鷹宮の妃になれたからって浮かれるのはまだ早いわよ 冥々の家の茉莉姫Side
第二妃よ、いい?
茉莉、落ち着くのよ。
私は選抜の儀で第二位の姫よ。
冥々の家の事情なんて、この際どうでもいいわ……。
鷹宮さまを手に入れたい。
どうしても鷹宮さまじゃなければ嫌なのよ。
悪事に手を染められるわ。
あの方のためならどんな悪事にだって、いざとなれば手を染められると思うの……。
わたくしがこれまでどれだけ努力したと思っているの?
美貌も技量も気立も、なんの努力もせずにここまで身につけられるものではないわ!
選抜の儀の通り、夜々の今世最高美女の邑珠姫が妃ならば、わたくしの苛立ちも、荒れ狂う心の鎮めようもあるというもの!
それが、最下位からてっぺんから奪取など、とんだ番狂わせですわ。
下克上にも程がありますっ!
民が納得できる妃でなければというのに、なぜあのような何も知らないような姫が妃になるのです?
わたくし、必ずしや第二の妃に選ばれて、いずれ国母となりますわ。
ただ、この激しい憤りを感じている心のうち、誰にも悟られないようにしなければなりません……。
何も分からなそうな姫でありながら、したたかに鷹宮の寵愛を独り占めするあたり、地味姫、傷物姫という周囲の蔑みの言葉は全くの見当違いということになりません……?
確かに、あらゆる教室では済々の第一姫である花蓮は優秀でしたわ。
わたくしの次にね??
美しさでも、家の懸ける期待でも、いずれも劣らぬはずなのに、わたくしがあんな地味小娘にやられるなど……あってはならない事態!
勝負はまだこれからよっ!
地味花蓮、鷹宮の妃になれたからって浮かれるのはまだ早いわよ……。
わたくし、必ずしや、鷹宮の寵愛を奪ってみせますわ。
どんな手を使ってでも。
この体、色香、美貌、技量、想う気持ち、いずれも花蓮に優っているといつの日か分かっていただきますわ。
冥々の家の茉莉姫は、爪をギリギリと自分の手ひらに食い込ませて、一人怒りと想いの激しさに身悶えていた。
まもなく夕暮れが終わろうとしていた。空には一番星が輝き、前宮の青桃菊からも美しい風景が見えた。
鷹宮選抜の儀、いずれの立場からも予期せぬ展開になったようだ。