10「サキュバスをめぐる冒険2」の巻
オレと『敵』の口づけはまだ続いている。
壁に縛られたままのオレ(未成年)の口の中に舌を入れ、しなやかな手のひらでオレの頬をはさみ情熱的な口づけをする『敵』(見た目年齢22歳)。
初めてのキスで舌を入れられたオレは自分勝手な『敵』の行動に怒りつつも、縛られていて何もできない。
まるで生き物のようにオレの口の中を這いずり回る『敵』の舌がヌルヌルしてて気持ちが悪い。オレの頬を両手ではさんだ『敵』の小指がオレの両耳をさわさわするたびに、オレの背筋がぞわぞわっ!とする。
たっぷり15分程そうしていたあとで、やっと敵が口を離した。お互いの下唇から混じり合ったお互いの唾液が糸を引きながらたれてダンジョンの床の上に落ちる。
「……思った通り精力タップリなのね。お姉さんゾクゾクしちゃう…」
オレの下唇からたれた唾液を丹念に舐め取りながら、目的不明の『敵』はそう言った。
……いや、本当に敵なのか?
最初、舌を入れられた時は正直イヤだったが、情熱的な口づけはあくまでも優しかった。変な女は今も優しい微笑みを浮かべたままオレの頬にスリスリと頬擦りをしている。ひんやりしたスベスベの褐色の肌がオレの頬に当たって気持ちいい…
急に後ろめたくなったオレは、床に倒れたままの仲間達の方を見る。長時間晒し続けたことで疲弊し気絶した仲間達は今はスヤスヤと小さな寝息を立てている。
「……お姉さん、だれです?」
変な女の方を見ながらもう一度オレが問う。
初めてのキスのショックで思考がうまく働かない。気を抜くと、自分が着ている衣服を力任せにビリビリと破り捨ててしまいたいような、目の前の変な女に思い切り体当たりをかましたいような強烈な衝動が体の奥底からマグマのように噴き出しそうになる。
オレはそれを自分の自制心と未だ体を縛り続ける鎖で抑えつける。
「…おまえ達は私の名前を知っている。太古の昔から、おまえ達と共にあり続けるもの。
終生の友にして、敵。傷を舐め合う優しさによく似たもの。私の名は…」
オレの黒い瞳と、変な女の紫色の瞳の視線が至近距離で混じり合い火花を散らす。
人の瞳からは本当に火花が出るのだ。
そして変な女は自分の名前をオレに告げた。
続く…
好きなキスは『ゼクス・マーキス』です。




