16「『強靭な精神力』。略して強い精力(略してない)」の巻
「要するに、私の体の方じゃなくて『心』が求めてる栄養があるのよ。それを私は『養分』と名付けて呼んでいる」
エヘン、と鳩胸をそびやかして、サクラは言う。
久しぶりに封印から解かれて嬉しいらしく機嫌よくオレに説明している。
「『心』が求める栄養って?」
オレにはよく分からない。
体と同じように、心も何かしらの栄養を必要としているのだろうか。
「私の中にある『魔法』は、当然私個人の力だけでは行使できない。『魔法の行使』には膨大なマナを必要とする。大地そのものを生贄に捧げるほどの…。でも、そんなの勿体ないでしょ?」
うん、とオレは返事を返す。
たった一人の変態魔女のために、大地そのものがいちいち犠牲になってはたまらない。
「そこで私は考えた。『魔法が人の心の中に存在するならば、同じく人の心そのものを利用してマナを直接吸収するすべはないか』ってね」
ウィンクしながら、サクラは言う。すごいでしょ私って、と今にも言わんばかりだ。
魔法を使えないオレには理屈は半分も分からない。
「あなた達の直接の先祖に当たる古代人達を使って色々実験した結果『人は性欲をコントロールできたとき初めて魔法の深淵に近付ける』という一つの結論に、私は達した。それは自分の本能を受け入れると同時に、状況によって自在に操る『強靭な精神力』を意味する。つまり、私の『養分』とは自らの本能を支配しようとする人間の『強靭な精神力』のこと」
紫色の瞳の奥をキラリと光らせてサクラは言う。
『古代の悪神』の迫力にオレはゴクリ…と生つばを飲む。しかし、具体的にどういうことなのか?
「…つまり、ヱッチな自分を他者の目前に晒されて、
『ちっ、ちがうぅ…、わたし、そんなんじゃないぃ…!』
って、理性的に抵抗しようとしている人間の姿が大好物なわけよ、私は…」
ジュルリ…と口の端から垂れたよだれを拭う古代の悪神。
「……」
「ま、君も大人になれば分かるかもね」
そう言いながら、オレの肩をポンと優しく叩く古代の悪神。
…そんなんが大人なら、オラァ一生大人になんてなりたくはないぜ…
続く…
好きなココロは『ココロのボス』です。




