44「教えといてやるよ…」の巻
『時』は突然だった。
サクラと首領の醸し出す濃密な『緊張感』に耐えられずに、手下の男の一人が思わず後退る。
その時。
男が履いていたブーツの踵のサビの浮いた拍車が、地面との摩擦で『…ジャリ』っと耳障りな音を立てた。
刹那の発射音!
向かい合う二人がほぼ同時に発射した『魔弾』同士が空中でかち合い、夜の繁華街の路上に激しい『火花』を散らす。
その眩しさに、杖を持っていない方の手で思わず自分の目を覆う首領。
……天才魔弾の射手を相手取る『早撃ち勝負』において、たとえ一瞬でも『目を覆う』ことは、敗北を意味する。
サクラは、右手で『引鉄を絞ったまま』【ヴィンゼスタM1873】の『ミスリル製レバー』を連続で引き続ける。
すでに、自分の杖を『ファニングショット』可能に改造しているサクラ(無茶な野郎)。
0.17秒に一発という恐るべきスピードで連射された『3発』の魔弾が、首領の右手の『魔弾連装杖』と『頭頂部の髪の毛』と『ズボンのベルト』だけを一瞬で弾き飛ばした。
ずり落ちる首領の重たい革ズボン。そして、ハラハラと舞い散る首領の髪の毛。
……そもそも魔弾連装杖の威力は『当たれば相手を吹っ飛ばせる』くらいのものだ。
それ故、魔弾を当ててモンスターの体勢が崩れた所を前衛戦士が直接とどめを刺す、というのが『魔弾の射手持ち小隊』の基本戦術となる。
つまり、魔弾の射手にとって最も必要なのは、魔弾連装杖そのものの威力ではなく、魔弾の射手本人の『素早さ』と『精密な射撃技術』となる。
赤熱化した魔石に『フッ…』と息を吹きかけ、【ヴィンゼスタM1873】を手の中でくるくると回した後、『シュタッ!』と右腰のホルスターに納めるサクラ。
「……魔弾連装杖の『口径』じゃ、魔弾の強さは測れねえ。魔弾の射手語るのはそれからだ、ぼうず」
……ヤダ、カッコいい。
続く…
好きな斬魄刀は『風死』です。




