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第13話


 野営を終えた後、再び馬車へと乗りこんだ。

 野営の後は特に大きな問題はなく、まもなくラースベドの街が見えてきた。


 前方へと視線を向けると、馬車が続々とある地点を中心に動きを止める。

 ……ラースベドの街へと入る前に、周囲の状況を確認するため、一キロほど離れた地点を集合場所としていたのだ。


 魔物がたくさんいるかもしれないからね。

 私たちの馬車もその地点で止まった

 遠目に周囲を見てみるが、魔物の気配はない。私も微精霊たちに頼んで周囲の状況を調べてもらうことにした。


 ラースベドの街はひとまず問題なさそうに見える。

 外壁は一部壊れている部分もあるけど、大きな損傷はない。

 ただ、街の中まではどうなっているかは分からない。


 私は馬車の中からラースベドの街を見ていたのだけど、ガルスに肩をつつかれた。

 

「オレはこれから皆に指示を出すから、下手に声を上げると音を拾うから気を付けてくれ」

「わかった」


 ほかの馬車からも人は出ていない。

 というのも、問題なければすぐに再出発する予定だったからだ。

 私が口を閉ざしたのを見ると、ガルスはすぐに魔石を手に取った。

 それを口元へと運ぶと、すぐに声が聞こえた。


『皆の者、聞こえるか』


 ガルスの声が響く。各馬車には魔石が設置されており、ガルスのマイクから音を拾えるようになっている。

 今声を出せば、また余計な噂を流される可能性がある。

 私は両手を口元にあてながら、ガルスの様子を見守る。


『今、魔物による被害はないようだ。このままラースベドへと向かう! ただ、全員常に周囲への警戒を怠るな!』


 ガルスがそう声を上げ、マイクから手を離した。

 とたんに、彼から放たれていた張り詰めた空気は消えていく。穏やかな笑みを浮かべる彼に、私はやはり別人が乗り移っているのではないかと思わずにはいられなかった。

 私がガルスを見上げていると、彼は表情を緩めた。


「なんだ? オレに見とれたか?」

「ううん、それはない。まったくの別人に見えてちょっと面白いと思った」

「……面白いって、見世物じゃないんだぞ?」


 彼は肩を竦め、視線を外へと向けた。

 止まっていた馬車が順に動いていく。

 遠くで見たときは小さいと感じたラースベドの街が、どんどんと近づいていく。

 思っていたよりも大きな街だ。近づくことで、魔物からの襲撃による傷跡もはっきりと見えていく。


 ここまで魔物に襲われることなく来ることができた。

 門が開くと、馬車はゆっくりと街の中へと入っていく。


 街並みは思っていたよりも普通だった。

 外からでも見えたが、やはり大きな建物が多い。

 その中でもひときわ大きな建物が見えた。

 

「あそこは巨大図書館だな」

「図書館……」

「本は好きか? あとで時間があるときにでも見に行ったらどうだ?」

「……本は苦手」


 絵本とかなら好きだけど、難しい文学などは苦手だった。

 私が顔をしかめると、ガルスは苦笑していた。

 しかし、そんな表情もすぐに険しいものへと変化していく。

 

 ちょうど、馬車が街の人の横を過ぎた時だった。

 私も、彼らの表情が目に留まり、思わずじっと見てしまった。失礼なことだったと、少しして反省する。

 

 落ち込んだ表情と、片腕を怪我しているのか包帯を巻いた男性の姿があった。


「おそらくは兵士だろうな。……この戦いで怪我をしてしまったのだろう」

「……うん」


 私は小さく息を吐いた。

 わかっていたことだけど、この街は今苦しい状況だ。

 彼らの心を、少しでも助けられるようにしないとね。

 馬車はまっすぐに一つの施設へと向かう。


「あそこは兵士たちの駐屯地だな。一度そこに全員で集合した後は、それぞれの適性に合わせて仕事に当たってもらう予定だ」

「私は回復魔法を使えるからその治療を行うチームに合流すればいい?」

「そうなるな。回復班というのだが、彼らの指示を仰いでくれ」

「分かった」


 駐屯地と呼ばれた敷地は、かなり広大だ。

 多くの馬車を受け入れられるだけの敷地もあった。

 訓練施設としても使われているのだろう。それらしい道具が置かれた場所もあった。

 

 やがて、馬車は完全に止まり、それに合わせてガルスが馬車からおりていく。

 私も、その後を追って外へと出た。

 久しぶりの地面の感触を確かめていると、たくさんの兵士たちが出迎えているのが分かった。

 ……援軍をどれだけ待ち望んでいたのかは、彼らの表情を見ればよく分かる。

 圧倒されるほどの様子であったが、私は平静を装うようにぎゅっと表情に力を籠めた。


「お待ちしておりました! ガルス様!」


 先頭にいた兵士の一人が、ガルスの元までやってきて礼をする。


「ルーメンは今どうしている? すぐに状況を確認したい」

「ルーメン様は魔物の討伐へと向かっています! まもなく帰還するはずなのですが……」

「そうか。こちらにいる兵士たちは自由に使ってくれ。そちらの足りない場所に人員を割いてほしい」


 ガルスがそう指示を出すと、兵士はもう一度深く頭を下げた。


「かしこまりました! これより、回復班、ポーション班に分かれていただきます! 回復魔法が使用できる人は、私に、それ以外の方は彼についていってください!」


 兵士はガルス以外を見るようにしてそう叫んだ。

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