5「疑問(あぶデカ風)」の巻
「…あなた、誰です?」
オレは、そもそもの問いを発した。
なぜ、オレの仲間達をこんな目に合わせつつ、オレを仕留めてしまわないのか。
ワザといたぶって楽しんでいるとしたら、
……運が悪かったとしか言いようがない。
せめて、オレの手で仲間達を楽にしてやるべく、『敵』と会話しながらオレは徐々に袖口に仕込んだ小さな仕込針に手を伸ばす。
「…やめておきなさい」
『敵』は、オレに背中を向けたまま、静かで冷静な声を発した。『敵』の言葉とともに、急激に部屋の気温が下がり始めたような気がした。
『敵』のブルネットの髪がまるで多頭の蛇のように、ダンジョン内の空間の中を波打ち漂っている。
それを見たオレはケツにツララを突っ込まれたような悪寒を感じる。
まさか、『敵』はオレの狙いに気付いている?
「……その坊やのモノよりも、
ちっちゃな、ちっちゃな、その針でこの女の子達をどうにかしようなんて――――
――――ん?……まぁ待てまて…アリっちゃアリかな…うん」
『敵』は、静かで真面目な口調の途中から、一気にふざけた口調に変わる。
『―――そんなお粗末なモノで私達二人に挑むつもりだったの(笑)。フンっ…お笑いね!?
―――ホラホラホラさっきまでの威勢の良さはどこいったの!?』
っていう場面展開…となにやら一人で妄想しながらブツブツつぶやき出した『敵』(ブラなし髪隠し)。
どうやら、
【ちっちゃな針】→【ちっちゃなオレのモノ】→【女2対男1でオレ(17歳童貞)が蹂躙される】
という不躾な妄想をしているようだ。
……大人のくせに、エロマンガよく読むタイプの高校生みたいな行動と思考回路だ。
「……そもそも、なんであいつ等ああなってるんでしたっけ?」
袖口の仕込針を、かたわらの崖へポイしたオレは、『敵』(目元だけ覆うピンクの蝶々の仮面)に話しかける。
狙いを見抜かれている(のかどうなのか)、オレは褐色の肌と長い爪を持つ『敵』(純白Tバック)に話しかけながら、時間稼ぎすることしかできない。
仲間が二人共頼りにならないので敵に話しかけるしかないなんて、なんてザマだ!
―――話は半刻ほど前に遡る。
続く…
好きなあぶデカは『仲村トオル』です。