1「うちのパーティー、大丈夫か」の巻
短編の連作になっております。
『何も考えずただ笑える』をコンセプトにしてます。
笑っていただけたら嬉しいです。
「……なんでオレが、お前らの分まで荷物持たなきゃいけないんだよ?」
オレは思わず冒険者パーティーの二人の仲間に愚痴を言う。
マッパーであるオレは、測量器具などが入った大きなリュックサックを背負っているので元々大荷物なのだ。
今はさらに、冒険中に手に入れた戦利品や仲間達の分の水、携帯簡易食料、テントや折りたたみ式の冒険者用クッキンググリルなどのキャンプ用品、止血剤や包帯などの医薬品類まで持たされている。
めちゃくちゃ重たいし、両手が塞がっているので、モンスターに襲われたとき危険なことこの上ない。
「スマンな。わたしが持ってもいいんだが…」
冒険者小隊の前衛担当の女戦士、カフェルは額の汗を拭いながら言った。
彼女は、元々汗っかきの体質なのだが、装備している全身を覆う分厚くて無骨な革鎧と、腰に下げた無骨な無銘のバスタードソード、そして背中に背負った薄い鉄板で角を補強された無骨な重い木箱を背負っているため、その額や首筋には玉のような汗が吹き出していた。
背負った木箱の中身は、予備の武器(モーニングスター×1、折りたたみロッド×2、片手剣×2、トンファー×2、三節棍×1)が入っている。バカじゃなかろうか。
「……別に、お前に持ってもらおうとは思わないよ。というか、ダンジョン内で荷物そんなにいる?」
オレが女戦士に突っ込むと、パーティーの索敵探知担当の女魔術師、ラッテも便乗してきた。
「そうよそうよ。冒険者の手荷物は最小限でなくちゃ。幼年学校の教本にもそう書いてあったでしょ。『冒険に出る際は過剰を慎むべし。現地調達の術心得るべし』、ってねっ」
人差し指を立てながら女戦士に教授する女魔術師は、靴や衣服の他には、杖と帽子しか身に着けていない。おまえは少し荷物持て。
「『冒険に出る際は銘刀業物を慎むべし。無骨なる得物を頼むべし』とも書いてあった」
額に汗して大量の武器を運ぶ女戦士はランナーズハイのような状態となり、無骨な木箱の丈夫な革ベルトが自らの肩を締め付ける痛みと徐々に筋肉に溜まる乳酸菌に酔い痴れ、もはや恍惚とした表情を浮かべている。
「まっ、カフェルちゃんは変態だもんねっ」
無邪気に容赦のないことを言う女魔術師。
「クッ……これも試練…だ!」
変態と呼ばれて、自然に顔に浮かんできた笑みを、下唇を咬みながら隠す女戦士。
うちのパーティー、大丈夫か。
続く…
好きな職業は『女戦士』です。