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第15話



 それからも、私は傷の治療を行っていく。

 魔物の攻撃によって大きな傷を負ってしまった人たちも運ばれてくる。

 そんな人たちは、一度ここで止血を行ってから、別の場所へと運ばれるそうだ。

 ……その中には欠損もいて、近くにいた精霊術師の顔が青ざめてしまっているほどだった。


 今も西側では魔物の討伐が行われているそうで、まだしばらく怪我人は増えてしまうかもしれない。

 

 重傷者が多いのは、軍の体制もある。

 回復魔法が使え、戦場に出られる人間というのは限られている。

 貴重な回復魔法使いが、命を落とすようなことがないため、基本的には後衛に配置するか、今のように拠点に残して治療を行うのが一般的だ。


 そのため、戦場では最低限止血ができるようにとポーションが持たされるのだが、今はそのポーションの在庫も限られてしまっている。

 だから、わりと重い傷の人がたくさん運び込まれるわけで――。


「る、ルクスさん! この方の治療はできますか!?」

「うん、大丈夫。私がやっておく」

「こ、こっちの方もお願いできますか!?」

「うん、分かった」


 それにしても、多い。

 何より、私のもとへと運ばれる数が凄いのだ。

 皆、完全に私に任せればいいと思っているみたい。

 ……まあ、まだ魔力に余裕があるからいいけど、とても大変なんだけどね。


 私に頼ってくるのは、回復魔法の相性に関してもあるだろうし、とりあえず私なら問題はないからね。

 

『わー! 大変だー!』

『でも、みんなを治療してあげないと!』

『ルクスのためにも、頑張ろー!』


 微精霊たちは元気に声を上げてくれている。

 近くにいた子の頭を撫でるようにしながら、私は回復魔法を行っていく。


「……我も何か出来ればいいのだがな」


 近くでお座りをするしかないティルガが残念そうな様子を見せる。

 ティルガは風魔法以外はほとんど使えないから仕方ない。

 患者の治療をしてから、私は周囲に聞こえないよう問いかける。


「みんな、疲れてない?」

『僕たちは大丈夫だよー! ルクスは?』

「私も大丈夫」

『それなら良かったぁ! 無茶しないでね!』

「みんなも疲れてきたら言ってね」

 

 微精霊たちにそう言ってから、私は治療を再開する。

 どんどん回復魔法を使用し、次から次へと治療を行っていく。

 まだまだこの救護所にはたくさんの人がいるんだしね。

 早くみんなを治療してあげないと。

 そう思っていると、驚いたようにこちらを見てくる女性に声をかけられた。


「あ、あのぉ……」

「ん?」


 私が振り返ると、そちらには白いフード付きの服を身に着けている女性がいた。

 美しく、落ち着いた雰囲気の人だ。


「す、すみません……っ。わ、私も魔力が回復してきましたので、あ、あなたも一度お休みした方がいいと思いまして」


 魔力の回復? そういえば、私と一緒に来ていた人たちの中には、すでに休憩に入っている人もいた。

 でも、私は自分の中の魔力を意識してみる。


「私は全然大丈夫」


 まだまだ有り余っている。

 しかし、その女性は慌てた様子で首を横に振る。


「で、でも……こちらに来てからもうずっと回復魔法を使用していますよね? す、数時間は経っていますが……」

「そうなんだ? でもまあ、このくらいは別に」


 一日中魔法を使い続けても、魔力に余裕はあるので大丈夫だ。

 私の返事に、女性は目を見開き、それからなぜか少し落ち込んだ様子を見せた。


「……す、凄いですね。……私も、そのくらい立派だったら……」

「別に。人と比べるものでもないと思うけど……」


 治療しているのなら、やっていることは同じだ。

 魔力量に関しては、生まれ持っての部分もあるんだしね。


「だ、ダメなんです……私は――」

「聖女様! こちらの治療お願いできますか!?」


 その時、兵士の声が聞こえた。

 ……聖女様?

 私が疑問を抱いたときには、女性はすでに慌てた様子で去っていった。

 私は椅子に腰かけ、こちらにやってきた患者に片手を向ける。 

 回復魔法を使用すると、彼の傷はみるみるふさがっていく。


「あ、ありがとな……! オレの体質って特殊らしくて、どうにも治療できる人が少なくてさ……」

「そうなんだ。ちょっと質問いい?」

「え、ななんだ? か、彼女とかなら今はいないぜ?」


 誰がそんな質問するか。


「さっきの人って聖女様って呼ばれてたけど」

「あー、聖女シャーサ様だな」

「そうなんだ」

「ああ。本当綺麗な人だよな……あっ、で、でもルクスさんも綺麗ですよ?」


 誰も聞いてないけど。

 私は呆れながらも苦笑だけを返し、聖女シャーサの方を見た。

 なんだか彼女は落ち着きのない様子で回復魔法を使用している。


 見ていてちょっと不安になるくらい臆病にも見える。

 でも、彼女の回復魔法は……さすが聖女と呼ばれるほどに丁寧で美しいものだ。


『聖女様についている微精霊、とっても優秀だよ!』

「そうなの?」

『うん! 僕たちはとっても優秀だけど、どちらかというと攻撃に特化してるからね! 聖女様の微精霊たちは攻撃は苦手そうだけど、回復とかは得意そう!』

「そうなんだ」

『私たちルクスに似てるからね! えへへ! 野蛮なの!』

「褒めてる?」

『褒めてるよー! 僕たちもぶっ飛ばすの大好きだもん!』


 別に私はぶっ飛ばすのは好きじゃないよ? 血沸き肉躍る戦いが好きなだけだからね?

 微精霊たちの調子に苦笑していると、次の怪我人がこちらに来ていた。

 ……気づけば、私とシャーサとで分担して治療を行う構図が出来上がっていた。


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