25「魔弾連装杖(まだんれんそうじょう)。略して杖(つえ)」の巻
「そちらさんは?」
武器屋のおじさんは、サクラの方を向いて聞いた。魔術師のローブを着ているにも関わらずサクラは『杖』を持っていない。昨日までクッコロ洞窟の最深部でパンツ一丁で石化していたサクラは、現代のマトモな装備を持っていない。
この際、きちんとした装備を整えた方がいいだろう。サクラが現代に蘇った『古代の悪神』であることを、万が一にも知られてはならない。
「……サクラもなんか買う?新品の魔弾連装杖もあるよ、この店」
オレは武器屋店内のガラスケースに陳列された『杖』を示しながら女魔術師サクラ(世を忍ぶ仮の姿)に言った。
魔弾連装杖。
略して『杖(つえ)』。
冒険者パーティーにて、魔弾の射手の役割を担う者が用いる武器のようなものだ。杖の内部にある回転弾倉の中には複数の『魔石』が仕込まれており、魔石の中に前もって『力』を込めておくことで弾倉分の魔弾を連続発射することができるスグレモノだ。
一応、素手でも魔弾を放つことは出来るらしいが、素手だと『タメ』と『発射』のコントロールを自分の掌の前で同時に行うことになる。それだと暴発の危険性がある上に、威力と精度も落ちる。
人間相手には通じるかも知れないがモンスター相手には通じないだろう。その点魔弾連装杖は、手入れさえ怠らなければ暴発の危険性も少なく、魔弾の威力だって素手で撃つより強い。
まさに身体能力が低い魔術師にとっては最高の『相棒』。それが『魔弾連装杖』である。
ガラスケースに陳列された金属光沢のある魔弾連装杖を興味深げに見ていたサクラ(メカ好き)だったが、やがて自分で自分の両肘の辺りを抱きしめながら言った。
「……金属アレルギーなのよ、私」
金属だらけの武器屋の店内で肩を竦め少し小声で話すサクラ(ツンと上向きFカップ)。
……こいつにも苦手なものってあるんだ。
木製カウンターに載せていた肘を離しつつ、武器屋のおじさんがサクラに言った。
「……なんなら昔ながらの木製の魔弾連装杖もございますよ」
武器屋のおじさん(商売上手)は、ここぞとばかりに在庫処分してしまおうと考えたらしい。
おじさんは続けて言った。
「……ちょっと店の裏まで来い。戦士の嬢ちゃんもな。ウチにある武器をいくつか試させてやるよ」
続く…
好きな杖は『紅姫』です。




