには淡いピンクや鮮やかな緑のスイーツが並び、どれも春らしくて可愛らしい。


「お、おいしそう……!」


 目を輝かせる大翔を横目に、颯もメニューを見つめる。


「俺、桜モンブランにしよ、お前らは?」


「俺は抹茶のガトーショコラ!」


「俺は桜のシフォンケーキにする」


 三人はそれぞれのスイーツと紅茶を頼み、窓際の席に腰を下ろす。やがて運ばれてきたお皿の上には、春の彩りが詰まったスイーツたち。


 颯の頼んだ桜モンブランは、薄桃色のマロンクリームがふんわりと絞られ、トップには桜の塩漬けがちょこんと乗っている。一口食べると、桜の風味がふわりと広がり、濃厚な栗の甘さと絶妙に調和する。


 大翔の抹茶ガトーショコラは、ナイフを入れるとしっとりとした断面が現れ、抹茶のほろ苦さとチョコのコクが絡み合っている。上にかかった抹茶パウダーの香りが鼻に抜け、思わず目を細めるほどの美味しさだ。


 凌生の桜シフォンケーキは、ふわふわの生地の間に桜風味のクリームが挟まれ、軽やかな口当たり。甘さ控えめのクリームと、優しい桜の香りが絶妙で、気づけばフォークが進んでしまう。


「これ、めっちゃうま」


「抹茶とチョコって、合う……」


「うん……桜の香りがすごくいい」


 三人はゆっくりとスイーツを味わいながら、他愛もない話を交わした。書店で気になった本の話、大学や専門学校での授業の話、そして次に食べてみたい期間限定スイーツの話。


 バラバラな趣味を持つ三人だけれど、こうして同じテーブルを囲んでいると、不思議と心地よかった。


 ふと、颯が呟く。


「こういう時間、悪くないよな、ってか好きかも」


 大翔と凌生が、それぞれ笑顔で頷く。


 甘くて、春の香りがするひととき。心まで満たされるような、そんな時間だった。

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