第9話 では、鍛錬の成果を披露していく。
前回のあらすじ:みんなでお勉強して脳筋から卒業だ。
あれから1年ちょい過ぎ、俺も4歳になった、、、。
・・・なったんだけど、身長があまり伸びていない、、、。どうしてこうなっている!?
言葉のボキャブラリーは増えているけど体の成長が全く追いついておらず、時たま舌っ足らずな話し方になってします。
・・・このままでは体は子供、心は大人なキャラが誕生してしまう。本人が全く望んでいないにも関わらずだ。これもレッドパインの呪いの影響か、、、。滅んでしまえ!!
って、そういえばここの孤児院ってそのレッドパインを祀っている教会の所属だったっけな。あいつらの教義って人族至上主義の考えが主流だったかな。
そう考えると、3人だけとはいえ獣人を保護しているシスター2人って凄ぇわ。しかも今のところこの孤児院に対しての排除運動とか全く起きてないしな。
まぁ、金が無いってのはそういうことに起因しているのかも知れないな。また、主流ではあるけど一部ではそういう考えを持たない派閥もあるらしく、そういったことも今の段階ではこの孤児院が無事である理由の一つなんだろう。
その獣人達は無事6歳を迎え、獣人らしく体の成長が著しいです。
獣人らしく身体能力はもの凄いですが、いかんせん体の使い方がなっておりません。獣人達の集落であれば体の使い方を教えてくれる人もいるだろうし、狩りの仕方も教えてくれるだろう。
しかし、ここの孤児院はどう見ても戦闘向けではないシスター2人と種族が異なる同じ6歳の獣人達しかいない。
ということで、俺たちが獣人3人の戦闘指導を行うことになったわけです。理由は、一部の畑に荒らされた跡があったから。
というのも、この孤児院の畑を狙って害獣や魔獣が出没するようになったから。・・・逆に以前は害獣すら寄りつかないくらい栄養価の低い植物だった、ということなんですねぇ、、、。
出始めた頃はマーブル達が『わーい、お肉だー』と言いながら侵入者を排除してきたんだけど、俺が倒せるようになると、俺では荷が重い魔獣以外は手を出さなくなった。曰く、『森の魔物の方がおいしー』とのこと。それについては賛成と頷かざるを得ない。
とはいえ、シスター2人にわずか3歳の子供がオオカミやイノシシと戦っている光景を見せるわけにはいかないので、いない間に仕留めるように心がけていたので多分バレていないはず。
で、6歳とはいえ日々の栄養たっぷりの食事でしっかりと体を作り上げているので、そろそろ彼らに訓練も兼ねて参加してもらった方がいいだろうとのマーブル達の判断です。
一応シスター2人にも許可はもらっておりますよ。あくまでマーブル達が一緒にいることが条件ですけどね。名目的にもマーブル達が指導することになっている。・・・実際に教えるのは俺なんだけどね。
「というわけで、これから戦い方を学んでもらいましゅ!」
「ニャア!」「キュウ!」「ピー!」
「ク、クマァ、、、。」「ニャ、ニャァ、、、。」「ワ、ワン、、、。」
いつものノリで右手を挙げながらの宣言する俺とそれに応えるように右手を挙げて返事をする我が猫達。仕切ってるのが俺ということで戸惑う3人。ってか、普段はこんな言い方しないんだけど、本来はこういう言い方もするんだねぇ、そういう意味ではこっちが戸惑うんだけど。
「ア、アイス君が僕らを指導するの!?」
「そうでしゅよ。マーブル達と僕達って骨格が違うので。」
「「「こ、骨格?」」」
「そうでしゅ。僕らの足と、マーブル達の後ろ足、曲がる向きが逆でしゅよね?」
「「「た、確かに、、、。」」」
「マーブル達はちゅよいので、参考になることはたくさんありましゅ。ありましゅが、マーブル達の動きを真似できるか、と言ったら無理でしょ?」
「確かに無理だね。で、アイス君が僕たちを指導してくれる、と?」
「そういうことでしゅ。信じられないかもしれましぇんが、最近はボクが畑の侵入者を退治してるんでしゅよ。」
「「「えっ!?」」」
「論より証拠でしゅ。」
そう言って、愛用のスコップもどき(孤児院の備品、さび付き)を取り出して俺の周りに円を書く。
「とりあえず1対1ですが、ボクをこの円から押し出してみてくだしゃい。」
「よ、よーし、最初はボクからです!」
最初に来たのはプーカだった。プーカはクマの獣人だけど、ベアじゃなく○ラックマな見た目である。動きも何気に可愛い。それでも俺より大きいけどな!!
プーカは一生懸命押しているが俺は微動だにしない。ベアじゃなくリ○ックマの見た目通り、力はそうでもないのもあるんだけどね。でも俺3歳の体の大きさしかない4歳児だけどね、、、。
プーカは俺を押し出そうと、いろいろな方向から押してみたり、体当たりしてきたりしたが、残念、その程度では俺は動かない。・・・正直日頃の鍛錬でここまで効果があるとは思わなかった。耐えられるとは思っていたけど、まさか微動だにしないとは、、、。自分でも少し驚いている。
で、いろいろ試してはみたが結局体力が尽きてその場で両膝をついた。
「ハァ、ハァ、ハァ、、、。・・・ア、アイス君、す、凄いです、、、。な、何で動かないのです?」
「もちろん、日頃の修行の成果でしゅよ。じゃぁ、ちゅぎは誰でしゅか?」
「次は、ボクが行くにゃ!」
はい、プーカさん退場。次はミィコさんですね。どっからでもどうぞ。
ミィコは素早い動きを駆使していろんな方向から押してきたり体当たりを繰り出してきたけど、流石は猫族。軽いのよ。対応しきれない場面も出てきたけど、結局俺はこの場から動かずに終了。最後はワンタさんお願いします。
ワンタはやはりそつなく攻めてきた。唸りで威嚇してすぐさま突進したりとかなり工夫して攻めてきたけどこちらも俺を動かせずに終了。
「ハァ、ハァ、ハァ、、、。・・・アイス君、凄いね。」
ワンタは息絶え絶えにそれだけを言うと、その場に座り込んだ。
開始から15分も経っていないので、交代で、というわけにもいかなくなった。まぁ、初めてだし動きを見るのが目的だったからね。
「3人とも、おちゅかれ様でした。さっきも言いまちたが、ボクがここまで動かなかったのは日々の修行の成果以外にありましぇん。素質だけでちたら3人の方が圧倒的にうえでしゅ。」
「フーッ!」
俺が3人に話していると、マーブルから「侵入者発見!」の報告が。俺もすぐさま水術を発動して周囲を確認する。・・・数は1、この大きさはオオカミか。速度があるな、すると魔狼かな。1頭だと偵察の類いではないな、、、。すると、はぐれの狼か。実践を見せるのには丁度いいかな。
「3人とも聞いてくだしゃい。この畑に侵入者が来ましゅ。恐らく魔狼、数は1でしゅ。」
「ま、魔狼というと、強い方のオオカミですか?」
「え、魔狼!? こ、怖いニャ、、、。」
「今のボク達ではとても、、、。」
「あ、大丈夫でしゅよ。ボクが戦いましゅので、みんなはどうやって倒すのかしっかり見てくだしゃい。」
「え!? アイス君が戦うです!? あ、危ないですよ!」
「そ、そうニャ。無理しちゃだめニャ!!」
「そうだよ、いくら僕らより強いったって、流石に魔狼は厳しいんじゃ、、、。」
「大丈夫でしゅよ、魔狼1匹なら問題無いでしゅよ、まぁ、見ててくだしゃい。」
自分たちの身よりも俺を心配してくれる3人は本当にやさしい。だからこそ、覚えてもらう必要があるんだよね。どうやって倒すかを。今の修行で得る打撃の威力がどれほどであるかを。
体が成長してないから、相手が魔猪だと水術なしでは流石に大変だけど、魔狼なら大丈夫。
「これより、オオカミを倒しましゅ。まずはマーブル隊員、オオカミをこちらにおびき寄せてくだしゃい。」
「ミャア!」
「ジェミニ隊員は、オオカミを逃がさないようにしてくだしゃい。それと、倒した後の解体をお願いしましゅ。」
「キュウ!」
「ライム隊員は、3人の護衛でしゅ。その後はオオカミの血抜きと洗浄をお願いしましゅ。」
「ピー!」
俺がマーブル達に指示をすると、マーブル達はそれぞれ敬礼で応える。うん、いつもながら可愛くて最高である。俺が敬礼で答礼すると、マーブル達はそれぞれ持ち場についた。
いつもであれば、孤児院の俺の畑近くの何もない場所に誘導してから迎撃するけど、今回は3人に戦いを見せるので移動せずその場でストレッチや軽く身体チェックを行った。
よし、準備万端である。さっき3人と押し合いをしたおかげかいつもより楽にアップが完了した。
アップをしている間でも水術による探知は続けていたが、接敵までまだ少し距離があったので確認をしていく。
マーブルとジェミニが速い動きで魔狼の後方へと移動する。気配を消して動いているようで魔狼に気付かれることなくあっさり背後に回ると、マーブルが気配を消すのをやめて魔狼に軽い威圧をかける。
魔狼は一瞬ビクッとして振り向くと足を止めて警戒した。マーブルが凄いのは相手に格上と認めさせる気配を出すのだけど、本来の気配を出さずに少し格上感を出す程度にとどめているところ。
そして魔狼はマーブルと俺を見比べると躊躇うことなくこちらに向かって来た。って、すげぇ目がいいな。俺は水術で確認しているだけだから、目では姿を捉えていない。けど、どういう動きをしているのかは水術の探知で理解している。これも日々の鍛錬の成果である。
「魔狼があと少しで来ましゅ。気をつけてくだしゃい。ライム、頼みましゅよ。」
ここでライムも存在感を出す。間違ってもターゲットがあの3人に往かないようにするためだ。魔狼もライムには敵わないことが理解できているようで俺を狙っているのがわかる。
魔狼も俺との距離を確認すると、速度を落とし畑の木に隠れるように動いた。目では追いきれなかったけど、水術で動きは確認しているので、どこにいるかなんてバレバレである。俺を狙ってはいるけど、流石に正面から来たりはしない。
動きを止めたのでこちらの様子を窺っているようだ。なかなかこっちに来てくれない、、、。
仕方がないから、後ろを向いて座り込んで地面に絵を描くような動作をする。そして業務連絡も忘れない。
『ライム隊員、申し訳ないけど、3人を移動させて。警戒してこっちに来てくれないんだよね。』
『りょーかい!!』
ライムが3人を下がらせたことに気付いた魔狼がようやく動き出した。ゆっくりこっちを狙って近づいてきた。もちろんこちらはそんなことお見通しなので、気付いていない振りをしたままだ。魔狼はそのままゆっくりとこちらに迫ってきており俺との距離がだんだんと近づいてきていた。
射程距離に入ったのだろう、魔狼は一旦動きを止め、体にタメを作ったと思ったら、一気にこちらに飛びかかってきた。狙いは俺の首筋だとわかっているので対応も容易である。素早く右側に避ける。
魔狼もまさか避けられるとは思わなかったらしく驚愕の表情をしたまま横を通り過ぎる、その前に首筋を抱え込んで左足を中心にして右足を蹴って時計回りに魔狼を引き倒す。このエネルギーを失わないように右肘を軸にして胸を張りながら左腕を前方に少しだけ出すような感じで反撃する。
ゴッ、という音と一緒に手応えを感じたので、右足と右肘を固定したまま少し体の左半分を前に移動して待機。魔狼は横に倒れている上に首の付け根を固定されてるから動けない。
固定すること10秒くらい、手応えを感じなくなったので、固定を外して魔狼の眉間に一撃を加える。トドメを刺すためだ。
今回はさっきに固めで仕留めることができていたが、たまに死んだふりをして決死の反撃をしてくるものも中には存在するため、最後まで油断はできない。まぁ、油断は微塵もしたことないけどね。
トドメを刺したのを確認したマーブル達が来てこちらに飛びついて来たのでキャッチする。
「ニャア!!」「キュー!!」「ピー!!」
「はは、ありがとう、マーブル、ジェミニ、ライム。」
うーん、顔の左右にはモフモフ、頭にはほどよいヒンヤリ感とプニプニ、、、。控えめにいって極楽ですな!! っと、まだ後始末が残っているっけ。マーブル達もそれに気付いて俺から下りると、魔狼の解体作業を行い始めた。
ついでに3人にも解体を覚えてもらおうかとも思ったけど、今日はやめておきますか。何故なら3人はまだ唖然としてたからね。そんな3人をよそに、解体作業は進んでいった。
最初にジェミニが腹の部分を切り裂いていく。すかさずライムが魔狼の血を回収していく、って、いつの間にかアクアとマヌールが血の回収作業に参加していた、、、。
後でライムに聞いたところ、血を回収することでもスライムは成長していくんだそうだ。ライムレベルになると、魔狼程度では成長しないようで、勿体ないからまだ魔狼の血でも成長できるアクアとマヌールを呼んで回収を手伝ってもらったそうだ。あの2体も丁度暇してたらしいので喜んで来てくれたそうだ。
血を回収しきると、マーブルが魔狼を浮かせ、ジェミニがその魔狼の内臓や骨などを外していく。その後は、みんな大好きお肉の取り出しと部位分けである。
獣であるオオカミの肉は美味しくないけど、魔狼の肉は美味しい。それを知っているので喜んでいると、獣人の3人も美味そうなお肉を見て一緒に喜んでいた。
毛皮もそうだけど、魔狼の骨と内臓は一部を除いて使い途があるので、今回は俺が倒したということもあって、俺が収納した。
外が騒がしくなって出てきたシスターアリスが、喜んでいる俺達と解体されたお肉を見て驚いており、俺達に事情を聞くと、無言になって孤児院内に戻り、今度はシスターアリサを伴ってこっちに戻ってきた。
・・・結果から言うと、とても怒られた。俺はもちろんのこと、プーカ、ミィコ、ワンタの獣人3人も、さらにはマーブル達まで、、、。
そして、こちらに転生して初めての正座を体験させられた。鍛錬の一部と割り切っておとなしく正座していたが、この体では慣れていないこともあって、解放されたときは非常に足が痺れていたことも併せて報告しておく。
ネタが思い浮かばず更新まで日が空いてしまったことをお詫び申し上げます。
こういうことも今後あると思いますが、気長にお待ち頂けると幸いです。