29「……なかなか良く出来てる」の巻
「……ところで、『その木箱』は嬢ちゃんが作ったのか?」
カフェルが武器屋の床の上に置いている『予備の武器を入れる木箱』を指し示しながら、武器屋のおじさんが問いかけた。
「……オレが作りました」
小さく手を挙げながらオレが答える。
カフェルがいつも背負っている木箱【女戦士の武器箱】(命名:オレ)は、オレが設計して組み立てたものだ。この木箱を作る以前はカフェルは荒縄で全身に武器を括り付けていて、動く度に荒縄が身体を締め付ける痛みに悶えていた。バカじゃなかろうか。
おじさんはオレが作った【女戦士の武器箱】を手にとって矯めつ眇めつしながら、『武器の専門家』としての視点で品評してくれているようだ。
「……なかなか良く出来てる。造りも割りとしっかりしてるし、表面の細かな傷は多いがどこも壊れてねえし、重量物を入れてるのに補強の鉄板に歪みもねえ。牛革のベルトが少し伸びちゃいるがな」
武器屋のおじさんは手の中で木箱を器用にくるくる回したり、ベルトの付け根を引っ張ったりしながらそう言ってくれた。プロの武器屋にそこまで言ってもらい、オレは嬉しくなった。がんばって造った甲斐があるというものだ。
おじさんはさらに言葉を続ける。
「……それに、箱自体の重量バランスがいいのか、持ってみて意外に軽く感じる。使われてる素材はその辺にあるようなもんだが。……良く出来てる」
「そうだろう!ビッグボアに後ろから体当たりされても壊れなかった木箱だ!」
なぜかカフェルが胸を張って誇らしげに言った。
女戦士に頷きながら同意を示し、おじさんがオレに向かって言う。
「……この際、嬢ちゃんが新調する武装に合わせて、この『箱』も再設計しちゃどうだ?このまま捨てちまうのは勿体無え」
オレが当座で作っただけの木箱を『プロの武器屋』にそこまで褒めてもらえるとは!
『大人の武器屋』に褒められた17歳のオレは、有頂天になった。それに、今なら地図の報奨金が入ってお金もあることだし、カフェルが新しく手に入れる武器に合わせて【女戦士の武器箱】を作り直すのもいいかもしれない。
「必要な鉄材と木材は、オレの仲間の素材屋を紹介してやる。加工に道具が必要ならウチから貸してやるよ。ま、タダじゃねえがな……」
武器屋のおじさんは商人らしい抜け目なさを見せた。
どうやら、おじさんの本音はお金儲けっぽいが、オレは自分自身の意外な才能を教えてもらえたみたいで素直に嬉しかった。
続く…
好きなベルトは『ロベルト本郷』です。




