片付けの極意、見つけました
「おっ、これ! この片付け番組、よくやってるやつじゃね?」
リビングのソファに寝転がっていた鳴渡颯が、テレビのリモコンを握りしめて叫んだ。画面には「汚部屋を劇的ビフォーアフター!」というテロップが大きく映し出されている。
「うわ、めっちゃ散らかってる部屋出てきた!」
「凌生の部屋といい勝負じゃね?」
沢弥隼哉がポップコーンをつまみながらニヤニヤする。隣では桜間大翔が「おー、これ相当やばいな」と感心したように画面を見つめていた。
「いやいや、さすがに俺の部屋ここまでじゃねーし」
安堂凌生が苦笑いしながら言うと、高宮慎一が冷静に突っ込む。
「いや、わりと近いぞ」
「えっ」
「この前の凌生の部屋、廊下まで侵食してたしな」
「ぐっ……」
「ま、でもこの番組のやつはレベル違うな」
井田晴也が腕を組んで画面を見つめる。テレビには、床が見えないほど物が散乱した部屋が映し出されていた。
『では、プロの片付け術を使って、スッキリ片付けていきましょう!』
画面の中の片付けコンサルタントが、自信満々に宣言する。
「おっ、片付けの極意が出るんじゃね?」
大翔がワクワクしながらテレビに釘付けになる。颯も「これマジで参考にしよ!」と前のめりになった。
『まずは、全てのモノを一度出して、要るものと要らないものを仕分けましょう!』
「ほら、凌生もこうやれってさ」
「いや、俺だって仕分けくらいしてるし!」
「でもさ、毎回片付けてもすぐ散らかってんじゃん?」
「それは……忙しくなると……」
「はい、言い訳きたー」
隼哉が笑いながら茶化すと、凌生は「うっ」と言葉に詰まる。慎一が「でも、確かに全部出して仕分けるのはいい方法かも」としみじみ言った。
「そうだな。普段使わないものがどれか、はっきりするし」
晴也が頷く。
『次に、モノの定位置を決めましょう! 使ったらすぐ戻すクセをつけることが大事です』
「これ、前も晴也が言ってたやつじゃね?」
颯が振り返ると、晴也は「ああ、基本だからな」とさらりと答える。
「これできるようになったら、マジで部屋散らからないんだろうなぁ……」
「やる気あるなら、まずはテーブルの上の片付けからだな」
「えっ、今!?」
「まずは行動に移さなきゃ」
「うっ……でも今は番組見てるから……」
「ほら、そうやって後回しにする」
慎一が呆れたように言い、隼哉と大翔が爆笑する。
「まぁまぁ、とりあえず続きを見ようぜ!」
そう言いながら、全員がまた画面に注目する。
『最後に、不要なモノは手放しましょう! 「もったいない」と思って取っておいても、使わなければ意味がありません!』
「うっ……心が痛ぇ……」
凌生が頭を抱える。
「お前、何でもかんでも取っとくからな」
「だって、もしかしたら使うかもしんねーし……」
「1年以上使ってないやつ、マジで使う?」
「……わかんねぇけど……」
「じゃあ捨てろ」
晴也の容赦ない言葉に、凌生はぐぬぬと唸る。
「でも、もしかしたらいつか……」
「その『いつか』、来たことある?」
「……ないっす」
「なら、いらないな」
「……は、はい」
完全に論破され、しょんぼりする凌生。颯が「いや、でも俺も分かるけどな! なんか捨てるのもったいないって気持ち!」とフォローする。
「そうそう! いつか役に立つかもしんねーし!」
「お前はまず、部屋の隅の紙袋をどうにかしろ」
「えっ、あれは……」
「中身なんだよ」
「……えっと……なんかのレシートとか?」
「やっぱ捨てろ」
またしても晴也の的確な指摘が入り、颯が「ぐぬぬ」と唸る。
そんなやり取りを聞きながら、慎一はぼそっと呟いた。
「……でも、こういうの見てると、ちょっと片付けたくなってくるよな」
「分かる。なんか影響されるよな」
大翔が頷くと、隼哉も「俺も! 今ならいらねーもん全部捨てられそう!」と拳を握る。
「なら、みんなで片付けるか?」
晴也が提案すると、颯と凌生が同時に「えっ」と声を上げる。
「いや、今!?」
「番組終わってからでもよくね?」
「いやいや、今が一番やる気あるだろ」
「うっ……」
「それに、今やらないと、どうせまた後回しになる」
慎一の言葉に、二人はぐっと言葉を詰まらせた。そして、お互いに視線を交わし、観念したように肩を落とす。
「……分かったよ、やるよ!」
「仕方ねぇ、片付けるかぁ……」
こうして、6人は片付けモードに突入。テレビの片付け術を参考に、それぞれの部屋を整理し始めることになった。果たして、どこまで続くのか——それは、彼ら自身にも分からなかった。




