(17)地雷の話題
順調に普段足を運ばない市場や商店街を案内して貰ってから、アメリアはルーファに連れられて食事をするために店に入った。
「何でも構わないし、食べられない物は無いんだよな? 取り敢えず、俺が注文しても良いかな?」
「はい。全面的にお任せします」
「よし、それじゃあ味や量は勿論だが、値段も満足できる食事にしてみせるから任せてくれ」
「期待してます」
互いに笑顔で会話してから、ルーファは近くにいた店員に声をかけた。彼は慣れた様子で注文を済ませ、アメリアに向き直る。
「ルーファさんはこの店に良く来るんですか?」
「頻繁には来ないが、この辺りに来た時には寄るかな。初めての場所では、勘で店に入ってみるんだが、それが当たった時には嬉しくなる。この店も、その一つなんだ」
そこでアメリアは、思わず尋ねてみる。
「外れる場合もあるんですか?」
「それはまあ……、盛大に外す時もあるな」
その時の事を思い出したのか、途端にルーファが渋面になる。それを見たアメリアは、噴き出しそうになるのを堪えながら話を続けた。
「その顔、よほど盛大に外した事があるみたいですね」
「ああ。もうこの近辺には近寄りたく無いと思う程度には。そう言えば、これから行く跳ね橋までの道のりに、その店があったな……。間違えて足を踏み入れないように、教えておくよ」
「そうしてください」
大真面目に告げてくる彼に、アメリアは笑顔で礼を述べた。そして、ふと気になった事について尋ねる。
「ルーファさんは、普段から面倒見が良い方なんですか?」
その問いかけに、ルーファは真顔で考え込んだ。
「どうだろう……、普通だと思うが。どうしてそんな事を聞くのかな?」
「知り合ったばかりの私にも、親切だなと思いまして。田舎暮らしで一般的な知識がないのを馬鹿にしないで、医師と薬師の制度の事を教えてくれたり、薬師組合の人達が押しかけて来た時も追い返してくれましたし」
そう例を挙げてみたが、ルーファは軽く首を傾げる。
「基本的に、目の前で困っている人間がいたら、助けるのは普通だと思う。勿論、自分の手に余る事であれば、無理はしないが」
「そうなんですね」
「だが……、以前にも言ったと思うが、君の場合はどうしても危なっかしい感じがして、お節介を焼きたくなってしまうかな?」
「それって」
アメリアが何か言いかけたところで、店員の声が割り込む。
「飲み物をお持ちしました。お料理もできた順にお持ちしますね」
「ああ、ありがとう」
そこで不自然に口を閉ざしたアメリアを不審に思いながら、ルーファは店員がテーブルにグラスを置いて離れたタイミングで尋ねてみた。
「アメリア? どうかしたのか?」
「あ、いえ……、その……、私に気を配ってくれているのは、私が魔力持ちということも関係しているのかなと思いまして。あまりこういう事を、他の人には聞かれない方が良いんですよね?」
周囲の様子を窺いながら、アメリアが小声で尋ねてきた。それにルーファが苦笑しながら答える。
「確かに、不特定多数の人間に聞かれるようなことは、避けた方が良いだろうね。それでさっきの答えだけど、気を配るというよりは羨ましいのかな? だから真っ直ぐな君をそのまま見ていたいというのが、一番近いかもしれない」
それを聞いたアメリアは、少し考えてから慎重に問いを重ねる。
「以前、ルーファさんは魔術師塔には入らずに、派遣された魔術師に指導を受けたって言ってましたが、やっぱり周りから色々言われたりしたんですか?」
その問いかけに、ルーファは苦笑を深める。
「まあ……、多少、ひねくれる程度には。でも俺のありのままを受け入れてくれる家族もいるし、今では大して気にしていないな」
「そうですか。家族仲が良さそうですね」
「……うん。兄と義姉とは仲が良いね」
「…………」
何気なく笑顔で感想を述べたアメリアだったが、そこで彼の顔つきが微妙なものに変化したのを見て取って、思わず口を閉ざした。
(お兄さんとお姉さんとは仲が良いって……、他の人とは仲が悪いってことかしら? うわ、どうしよう? 悪い事を聞いちゃったかも!?)
アメリアが内心で焦っていると、ここで救いの神が現れる。
「お待たせしました。お料理をお持ちしました」
その明るい店員の声に、アメリアは救われた気持ちになった。それはルーファも同様だったらしく、笑顔で店員に礼を述べながらアメリアに声をかけてくる。
「ありがとう。じゃあ食べようか」
「はい。美味しそう! いただきます!」
それから二人は気まずくなった空気を打ち消すため、明るく会話しながら食べ進めた。




