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第22話



「あたしも見ていたけど、あれは確かに凄かったわ。でもそれ以上に驚いたのは休みなくずっと回復魔法使ってたことね。ていうか、聖女様と同じペースで回復魔法を使えることの方がおかしいわよ。凄いわねルクス!」

「魔力に関しては生まれ持ってのものだし、別にそんな言われることでもない」

「だとしてもよ! あんなに回復魔法バンバン撃っちゃうのは凄いことよ! もっと自信満々に誇ってもいいのよ!」


 それはそれで嫌味な人間だと思われると思う。

 そんな話をしながらバクバクと食べていると、よそってあった白米が終わってしまった。


「ルクスさん、あんまり早く食べると体に悪いですよ。よく噛んで食べないと」

「大丈夫。口の中に風魔法を作って、分解しながら流し込んでるから」


 私がそういうと、アレアが頬を引きつらせる。


「た、食べるのに全力すぎませんか?」

「美味しいもの、たくさん食べたいから」


 私は白米をお代わりするために席を立つ。

 その時、何やら食堂が賑わっていることに気づいた。

 何だか黄色い歓声に近いものが聞こえ、そちらに視線を向けるとすらりとした男性がいた。


 ガルスだ。なぜこんなに騒がしいのか、その理由が分かった気がする。

 ガルスもこの宿を利用していたんだろうか?


 どちらにせよ、また声をかけられても敵わない。

 ガルスはこちらに気づくと、気さくげに手を上げる。

 まさか、私に手を上げている? いやいや、きっと自意識過剰なだけだ。


 無視無視、と思ってもガルスの足は迷いなくこちらへと向かってくる。

 ガルスを追うように、皆の目が私へ集まってくる。

 そして、ぴたりとガルスは私の前で足を止めた。口元に微笑を浮かべた彼を私は睨み返した。


「ルクス。良かった、ここにいてくれたか。どうした? 朝は苦手か?」

「朝から面倒なことに巻き込まれたらこんな顔にもなる」

「面倒なこと? 何かあったのか?」

「現在進行形」

「……オレか? ああ、そういうことか」


 ガルスは周囲の視線に気づき、申し訳なさそうに頭をかいた。


「悪かったな。周りに誤解させるようなことをしてしまったか?」

「わざとなの? わざとなら決闘を受けてもらいたいんだけど?」

「……わ、わざとじゃないぞ? 報告したいことがあってな」

「何?」


 ロクでもない情報ならここで蹴りかかってみるのもいいかもしれない。


「ルーエンが目を覚ましてな。昨日のことでお礼を伝えたいそうだ。食事が終わった後、オレと一緒にルーエンに会いに行ってくれないか?」


 え、面倒。

 それが素直な感想だったけど、断れる雰囲気ではなさそうだ。


「分かった。会うだけでいい?」

「ああ。それで大丈夫だ」


 それならいっか。

 私はそう思いながら、白米をお代わりしに向かう。

 ガルスの用事もそれだけだったようで、食堂を後にした。

 お椀を山盛りにするように白米をよそった私は、自席に向かいながらどのようにこの白米を平らげようとかと想像する。


 肉と野菜、それにスープと一緒に食べてもいい。

 考えただけで再びお腹が空いてきてしまった。

 それにしても、先ほどの数倍は視線を集めている気がする。


 全部ガルスのせいだ。

 これから人前では合わないようにした方がいいかもしれない。

 でもそれはそれで密会だ、なんだと言われそうだ。


 そんなことを言ってきそうな人が、私の席にもいるし。

 それが誰かって言えば、じーっとこちらを見ているラツィだ。

 彼女は何か話しなさいよ、とばかりに見てくる。

 それはラツィだけではなくアレアもだ。


「何?」

「いえ、ちょっと気になりまして……何を話していたんですか?」


 アレアもまた期待するような眼をこちらに向けてくる。

 色恋の話が好きな人は多いと聞くけど、アレアもその一人なのかもしれない。

 きっと、私とガルスが何か話していることに、強い興味を惹かれての視線なんだと思う。


「別に何も。昨日助けたルーエンっていう人」

「えっ、ルーエン様ですか? この街の部隊長を務めている人と聞いていますよ。領主でもあるそうですし」

「そんな話、ガルスもしていた」

「そんな人に会うというのは、凄いことですね。失礼のないように気をつけないとですよ」

「分かってる」


 どんな感じで話せばいいのか、困ってしまう。

 今の態度だとたぶん失礼だろう。

 丁寧に話すの苦手だけど、さすがにやった方がいいかもしれない。

 そんなことを考えていると、ラツィがさらに視線を強めた。


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