31「素材屋」の巻
武器屋のおじさん(結構顔が広い)から紹介された『素材屋』は、町中にあるものの普段は武器屋や防具屋などのプロ相手にしか商売をしていない。
武器屋のおじさんに紹介してもらえなかったら、一般人は絶対に立ち寄らないようなお店だ。
素材屋の店内の棚にはガラスケースに入った様々な素材の『サンプル品』が並べられている。金属サンプルだけではなく獣皮や甲殻や接合材やちっちゃな魔石まで置いてあった。
ワルサ島内で簡単に手に入るものだけではなく、大陸の方からわざわざ取り寄せた物まで置いてあるようだ。
オレは店内にある応接スペースのソファに座り、素材屋のお兄さんに【女戦士の武器箱】の設計図を見てもらいながら、出されたお茶をお兄さんと一緒に飲んでいる。
この素材屋のお兄さんは手の中のメモを見ながらも頭の中ではなにか別のことを考えているような、遠い目をして飄々と話す人だった。
「……ふーん、冒険用の物入れ、か。ちょっと値は張るけど外板にヒュージビートルの装甲甲殻を使えば、衝撃吸収力は鋼以上だし多少凹んでもすぐ元通りに戻る。なにより軽い」
オレが用意したメモを見ながら、頭にバンダナを巻いた素材屋のお兄さんが専門的なことを言った。
ヒュージビートルはモンスターの一種だが、オレは幼年学校の教本でしか見たことがない。だから、【ヒュージビートルの装甲甲殻】が、どのくらいの価値がある素材なのか分からない。
「でもお高いんでしょう?」
「うーん、どうかな使う量にもよるかな。いずれにせよ、今使ってる木箱の鉄と木の板はもう処分することになるから。それに革ベルト部分も新素材を使えば、今の5倍くらい引張強度が強くなるよ。一応見積もりだけ出してみる?」
「……お願いします」
「千年竹の編み込みで形を作り、膠と鞣し革の重ね張りで強度を稼いで、その上に装甲甲殻の外板を重ねればもっと軽いし強いし動きやすいと思うけど」
「うーん……。一応重たい鉄の武器入れる予定なんで、『箱』自体の重さと硬さも必要なんですよ」
「じゃあ箱本体の素材はミスリル系の合金なんかどうかな。希少金属だけど今なら在庫あるし、加工できるマジックスミスの心当たりもある。こっちも加工費込みの見積もり出しとこうか?」
「……お願いします」
早口で淡々と話すお兄さんの勢いに押されて、よく分からないまま返事をするオレ(押しに弱い)。
「じゃあ革ベルトと甲殻の見積もりと、ミスリル加工の見積もり依頼も一応出しとくね」
テキパキと説明しながらオレのメモに何やら上書きした素材屋のお兄さんは、店内に客を置いて裏口からどこかへ出掛けてしまった。
……飄々としたお兄さんだ。
続く…
好きな素材は『ショウグンギザミ』です。




