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第1話


 旅の準備を終えた私は、集合場所として指定されているその地点へと向かっていた。

 これから、私は今いるリーナメール国から南の友好国であるルエコムンド国に向かう予定だった。


 というのも、ルエコムンド国にあるとある街周辺に突如として大量の魔物が確認された。

 それらを退け、どうにか街を守ることはできたようだが、依然として危険な状況であることに変わりはないらしい。

 

 魔物は今この瞬間もあちこちで確認されているし、何より一度目の戦闘による被害が多いらしい。

 重傷、軽傷問わずと多くの怪我人を出し、また備蓄していたポーションも残り少ないらしい。


 魔物からの防衛、怪我人の治療、ポーションの製作が主な仕事となる。

 ルエコムンド国では他の地域でも魔物の被害が増えているらしく、その国の兵たちだけでは対応が難しいらしく、リーナメール国へと援軍の要請があったのだ。


 集合場所へと向かっていると、私と同じ依頼を受けているのだろう人たちを見かけることができた。

 彼女らの表情は、どこか楽しそうな雰囲気さえもあった。


「総指揮はガルス様が執ってくださるそうですよ!」

「ガルス様を間近で見られるかもしれないってことですよね……っ! 楽しみです!」


 ガルス……。

 この国の第六王子にして、何かと私にちょっかいをかけてくる面倒な人だ。


 別に私も嫌いではないけど……あまり積極的に関わりたい人ではないということだけは確かだ。

 あれの顔を見られたとしても、何も楽しいことなんてないだろう。


 そんなことよりも、どこかで刀でも振っていたほうがよっぽど楽しいというのに……。

 この依頼で少しだけ心配なことがあるとすれば、ガルスなんだよね。

 また余計なちょっかいをかけられないとも限らない。


 でも、かなりの規模になるし、さすがにそんな暇はないよね?

 私にも、別の目的があるから、できれば面倒事は増えないでほしかった。


 荷物を持ち直しながら、私は歩いていく。

 私の別の目的……それは、ルエコムンドで母さんや姉さんを探すことだ。


 ルエコムンドは母さんの故郷だ。家を追放されてから故郷に戻ったという話は聞いていたので、もしかしたら母さんに会えるかもしれない。


 母さんがいれば、姉さんの居場所だって分かるかも。

 ……もちろん、これらは全部私の私用だ。

 精霊術師としての仕事をきちんとこなして、それでも時間があったら、母さんを探すつもりだ。


 足を止め、顔を上げる。

 そこは、騎士や精霊術師が利用している訓練施設だ。

 入り口には騎士の見張りが立っていて、今はルエコムンド国に関係のある人たちの案内も行っていた。


「ルエコムンド国関係の方は、このまま進んだ先で待機していてください!」

「騎士、精霊術師、宮廷……と列に分かれていますので、それぞれ該当する列に並んでいてください!」


 騎士の広報を頼りに、私も訓練施設の門を過ぎていく。

 他にも私と同じ目的の人たちがいるため、道に迷うということはない。


 角を曲がったところで、一瞬足を止める。

 そこにはたくさんの人がいた。


 多くの精霊術師と騎士、そして宮廷に所属する人間たちが集められると聞いていた。

 だから、ここにいる人たちはみんな該当する人たちなんだと思う。

 ……こんなにたくさんの人たちが、今回の仕事には参加するんだ。


 今までにこなしてきた仕事と比べても、今回は別格だ。

 これだけの人数で対応しなければならないなんて、かなりのものだろう。

 私がきょろきょろと周囲を眺めていると、後ろからとんと肩を叩かれた。


 この感覚は……知っている人のものだ。

 振り返ると、やはり想像した人の顔だった。


「アレア、どうしたの?」


 ポニーテールの髪をした女性が柔らかな笑みを浮かべていた。

 

「ルクスさんを見かけたので声をかけに来たんです」

「そっか。私たちはどこに集まればいいの?」

「宮廷の人たちはこっちです、ついてきてください」


 胸を張った後、アレアは歩き出した。そちらへと向かっていくと、様々な制服に身を包んだ宮廷の人たちを見つけた。

 宮廷の人たちの特権で、それぞれに固有の制服が与えられる。

 一応、宮廷でも基本の制服があるんだけど、だいたいの人は自分の好きな制服を着用している。

 

 それぞれ、番号のついたバッヂをつけているため、誰がどこの所属かはすぐにわかる。

 第三師団からの参加者は私だけみたいだけど、他の師団からは複数人が参加していることもあるようだ。同じ番号の人同士で集まってもいた。

 そんな人たちの視線が、ちらと私の方へと向けられた。


 どこか探るような視線にも感じた。一体どういう意味があるんだろうか?

 私と戦いたい人たちとかだろうか? それならいくらでも相手になる。ていうか、こっちからもお願いしたいくらい。宮廷精霊術師なら、きっとみんなかなりの実力者たちだろうし。


「ルクス、何ぼーっとしているのよ?」


 近くの人がどのように戦うのか考えていると、とんと頭を叩かれた。

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