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美咲は主張する、青山くんは私に惹かれていると


 徒然なるままに日暮らし。

 気づけばもう、文化祭が行われる時期になってしまった。

 私の通う四中では、文化祭は二日間にまたがって開催される。

 秋らしい、穏やかな風が窓から吹き込む。

 あと数分後にはもう、四中文化祭が開幕だ。



「おっすー。メグはどこまわりたい? 学年演劇とか観に行く?」



 私と同様に今日は特にやることのない美咲が、ひらひらと手を振りながら現れる。

 三年生は受験シーズンということもあって、他の学年に比べて出し物が少ない。

 基本的には幾つか展示物を出すだけで、学年演劇も三年生にはない。

 だから毎年学年演劇に出演していた美咲は、こうして暇をしているというわけだ。


「メグが劇やんのは明日だよね? そっちは絶対観に行くとして、学年演劇はどうしよっかな。迷うよね」


 四中文化祭では、一年生と二年生が初日に演劇を行い、演劇部が最終日でもある二日目に演劇をするのが通例となっていた。

 だから私も美咲と同じ様に暇で、こうやってのんびり学内を見回ることができる。

 ちなみに彼氏の高橋くんと文化祭を回るのは、今日の後夜祭と明日の二日目の方のご予定らしい。

 当然私は後夜祭は出ないし、二日目は演劇部の部室に引きこもりのご予定だ。お一人様はつらい。


「結局渡辺さんとかは一緒に回れないの? あの子、彼氏とかいたっけ?」


 渡辺さんは違うクラスの友達と回るみたい。

 美咲に渡辺さんも誘うように言われていたのだけれど、残念ながら断れてしまっていた。

 すでに先約がいたみたい。

 友達だと言っていたので、彼氏じゃないはず。

 ついこの前、恋愛相談を受けた時も、自分自身にはそういった事はないと言っていたし、大丈夫なはず。

 いや、大丈夫って表現はちょっとあれだけど。


「あ、そなの? ざんねーん。ま、いっか。うちらはうちらで楽しみましょっ。うちもメグに訊きたいことあるし」


 え? 訊きたいこと?

 私はなんとなく嫌な予感がする。

 にやにやと笑う美咲は、どう考えても面倒くさい絡みをする気満々の顔をしている。

 どうしよう。どうせやることないし、今日もう帰ろうかな。


「ほら、横尾とは、どうなってんのよ。そろそろ連絡先くらいは交換したでしょ?」


 な、なにがよ。どうもなってないし、連絡先も知らないよ。

 は? うそまじで? と美咲はその瞬間、ありえないといった表情に一変した。

 昔から私の幼馴染は変なところで鋭い。

 ピンポイントで厄介な部分をつつくのが得意な子だった。

 バドミントンが上手なのも、たぶんそのおかげだと思う。


「あいつほんっとヘタレだな。もうすぐ卒業だってわかってんのかな? まだ連絡先すらきいてねーのかよ。今度会ったら、一発殴ってやろっと」


 なぜか美咲は急に苛立ち始めている。

 しかもどうやら怒りの矛先は横尾くんに向いているみたいだ。

 私は心の中で一応ごめんなさいと謝っておいた。


「はあ、まったく。……でもさ、メグ自体は結局どっちなの? 前から気になってたんだけど」


 どっち? ってなにがどっち?

 私は美咲の質問の意味を理解できない。

 美咲が前々から、横尾くんは私に惚れている説を推しているのは知っていたけれど、その他にも何か説があるのかな。

 ちなみに美咲の主張が正しいとは私は思っていない。

 たしかに私は横尾くんに嫌われてはいないと思うけれど、あの人は彼女をつくらないだけとか言っていたし、あんまり恋人とかに積極的な興味がないんだと思う。



「どっちって言ったら決まってんじゃん。横尾が気になるのか……青山が気になってるのか、どっちなのって話」



 ……へ? 青山くん?

 しかし、ここで予想外の名前が出てきて私は戸惑う。

 鈴井さんじゃあるまいし、なにがどうなって青山くんの名前がこの場面で出てきたんだろう。


「は? メグ、それまじで言ってる? 絶対青山、メグ狙いじゃん。しかもわりとお似合いっていうか、いい感じだし。鈴井には悪いけど、うちは青山メグカップル推しかな」


 いや、いやいやいや。ないないない。青山くんは私のことそんな風に思ってないよ。

 私はさすがに美咲のげすの勘繰りが酷すぎると苦笑してしまう。

 あんな超パーフェクトヒューマン男子が、私みたいな頭パッパラパーピーマン女に好意を抱くわけがない。



「まじかよこいつ……うわぁ……もうここまでくると引くわぁ……メグ、ほんと気をつけなよ? あんた、将来刺されるかもしれないからさ」



 それなのに美咲は、残念なものを見るような顔で合掌をしている。

 なんて腹の立つ幼馴染なんだろう。

 私は美咲の彼氏の高橋くんをとても尊敬するのだった。




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