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竜の薬師は自立したい  作者: 篠原皐月
第3章 そして事態は混迷を深める

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(16)ガイド付き王都観光

「それじゃあ、いってらっしゃい。気をつけてね」

「うん。行ってきます」

 店を休みにした日。警備隊の仕事に出かけるサラザールを見送ったアメリアは、それから少ししてリリアに見送られて、元気よく店の外へ足を踏み出した。


「さてと。今日は一日休みにすることにして、何か緊急事態が起こったらリリアに連絡してもらうけど。丸一日、どうやって過ごそう……。よく考えてみたら、薬師所を軌道に乗せることばかり考えていて、この街のことを何も知らないのよね」

 とりあえず、市場や商店街などを改めて眺めながら考えてみようと歩いていたアメリアの前に、見慣れた人物が現れる。


「やあ、アメリア。こんなところで奇遇だね。何か買い出しかな?」

 それにアメリアは、笑顔で挨拶を返す。


「あ、ルーファさん。こんにちは。今日は店をお休みにしたので、街の見物に来たんです」

「そうか。ところで行き先は決まっているのかな?」

「それが全然。この街に来てから、仕事や生活に必要な店とかにしか行った事がないので、行き当たりばったりで見て歩こうかと思っていたところです」

 苦笑しながらアメリアが事情を説明すると、ルーファが僅かに考え込む素振りを見せながら言い出す。


「そうか……。それなら君さえ良ければ、俺がこの街を案内しようか?」

「え? ルーファさんがですか?」

「ああ。今日は偶々俺も仕事がないから。良かったら案内するよ。一人で回るより楽しいと思うし」

 その申し出にアメリアは幾分躊躇ったものの、神妙に申し出る。


「そうですか? それなら案内をお願いしても良いでしょうか?」

 それにルーファは上機嫌に応じた。


「勿論。それじゃあ、まず一番賑やかな広場に行こうか。そこに繋がる商店街も、色々な店が揃っているし、眺めるだけでも楽しいと思うぞ?」

「よろしくお願いします!」

 気分が上向いてきたらしいアメリアと並んで歩き出しながら、ルーファは前日の事を思い返していた。


(レストの奴……、いきなり駆け込んで来たと思ったら、『明日、アメリアちゃんが店を休みにして、一人で王都見物に出るそうだぞ!』とか言い出すから。何事かと思ったんだが)

 世間話の合間にアメリアの様子を窺いながら、ルーファは弁解するように考えを巡らせる。


(いや、まあ、確かに、腕の良い薬師なのは確かだし、しっかりしているのも分かっているが、妙に世間知らずで危なっかしいしな)

 そしてこれまで薬師所を訪れた時の、彼女の保護者達の対応を思い返した。


(それに『リリアさんが、アメリアちゃん一人で歩かせるのは心配だけど、兄同伴っていうのもどうかと思うから、兄貴には内緒とも言ってたぞ!』とか。どうもラリサさんとリリアさんの、俺に対する好感度にかなりの差がある気がするんだよな)

 そこまで考えたところで、いつの間にか黙り込んでいたルーファに、アメリアが怪訝な顔つきで尋ねてくる。


「ルーファさん、どうかしましたか?」

 その声で、ルーファは我に返り、笑顔で取り繕う。


「その、ついでに何か買いたい物とかあれば、その店も教えようかと思ったんだが」

「それなら思いついた時に話しますね?」

「ああ、遠慮しなくて良いから」

 明るい笑顔に釣られて無意識に表情を緩めたルーファは、目に付いた物を説明しながら目的地に向かって歩き続けた。



「ここが時計台広場だよ。この辺りでは一番広いし、広い街路に繋がっている。商店街も隣接しているし、待ち合わせ場所としても良く使われているな」

 通りを抜けて広々とした場所に到達したルーファは、傍らを振り返りながら説明した。対するアメリアは、広場の向かい側にそびえ立つ塔を見上げながら、沸き立つ気持ちを抑えきれなかった。


「そうなんですね! 凄く広いし、あの塔も凄く高いですね! 壁面もキラキラしていて繊細な模様だし、遠くから見ても目立ちそう! それに上まで登ったら見晴らしも良くて、すぐに待ち合わせの相手も探せそうです!」

「登る?」

 アメリアの台詞を耳にした彼は、怪訝そうに声をかける。


「アメリア? あの時計が据え付けられている塔は、普段出入り口に鍵がかかっているから中の階段は上れないんだが?」

 それを聞いたアメリアは、慌てて言葉を返す。


「あ、え、ええ? そうなんですか? てっきり自由に階段を上れるかと思っていました!」

「残念だけど、お祭りの時とかには解放されているから、その時に上ってみれば良いよ」

「そうなんですね。そうします」

「いや、でも、一瞬、君が壁伝いに登る気かと思ってびっくりしたな」

「あはは……、まさか。普通はそんなことはしませんよね?」

「ああ、普通はそうだな」

 まさにそう考えていましたなどとは口にできないまま、アメリアはルーファに引き攣り気味の笑顔を見せつつ、なんとかその場を誤魔化した。








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