第1項
綺麗な夜空、月明かり照らす道、2人の少年が崖の上から街を見下ろした、これは希望の物語である。
見とれていた、なんて綺麗なんだろうと、ベースは水色、そしてその上に紫色のカラー、透き通っていた、まるで幼い頃本で読んだ童話に出てくるような...
「なぁ、もしもこの世界で生き残れたらさ、どうする?」
はっとした、今口を開いた少年は「ベクター」どことなく儚い雰囲気でなんだか笑顔の奥には今にでも壊れてしまいそうな、そんな少年だ
「さあね、どうなんだろう...僕は考えたくもないや、君ならどうする?ベクター」
ここで自己紹介をしようか、僕の名前は「テミスト」だ、僕は以前の記憶が無くて、そんな時にベクターが付けてくれた名前だ、なんだか厨二臭いけど、なかなか気に入ってるよ。
「そうだね、普通の生活がしたい、青春して、泣いて、笑って、喧嘩して、なんの意味の無い事をしたい。」
「なら、僕も同じだ」
2人は笑った、しかし、どことなく壊れてしまいそうな、今にも終焉を迎えそうな儚く、笑い話にしては透き通っている、互いに分かっていたのだ、この世界で生きていたいなんて希望はただ虚しい神への願い事でしかないと。
警告が鳴った
「旧新町C区域に感染機械体侵入、付近のもの達は直ちに避難を...繰り返します...」
2人の少年は警告を聞くや否や、即座にC区域へと向かった、するとそこには人型の機械が約10台、蜘蛛型の機械が5台ほど並んでいた、それらはすべて何らかのウイルスに感染しており、彼らのレンズに人間として認識されたら最後、襲われてしまう。
「ベクター!頼んだ!!」
了解!と言う返事と共にベクターは全速力で走り1番手間の人型に向け大剣を縦にふる、すると剣先から夜空の様な透徹した光が広がった、次第に光は機械体すべてとテミストを覆ったこれは彼の能力だ
-透き通る蒼ノ世界-
光の領域に居る任意の対象は能力の出力が上昇し、傷の治癒効果を得る、そして身体能力が格段に上昇する。しかしこの能力は謎が多く未知数、開発段階の能力である
するとテミストも能力を発動した、テミストの周囲から水色の様な光が集中し、刀の形を模した、これが彼の能力
-シリウスI-
属性が「シリウス」に変化、そしてシリウスの間は自分の思考力、これまでの知識に依存しあらゆる物質の創造、操作、破壊が可能、しかし思考を辞めると能力が解除されてしまう為、常人の扱いは困難だ。そしてシリウスは現時点でVIまで存在するが本人が理解しきれず今はⅡまでが限界だ。
テミストの振った刀からシリウスの光が弧を描いて進んでく、やがて人型に命中させた、その威力は凄まじく、人型は一撃にして活動を停止した、一方のベクターも順調に人型をなぎ倒していく、透き通る蒼ノ世界による強化により、勝敗はあっさりと決まった。
「僕ら、このままで良いのかな...」
ベクターが始めた、それに対してテミストはただ無言を貫くことしか出来なかった、お互いの心の内の回答はたった1つ「無謀だ」だが、僅かな希望が捨てられない、今にも縋りたい。
「さぁな...」
この世界はウイルス感染した機械に侵略されている、高性能AI、強靭なボディ、強力な攻撃手段、演算力、人類にもはや抵抗手段は残されていない、逃げて、逃げて、逃げて、逃げて、死んでいった、あの日みた純粋無垢な子供達、戦いを共にした戦友、この世に産み落としてくれた両親、連絡手段なんて無かった、生きて居るだろうか、そうであると信じたい...どうか...幸せになって...生きていますように...。
だが2人の目的はそれらに会う事では無かった、ウイルスの発生元を突き止め、ウイルスを止める、それだけだった。
「今回もダメか、情報なし...」
機械を分解し終えたテミストが語る
「ハッキングから管理者権限移乗、アクセス履歴、全部ダメだ。」
2人はため息をついた、ここ1年、発生元が掴めない...機械は1度出撃したら身を壊すまで進み続ける、そして発生元の工場は侵略済の街を転々としているため、掴めないのだ。
するとテミストはとんでもない発言を放った
「なら、2人で旅をしよう!この世界の隅々まで!そしたらきっと発生元は掴める、もし掴め無くても...最後くらい笑って居れるようにさ、楽しい旅にするんだよ...!」
テミストが放った一言は、希望の光になった気がした、幼い頃星1つない夜空に1つだけ輝かしい光を纏った天狼星のように。