第7話 では、やれることをやっていこう! お次は施設の改良と修復をしていくっ!(後編)
前回のあらすじ:ライム隊に2名隊員が加わった。
!? いきなりもの凄く息苦しい状態になってしまい目が覚める。以前であればガバッと起きられたが今の状態では目だけ開けるのが精一杯、一体何が起こっているのやら、、、。
・・・ライムさんや、顔に乗っかるのは止めてくれませんかね、、、。
原因がわかったので、その原因となるプヨモチを両手で持ち上げると、ぐで○まのような顔で眠っているライム。・・・めっちゃカワイイんですけど、、、。
ライムを起こさないようそっとどかして体を起こすと、足の辺りに目に入った2体の毛玉の塊。そこにはヘソ天状態で眠っているマーブルとジェミニの姿が、、、。
・・・何これ、めっちゃカワイイんですけど、、、。(2回目)
シスターアリサはすでに起きているようで、ここにその姿はなかった。アクアもいなかった。水桶も一緒になかったので、何か仕事をしているんだろう。ご苦労様です。
ベッドから下りて身支度をしていると、マーブル達が起きたようだ。まだ、朝ご飯の時間じゃないから寝ててもいいんだよ。昨日も俺が寝ている間にお肉を狩ってきてくれたんでしょう? しっかり寝たから大丈夫だって? そう、ならいいんだけどね。
「おはよー、マーブル、ジェミニ、ライム。」
「ミャア!!」「キュー!!」「ピー!!」
取り敢えず起きたので、いつも通り朝練を始めますか。
朝練の内容は、軸を意識して立つ、そして軸を意識しながら歩く。最初こそは軸というものも知らずに軸っぽいものを想定して行っていたけど、1年以上続けていくと何となくわかるようになってきた。
マーブル達のダイブをキャッチする修行と実益を兼ねた練習による効果もかなり大きい。これによって実際に軸が入っているかどうかがわかる。
もちろん、達人レベルにはほど遠いので完璧に対応できるわけではないが、日に日に上達しているのがわかるのが嬉しい。
「アイスちゃん、ごはんだよ。マーブルちゃん達もおいで。」
「はーい!」
「ミャア!」「キュウ!」「ピー!」
朝練も一区切り付いた頃、良いタイミングでシスターアリサが呼びに来た。マーブルは左肩、ジェミニは右肩、ライムは頭の上に乗って移動開始だ。
食堂に入ると、プーカ、ミィコ、ワンタの3人はすでに座っており、俺達を待っていた。まぁ、3人は朝食の準備を手伝っていたからすでに部屋にはいたんだけどね。何故か俺はまだ手伝いから外されている。というか、3人が手伝っているので俺の出番がない、というのがホントの処みたいだけど。
みんなが席に着いてから一緒に「いただきます」をしてから食事開始だ。
孤児院の食事は基本的には同じメニューである。かったいパンと野菜のスープである。たまに肉が入っているときもあるけど、肉は基本的には夜のメニューである。
とはいえ、マーブル達が狩ってきた肉などを交換しているせいか、野菜の質も内容も充実しているのはありがたい。
一応水も頼めば用意してくれる。とはいえ、井戸から汲んできた水を湧かしたものが出てくるので正直時間がかかるし、何より熱い。まぁ、食事時以外で水術でどうにかできるので食事で水を別にもらうことはほとんどない。
しかし、今日は様子が違った。そう、アクアの存在である。
アクアが汲んできた水を綺麗にしてくれるため、煮沸しなくてもそのまま飲めるようになったのだ。これには獣人3人も大喜び。特にプーカが水をよく飲んでいる。
また、アクアの仕事により、スープの水の質もよくなっているため、味もさらにレベルアップしているみたいで非常においしゅうございます。
「そういえば、アイスちゃん、材料は集まったって聞いたけど、一体何を建てるの?」
もうすぐ朝食を食べ終わろうとしている頃にシスターアリスが聞いて来た。やはり何を作るのか気になっているのだろう。
別に隠すことでもないし、聞かれたから正直に答えましょうかね。ただ、ほぼ発表みたいな感じになるので、食べ終わってからね。ということで、残りを急いで片付けていく。シスターアリスは「ゆっくりでいいよ」と言ってくれたけど、けじめは大事だ。何のけじめかは知らんけど。
食べ終わったので、みんなの前に移動する。マーブル達も後に付いてきて俺が立った正面の場所に横一列に並んだ。アクアもピョンピョン跳びはねながらライムの後ろに並んだ。・・・って、アクアも参加するのね。
ある意味いつもの光景にシスター2人は苦笑いである。じゃあ、始めますよ。
「というわけで、これよりお風呂をつくりましゅ!!」
「ニャー!」「キュー!」「ピー!」
俺がそう言って右腕を挙げると、マーブル、ジェミニ、ライムも応えるように右腕を挙げ、まだ触手みたいなものを出せないアクアは体を伸ばしてそれに応える。うん、可愛くて結構。
「毎回思うんだけど、何が、というわけで、なの!? こっちは全く聞いてないんだけど!? って風呂? 風呂なの!?」
と、シスターアリス。良い反応です。何だかんだ言って、この2人のシスターってノリがいいよね。
「いいはんのうです。そうです、そのおふろなのでしゅ!」
「「いつ出来上がるの!? それ以前にちゃんと出来るの!? お湯とかどうするの!? 知ってると思うけど、うち、お金無いから! 薪代ないよ!?」」
いや、予想以上の反応なんですが!? あまりの反応にプーカ達が引いてますよ、、、。
「おちついてくだしゃい。じゅんちょうにすすめば、きょうからはいれますよ。おゆはボクがなんとかできますから。」
「そうなの!? 何か必要だったら言ってね!!」
お風呂と聞いて、テンションの上がるシスター2人、落ち着いているように見えて若干興奮義気のプーカ、逆にちょっと顔色が悪くなっているミィコ、ふーん、あっそ、という感じのワンタ。うん、実にバラエティに溢れているねぇ。
片付けが終わって一息ついたら作業開始です。早速建築現場へ移動し到着。
俺の正面にはマーブル達が横一列に並んでいる。今回はなんとアクアとマヌールも参加。何でマヌールまで!? ライム曰く、基本暇なんだそうだ。
今まではそういった感覚はなかったけど、ライム隊の一員に加わってからそういう感情が芽生えたそうだ。・・・ナンカ、ゴメン。
普段は廃物処理をしているけど、そこはスライム。スライムとしての一通りのことはできるらしい。実はスライムって言葉がわかるらしい。とはいえ、言葉を発することは無理みたい。ただ、スライム同士なら会話が可能のようだ。
ちなみにマヌールはアクアほどではないけど水の浄化もできるそう。更に、たまにマーブル達の抜け毛も消化しているおかげで、スライムとしての格も上がっているらしい、、、。まぁ、それはおいといて作業だ作業。
「では、これよりさぎょうをかいししましゅ。さいしょはよくしつからやっていきましゅ。って、シシュターアリシュ、なにちてんでしゅか?」
暇な時間ができたようで、こちらの様子を見に来たシスターアリス。バレていないと思ったのか。気配丸わかりなんですけど、、、。まぁ、いいや。丁度良かったから手伝ってもらいましょうかね。
「いや、ちょっと、どんな感じかなって、気になるじゃない、、、。」
「まぁ、そのきもちはよくわかりましゅけど。じっさいちゅくるのはマーブル達でしゅからだいじょぶですよ。・・・どちらにしろ、ちょっときょうりょくしてほちいので、ちょうどいいっちゃちょうどいいのかなぁ。」
「何!? 喜んで手伝うわよ!!」
「はぁ、おちちゅいてくださいね。・・・ジェミニたいいん、そこのはんいをほってくだしゃい。」
「キュウッ!!」
「マーブルたいいんは、ジェミニたいいんがほったちゅちをかいしゅうちてくだしゃい。」
「ミャア!!」
「ライムたいの3にんは、ジェミニたいいんがほったあなをかためてくだしゃい。」
「ピー!!」
俺の指示にマーブル達は敬礼などで応える。俺も敬礼で答礼してからそれぞれの作業に入った。
土魔法を駆使しながらどんどん掘り進めていくジェミニ。それによって発生した大量の土を訳もなく回収していくマーブル。スーパーボールさながらの連携で掘った後の土をエライ勢いで固めていくライム隊の3名。それを可愛いと思いながら眺める俺と、見たこともない光景に唖然とするシスターアリス、、、。
ちなみに浴槽はしっかり3段階の深さに調整してある。一番深いところでは2人のシスターが座った状態でアゴに浸かるかどうかの深さにする予定。2段目は俺が以下同文。一番浅いところは言うまでもなくマーブルとジェミニを基準としている。
ある程度できあがったので、深さを確かめる。シスターアアリス、出番だ。
「アリシュたいいん、ちょっといちばんふかいところにすわってもらえましぇんか?」
声をかけられてハッと我に返ったシスターアリス。
「ア、アリス隊員!? 私が!? ま、まあいいわ。そこに座れば良いのね?」
「はい、できればあしをのばしたかんじですわってくだしゃい。」
言われた通りに足を伸ばして座るシスターアリス。・・・うーん、もう少し深く掘ってもらいますかね。
「ありがとうごじゃいます。いったんでてくれましぇんか。ジェミニたいいん、あと20しぇんちくらいほってくれましゅか。」
「キュウ!」
・・・あれこれ細かく調節しながら掘る作業は終了。
「よくそうのきそさぎょうはかんりょうです。おつかれさまでした。シシュターアリシュもごきょうりょくありがとうごじゃいました。もどっておしごとがんばってくだしゃい。」
「え、ええ。」
未練たらたらで退場していくシスターアリス。ごめんね、もう手伝ってもらうことはないんだよね。
この後は、昨日調達してくれた木材を出してもらい、柱で使う数本以外はマーブルとジェミニに板に加工してもらい、俺とライム隊で板の水分を抜く作業を行う。アクアとマヌールにも手伝ってもらうが、正直頭数というより練習かな。
準備が完了したら設計通りに作業を進めていく。ちなみに俺の設計は素人のおおざっぱなものだ。細かい部分はジェミニ達にお任せである。というより、俺のおおざっぱな設計でもジェミニ達は俺の想像通りのものを作ってくれる。素晴らしい自慢の猫達である。可愛い上に賢いって最高じゃね?
まずは板を掘った浴槽にはめ込んで木の浴槽風呂完成。これの凄いところは、木の枠だけでも水を通さないところである。最初は排水についても考えたけど、水の調達が困難であるため水術やライムの水タンクだけで完結させるため不要となった。
カビやその他の汚れ、そして水質についてもアクア先生のおかげで問題無し。
その後も作業は続き、洗い場や脱衣所も特に問題無く完成した。時々様子を見に来たシスター2人については触れないでおこう、、、。
実は一番苦労したのは外見であった。というのも、ドボルザークでも1、2を争うほど貧しい孤児院でいきなり新しい建物ができてしまうのはトラブルの元である。そのため、外側はいかにも素人が建てたもろい建築物という印象を与えないとならないのだ。
何とか完成したので、みんなを呼んでお披露目を行った。シスター2人は早くも入りたい様子。プーカも早く入りたそうにしていたが、ミィコは凄い嫌そうな表情だった。ワンタは出来上がった風呂を見て、朝の様子とは異なり興味津々だった。
折角なので狭いけど最初は全員で入ることになった。もちろん、湯船には最初は浸からない。何せ全員何年も風呂になんて入っていない。獣人の3人は話は聞いたことある程度でもちろん入った事なんて無い。俺やマーブル達だけど、この世界に来てから入った事なんて無い。
どういうことになるか想像がつくだろう。汚れが出るわ出るわ。久しぶりに水術ガンガン使って洗いに洗ったよ。あそこまで行くと何だか逆に楽しくなってくるね。
一通り洗い終わってから湯船に浸かる。あぁ、これだよこれ。みんなの顔がとろけきってるよ、、、。あれだけ嫌がっていたミィコだったけど、凄くいい表情である。
・・・一つ報告だけしておく。天然もののすばらしい胸部装甲ってお湯に浮くんだぜ、、、。話に聞いたことあるけど、実物見たのは初めてだ。肉体年齢のせいか、枯れた精神年齢のせいかはわからないが欲情こそしないけど、眼福であるのは変わらないな、、、。
実はこの話1話で終わる予定だったのですが、何故か前編、中編、後編の計3話になってしまいました、、、。