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第4話 では、やれることをやっていこう! まずは食の充実からだね。

前回のあらすじ:マーブル達をみんなにお披露目。

 さて、やることが決まったのでさっさと実行していこう。


 まず大事なのは食の充実である。獣人の3人に読み書き計算ができるようにすることや、強くして自分の身は自分で守れるようにすることも大切だけど、いかんせん栄養状態がよろしくないのだ。確かにマーブル達が狩りをして手に入れてくれた肉のおかげで食において飢えと最低限の栄養は確保されてはいる。


 しかし、栄養は肉だけにあらず。肉だけで十二分に栄養が行き渡る種族の獣人であれば何ら問題はないのだけど、プーカ、ミィコ、ワンタの3人はそういった種族ではないようだ。その上肉だけで育った環境ではないので、どうしても野菜などから摂れる栄養素は必要なのである。


 それ以上に俺自身、緑黄色野菜とまではいかなくても各種野菜による栄養は必要なのだ。何だかんだ言っても未だに弱ではあるが栄養失調らしい。


「と、いうわけで、これからはたけをいじるぞー!!」


「ミャー!」「キュー!」「ピー!」


 朝食を食べ終わった直後、孤児院のみんなの前で俺が右腕を高々と突き上げる。


 うちの自慢の達はそれに応えるようにマーブルとジェミニは右前足を、ライムは触手状に伸ばしてそれぞれ突き上げた。その他5人はポカーンとなり、しばらくその状態が続いた。1分くらい経過して、我に返ったシスターアリサがようやく突っ込んできた。


「あらあら、みんな可愛らしいわねって、そうじゃなくって、いきなり何なの!? 何が、というわけで、なの!? 意味分からないから!!」


 シスターアリサのツッコミに他のメンバーも首を縦に振った。


「みんなががんばってつくってくれたおやしゃい、とてもおいちいです。けろ、もっとおいちいおやしゃいがたべたいのです! それには、はたけをげんきにしなければなりましぇん!! ぼくもいっぱいうごけるようになったので、おやしゃいづくりがんばりましゅ!!」


「なるほどね。アイスちゃんは土いじりをしたいわけね。いいわ、やってみてごらん。後で場所を用意するから、そこでなら好きにやってみてちょうだい。」


 シスターアリスがそう答えた。いやいや、俺がやりたいのは畑の改良であって、別に土いじりをして遊びたいわけじゃないのだが、、、。まぁ、こんな子供が畑仕事やりますとか言ったところで、説得力の欠片も存在しないわな、、、。


 とはいえ、許可は下りたのだ。結果をみせつけてやればいいのだ。よし、作るぞー!!


 シスターアリスから種をもらったので、まずは鑑定からだね。


[スィソの種]・・・お主のいた世界では「大葉」とか「紫蘇」とか呼ばれる

          植物の種じゃな。今の時期には育ちやすい植物ぞ。まぁ、

          お主なら季節関係なく育てるんじゃろうなぁ、、、。た

          だ、あのシスターはこれが食えるものだという認識はな

          さそうじゃな。とりあえず虫が付かないから育てやすい

          と考えたんじゃろう。何かこれを使って美味いものが出

          来たら、わかっておるよな?



 ・・・何故シソ? いきなり訳わかんないけど!? まぁ、個人的には好きだから問題はないけどね。しかもシスターこれ食べられるって知らないのかい! 出来上がったら、これ使ってバリバリ食べるとしましょうかね。フッフッフッ、これの美味さに驚くがいいさ!! ってか、鑑定かけると相変わらずこうなるのか、、、。


『ミャァ?』


『ん? ああ、鑑定結果ね。シソの種だね。』


『シソですか? 以前、アイスさんが魚とか肉に巻いたやすです?』


『うん、そう、それ。』


『あの葉っぱですか!? ワタシは大好きです!!』


『ボクもすきー!!』


『ミャア!!』


 おお、3人とも覚えていたんだね。そういえば、3人ともムシャムシャ食べてたねぇ、、、。


「では、これをそだてましゅ!」


「ミャア!」「キュー!」「ピー!」


「はいはい、じゃぁ、付いてきてね。」


 シスターアリスの後に付いていく俺達。案内された場所は畑とは反対方向の一角である。広さは2畳くらいか。そこまで広くはないが、人目はつかない上に日当たりも良い感じの場所である。周りには何もないので、風通しもなかなかである。


 何だかんだ言って、俺に気を遣ってくれる。これならしっかり育ってくれるかな。支柱とかそういったものは別に専門家じゃないからわからん。とりあえず本格的なものではなく、一般家庭で食べる用に適当に育てているような感じで十分でしょう。


「この辺りだったら、好きに植えていいからね。別に今あげた種じゃなくても他に何かよさそうなのを見つけたら、それを植えても良いわ。あと、道具はこれを使ってね。状態はよくないけど、無いよりは全然違うでしょ。」


「あい、がんばりましゅ! ありがとう、シスターアリシュ!!」


 シスターアリサに手を振って見送る。姿が見えなくなったので作業開始だ。良い場所を提供してくれたとはいえ畑でも何でも無い場所なので、いろいろとやることはたくさんある。


 まずは土作りである。シスターアリスからもらった種は6粒である。今はこれだけしかない。相談してから昨日の今日では他の種もクソもない。とりあえずお試しということで受け取った道具を使って一辺が30センチくらいの正方形を描いていく。


「ジェミィたいいん。このしかくのはんいをたがやしてくだしゃい。」


「キューッ!!」


 ジェミニの土魔法で描いた正方形の範囲を耕す。流石はジェミニ。踏み固められた土が一瞬でバッチリ畑のような土に早変わり。あくまで畑のような土である。肥料まいてないし。


 土ができたら、次は肥料である。森の腐葉土が一番いいかもしれないけど、生憎ここの孤児院の人達はそんな知識を持ち合わせてはいないだろう。ということで第2案である。


 第2案の肥料とは? そう、孤児院のとある場所にあるアレです。もちろん水洗式なんてものは存在しない。しないが、この世界にはとあるモノを使ってアレを処理しているらしい。そのモノとは? 察しのいい方は気付いたかもしれない、そう、スライムである。


 我が孤児院でもスライムを使ったシステムが存在しており、それがしっかり機能している。ただ、そのスライムは基本的に栄養過多のようで、ある程度吸収すると分裂してしまうそうだ。分裂したスライムはどこかに行ってしまうらしい。要は、その超過分の栄養を肥料として使おう! という計画である。


 で、それが可能なのか? 答えはもちろん、可能である。うちにはライムという超カワイイスライムがいる。スライムにはスライムということで、その超過分の栄養をもらうよう交渉してもらう、と思って提案したところ交渉はすでに済んでいるらしい。ライム本人から聞いたから間違いない。


 ちなみに、ライムと孤児院にいるそのスライムは同じスライムでも格が段違いらしく、すでにライムの配下として活動しているようだ。いつの間に!? まぁ、穏便に済んでいるのであれば問題無い。


「ちゅぎはリャイムたいいん。ここにひりょうをまいてくだしゃい。」


「ピーッ!」


 ライムが触手のような手を斜め上に上げると、その先端から霧状に緑色の液体が噴き出して土の上に降り注いだ。って、緑色!? 某どこかの国みたいに危険物じゃないよね!? ライムは俺の顔を見て何かを察したのか『大丈夫だよー』と念話を送ってきた。


 ライム曰く、原液ではなく究極の配合割合でしっかり混ぜ合わせているらしい。流石は水のエキスパートである。一応俺も最初の転生から使い続けてきた水術があるが、俺の場合はあくまで水を使っていろいろなことをするのであり、ライムみたいに水、いや液体の性質をつかってあれこれできるわけではない。


 肥料を巻き終えたら、ジェミニにお願いして再び土をかきまわしてもらう。うん、これでシソ畑の土作りは完了。


 ふかふかの土に種を埋め込んだ後、ライムに水やりをしてもらう。水やり自体は俺でも可能だけど、どれだけの量を与えれば良いのかさっぱりわからない。一応知っている限りだと、シソの種は硬いらしいので、水はガッツリ必要とのこと。


 水やりも完了したので、後は完成を待つだけである。


 ちなみにマーブルは一切この作業に参加していない。参加しない代わりに俺にモフモフを与えたり、ジェミニやライムの応援をしていた。実はこれでも貢献しようとしたのは珍しい。まぁ、それ以前にこの作業でマーブルができることはほとんどない、、、。


         ---------------------


 ライムに教えてもらいながら水やりをしたり、見た目は俺とマーブル達4人で遊んでいるようにしか見えない修行をこなしつつ10日が経過した。


 シソはどうなったかというと、適切な水やりと肥料のバランスにより恐ろしいほどの量になってしまったのだ。というか、前世でもあんな量見たことねぇよ! 正直、5日目で設定した範囲を超えたのには驚きを通り越してドン引きしてしまうほどに、、、。ドン引きしたのは俺達だけではなく、シスター2人始め獣人3人もそうだった。


「アイスちゃん、あれ、何?」


「あれは、しすたーからもらったたねをそだてたものでしゅ。」


「あ、あんなに育っているのは見たことないわよ、、、。で、あんなに育っちゃっていろいろ大変じゃない?」


「だいじょぶでしゅよ。あれ、おいちいでしゅよ。」


「ええっ!? あれ、食べられるの!? においきつくない?」


「だいじょぶでしゅよ。あれをまいてたべるとほんとにおいしくなるでしゅよ。ただ、ぴゅーかしゃん、みぃこしゃん、わんたしゃんはにがてかもしれないでしゅ、、、。ぼくはおいちいとおもうけど。」


 ということで、昼食時に実際に収穫して食べてみた。うん、やはり美味しくなったな。


 シスターアリサとアリスは最初は恐る恐る食べてみたが、食べてみるとあら不思議。ガッツリ収穫したはずのシソが見る見る減っていく。


 意外だったのは、3人の獣人達も平気で食べており、むしろ苦手じゃないかと思われたミィコが一番気に入っていたことだ。


 俺自身シソについては葉っぱしか知らなかったが、実や芽が存在したことを知り、またそれが結構美味いことを知った。実や芽が出てきたということは、種も無事手に入ったということで、今後もスィソは継続的に育てることが決定した。範囲も少し広げましょうかね。


 シスター達にスィソを育てるときにスライムから採れる栄養剤を使ったことを説明したところ孤児院内の畑もこの栄養剤を使って栽培することが決まり一安心だ。マーブル達には種を見つけたら持ち帰ってきてもらう頼んだし、シスターや獣人達にも何か種があったら持ってきてもらうようにお願いした。


 残念ながら新たに食べられるものはまだ見つかっていないけど、見つかったときが楽しみである。


 取り敢えず、食の充実化計画は一歩進んだのではないだろうか。


 

 

今回もご覧頂き誠にありがとうございます。

毎日更新は流石に厳しいですが、できる限りこまめに更新していく予定です。

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