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横尾くんは語る、私は意外に自己主張が強いところがあると



 私は最近、海外ドラマにはまっている。

 元々邦洋問わず映画は好きだったけれど、ドラマ、特に海外のドラマはこれまであまり見てこなかった。

 理由は単純だ。物語がひと段落するまでが映画に比べて長いので、それが億劫だったのだ。

 一話一時間だとしても、シリーズはだいたいどれも少なくとも十話くらいはある。

 それが海外のものだと平気で一シリーズに二十話くらい使い、さらにそのシリーズがシーズンワンだのシーズンツーだのいってどこまでも続いていく。


 そういうわけで海外ドラマには中々手を出してこなかったわけだけど、最近は一話完結型の作品で面白いものを偶然見つけて、それを毎日欠かさず鑑賞している。

 私が気に入っているのはCBIとかいうカリフォルニアの捜査官チームをメインに据えた刑事ものだ。日本でいう神奈川県警的な感じだろうか。かなり適当に言ったので全然違うかもしれない。

 とにかくそこに出てくる主人公はそのCBIにコンサルタントとかいう役割で事件解決に手助けをする元詐欺師。基本的には毎回その彼が捜査の常識を無視した型破りな方法で犯人を暴き出していくといったストーリー展開だ。


 たまたま妹がアマプラを使ってリビングのテレビを占領して見ていたので、私はそれを後ろからなんとなくマンゴーアイスを食べながら眺めていた。

 するとドラマの開始たった数分で、主人公がとある事件の一つを鮮やかな手口で解決してしまい、さらに犯人と遺族に凄まじくショッキングな結末がくだされるという衝撃的な冒頭で、私は一気に引き込まれてしまった。

 連作短編のような構成ながらも、主人公と因縁がある連続殺人鬼についての事件も同時に進行していき、飽きさせない構成となっている。

 まだ私は最初のシーズンしか観終わってないけど、たぶん途中で放り出さずにファイナルシーズンまで観ることができる気がする。こんなに面白いドラマがあるなんて。やっぱり食わず嫌いはよくないね。



「え、えーと、そ、それで、これが君オススメの海外ドラマというわけかい?」


 

 自分の机の上に山積みに重ねられたDVDを少しだけ怯えた表情で一瞥すると、隣の席の横尾くんは私の方へ困惑した顔を向けた。

 もちろん彼の机に並べられたものは全部私が数日前に購入したものだ。


「う、うーん。僕は普段あまりドラマとかそういったものは見ないんだけどね」


 大丈夫、大丈夫。私もどっちかというドラマより映画派だけど、これは本当に面白いから。

 せっかく私のお気に入りの作品を無料で貸してあげようとしているにも関わらず、なぜか横尾くんは渋い表情をしている。

 

「だ、だいたい、映画やドラマ、それに小説といった創作物はただでさえ個人によって趣味趣向が変化しやすいんだ。大衆受けを狙ったロマンス作品や冒険活劇ものであればそれなりに他人に紹介しやすいだろうけど、これは話を聞く限りだと刑事ものなんだろう? ミステリー要素の強い作品は人によって肌が合うか合わないか結構はっきりと差が出るからね。いくら君のお勧めだからといって、ワンシーズン二十話超えで一通り目を通すのに何十時間もかかる海外ドラマはさすがに……」


 大丈夫、大丈夫。私もこんな長い作品絶対最後まで見れないと思ったけど、もう今セカンドシーズン観終わりそうだから。

 それにこれ絶対横尾くんも気に入ると思う。私が保証する。

 DVDの山から身を遠ざけようとする横尾くんを私は丁寧に諭していく。どうしてかそんな私を見て彼は絶望に似た顔をしていた。


「はぁ、どうやら僕に逃げ道はないようだね。わかったよ。どれくらい時間がかかるかはわからないが、とりあえず目を通すことにしよう。それまでありがたく借りることにする」


 うん。そうするといいよ。セカンドシーズンはもう少し待ってね。私もまだ見終わってないから。

 私は同士ができたことに嬉しくなり、横尾くんの肩をぽんぽんと叩いた。



「……前から思っていたけど、君って意外に自己主張が強いところあるよね」



 そうかな? あんまり私はそうは思わないけど。

 横尾くんがいつものごとく的外れな人格分析をしていたが、同じ趣味を共有できる友人ができたことに私は気分がよくなっていたのでそれを今日は気にしないであげることにした。




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