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亀太郎の大冒険

作者: 二階堂あまね

さあ、泳ぐぞぉ!

それっ!

 僕の名は亀太郎。今年2歳になる、オスのゼニガメです。


 1歳のときはアキヒロという少年に水槽の中で可愛く飼われていましたが、身体のサイズが大きくなったので、近所の川に流されてしまいました。


 きれいな川でした。まるで天の川がそのまま大地におりてきて清流になったみたいな川で僕はプカプカと呑気に平泳ぎしていました。


 しかし平和な日々は永く続きませんでした。


 夏のある日大きな嵐がやって来たのです。  


 きれいな川はまたたく間に汚れた濁流へと変わりました。川の流れも荒々しく、亀太郎はあれよあれよと海まで流されてしまいました。


 海は大変厳しい場所でした。

 亀太郎はもう昔みたいにプカプカと呑気に泳ぐことができなくなりました。


 海にやって来て3日目の朝。

 ついに亀太郎に絶対絶命のピンチがやって来ました。

 大きな人食いザメの群れが押し寄せて来たのです。

 海の魚たちはパニックに陥りました。

 「みんな逃げるんだ」

 イルカたちが叫んでいます。

「もうだめよ。私はもう死ぬわ。あなた、私のことは忘れないでね。」

 「なにを言っているんだ!あきらめるな!」

 亀太郎と仲のよかった鮭のサケタロウとサケミの夫婦が危機迫るなか必死の形相で会話をしています。

 みんな必死に逃げました。


 しかし悲劇が訪れました。

 亀太郎は力いっぱい泳ぎました。しかし亀太郎は泳ぐのが遅く、なかなか前に進みません。

 「もう僕はだめだ、みんな!なんとか逃げるんだ!」


 亀太郎はそっと目を閉じ、泳ぐのをやめました。   

 亀太郎は昔のことを思い出していました。

 アキヒロの笑った声。アキヒロのお母さんの怒った声。アキヒロのお父さんには臭いと言われた。アキヒロのお父さんはキライなやつだったけど、あの頃はなんだか平和で良かったな。プカプカと泳いだ夏の清流。もうあの夏は訪れない。

 

 亀太郎のか細い腕に激痛が走りました。

 

 みんなありがとう。


 亀太郎は天国へと旅立ちました。

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