12「美人でそのうえ実力もあるのに性格は『悪女』な、私…」の巻
一刻半程前、クッコロ洞窟ダンジョン最深部にて。
仲間達は、気絶したまま冷たいダンジョンの床の上で寝息を立てている。頬の下で重ねた自分の手のひらを枕にしてスヤスヤと子供のような寝息を立てる幼なじみの女戦士(いいとこの子)と、鼻ちょうちんを膨らませながら、エヘ…もう食べられないと寝言をつぶやく幼なじみの女魔術師(ベタ好き)。
その二人を、『サキュバス』は冷たい目で見下ろしている。女戦士を拘束していた【光縛式鉄鎖】を解き、余った鎖でオレをさらにグルグル巻きにしていた。
「…さて、この娘達をどうするか。私としては、あなたさえいればこの娘達は、正直どうでもいい」
紫色の冷たい瞳で仲間達を見下ろしながら『サキュバス』は本当にどうでもよさそうに言った。
「…助けてやってくれ。…オレの幼なじみなんだ」
泣き落としが目の前にいるこの『古代の悪神』にどこまで通じるのかは分からない。
しかし、黙っていれば仲間達が何をされるか分からない。
「フン…。ま、しょうがないわね。大切な『養分』の頼みですもの」
『サキュバス』はオレのことも冷たい目で見ながら言った。こいつにとって男性は『養分』であり女性は『道具』であるようだ。
ゲスめ!
そう罵ってやりたいが、鎖でぐるぐる巻きにされ冷たい床の上に転がされている無力なオレは黙ったままだ。
そんなオレを艶やかな微笑みを浮かべたまま、目の前の魔女は面白そうに観察している。
「では、この娘達にはあなたに対する『人質』になって貰う。…あなたが私から逃げないようにね」
そう言いながら魔女は、床に倒れて眠っているオレの幼なじみの額に手をかざし、口の中でぶつぶつとつぶやき出した。
魔女のつぶやきに応じて、幼なじみ達の身体がビクンッ!と痙攣し跳ね上がる。それを魔女は彼女達の額に付けた手で無理矢理に押さえ付ける。
……魔女のしなやかな細い腕のどこにそんなパワーがあるのだろう。
続く…
好きな幼なじみは『小舟澪』です。




