43「ぬきな!どっちが素早いか試してみようぜ」というやつだぜ…の巻
サクラと首領は、五歩の距離を置いて向かい合っている。この距離ならばお互いに外すことはない。
サクラと首領は、お互いにだらりと手を両腰の辺りに下げたまま、腰のホルスターに挿した『魔弾連装杖』をいつでも抜けるように構えていた。
『一対一』に拘ったのは首領の方だった。
元々、この首領には他人の『魔弾連装杖』を見て笑うような趣味は毛頭ない。
サクラさえ黙っていてくれれば、むしろ自分の仲間達の方を諌めるつもりですらあった。
……しかし、行きがかり上『杖使いのプライド』に懸けて、この首領ももう後へは退けない。
せめて女性に怪我を負わせないようにと、男達の中で最も腕の立つ自分が相手をしようと思ったまでのことだ。
首領が狙うのは『魔弾連装杖』のみ。
相手を傷付けないように狙い撃つ!!
鋭い目で注意深くサクラの動きを観察しながら、首領が言った。
「……『この勝負』なんか賭けるかい?ねえちゃん」
目を細く窄めながら、首領がサクラに訊ねた。
勿論、『駆け引き』である。
二人が向かい合っている夜の繁華街の路上には『光源』が多い。
なんの気なしを装って話しかけながら、サクラに対して『光を背にする角度』に向かって、首領は摺り足で少しずつ移動を続ける。
へっ!と嘲笑いながらサクラが応えた。
「……じゃあ、おまえが勝ったら『アタシのカラダ』をおまえ達の好きにしていい。その代わりアタシが勝ったら、『おまえ達のカラダ』をアタシの好きにさせてもらう……」
ジュルリと、いやらしく舌舐めずりをするサクラ。
フン…と鼻を鳴らす首領。
……気の強いお嬢さんだ。
向かい合う二人はだらりと手を下げたまま、石化したかの如くに動かない。
お互いに、ただ静かに。
……『時』を待っている。
続く…
好きなガンマンは『名無しの男』です。




