(12)きな臭い話
「二人で、随分面白い話をしているじゃない」
「リリア、どうかしたのか?」
診察室に入ってきたリリアは、どうやら二人を探していたようだった。そして彼らに向かって、妙に確信している口調で告げる。
「私もこの前話を聞いてから、不審に思っていてね。他の調査員に少し調べて貰って、たった今話を聞いてきたところなの。どう考えても怪しいわね」
「何が、どう怪しいんだ?」
「バルザードでも、その薬草の主な原産地の状況を確認して貰ったの。そうしたら、不作でも何でもないそうよ。それにその薬草は、隣国では普通に流通しているわ」
「何だと?」
「どういう事だ?」
即座に顔つきを変えた男二人に、リリアは真顔で説明を続ける。
「どうもこうも、この国に輸出する時は『不作だから物がなくて少ししか売れない』とか言っているみたいね」
「流石にそれは無理がないか? この国の人間がバルザードに出向けば、普通に買い入れられるだろう?」
そこでサラザールが素朴な疑問を口にした。しかしリリアが首を振ってから解説する。
「ところがそうじゃないのよ。バルザードの特産品の一つが薬種やその原料で、その取引には王家発行の許可証が必要なの。だからその許可証を保持している薬種商でないと、売買はできないのよ。売買相手とその数量もきちんと申請しないと許可が取り消される仕組みで、結構厳密なのよね」
それを聞いたサラザールは、無意識に眉根を寄せた。
「つまり? この国とは違って、バルザードでは王家が薬草の売買をコントロールしているわけか?」
「そういう事。王家が直接か、その近くの上層部が『他の国に多く売るな』と言ったら、薬種商はその通りにするしかないでしょうね」
「なんだそれは。それじゃあ、売値を釣り上げているのが見え見えじゃないか。買い付けに行ったこの国の人間が、よく怒らないな」
今度はランデルが不満を露わにしたが、リリアが難しい顔になりながら告げる。
「ところが、そうでもないのよ。良く調べてみたら、バルザードがそう言い訳して売り渋り始めたのは、この国で変な咳が流行り始める少し前からなの。それでも当初は問題なかったから、この国の業者は『不作なら仕方がないか』と納得して、若干の高値で購入していたわけ」
それを聞いたランデルが、真剣な面持ちで考え込む。
「そうこうしているうちにこの国で変な咳が流行り始めて需要が増えたが、咳止めは元々品薄だったから、さほど疑問を覚えずに高騰した薬草を購入していたということか……」
「そうなのよね。二人とも、ここまで聞いて、何だかおかしいと思わない?」
ここでリリアが意見を求めると、二人は揃って断言した。
「偶然にしてはできすぎているな」
「怪し過ぎるだろう。しかもこの事態に対して何の手を打っていないなんて、この国は大丈夫なのか?」
「一応、上の方は調べているようだけどね。あまり本腰を入れている気配がないわ。それというのも王太子妃がバルザード王家出身で、友好な同盟国だからなんだけど」
「なるほど、そういう関係もあるのか。さて、サラザール。どうする?」
そこで意見を求められたサラザールは、微塵も迷いを見せずに告げる。
「取り敢えず、もう少し情報収集する必要がある。アメリアに伝えるのは、確信を得てからでも遅くはないだろう」
その意見に、リリアとランデルも同意して頷いた。
「そうだな。まずはここを軌道に乗せるのが最優先だし、アメリアにはそちらに集中して貰おう。俺達は引き続き、各方面を当たっていくってことで」
「そうね。他の調査員にも声をかけて、もう少し詳しく調べてもらうことにするわ」
「そうしてくれ。何か判明したら、その都度すぐに情報を共有しよう」
そこで三人の話は纏まり、アメリアが知らないところで調べを進めていくことになった。




