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第46話


「二人は、微精霊は見える?」

「見えないわよ! アレア、見えるの?」

「わ、私も見えませんよ」


 やっぱりそうなんだ。


「私は微精霊が見えて、話が出来る。この街についたときから微精霊に街の状況について調べてもらっていたから、分かったの」


 それとなく聞いたことは冒険者時代に何度もあったけど、こうして自分のことを伝えるの初めてだった。

 手っ取り早く状況を伝えるのがラクだし、何よりこの二人なら信頼できると思ったしね。

 私の言葉に、二人は目を見開いた。


「そ、そそそうなんですか!?」

「何よそれ! そんなの聞いたことないわよ! 魔人よりもびっくりなんだけど!?」

「……」


 そこまで?

 確かに私もそういった前例がないというのは調べてみて分かったけど。

 しかし、ラツィはすぐに表情を切り替える。


「それで? 状況はどうなってるの!?」

『やばいよ! あっ、一人やられちゃったよ!』

『もう一人も重傷だよ!』

「どちらかがやられて、一人が重傷みたい」

「……なるほどね。相手は魔人……知能はある感じ?」


 ラツィの表情は険しい。アレアも同じように、怯えの混じった顔で覗きこんでくる。


「あるみたい」


 微精霊からそれらについて教えてもらい、二人に伝達していく。

 ティルガは軽々と移動していく。

 風魔法で体を浮かせているため、衝撃は最小限。

 数分とかからず、目的地近くに到着する。


「あ、あんたたち……こいつが……犯人の――」


 こちらに気づいたスティーナがそう呟いたところで、魔人に殴り飛ばされた。


「ちっ、増援かよ」


 魔人は顔を顰め、こちらを睨みつけてきた。

 ……喋った。

 路地裏にいた魔人は言葉を使えるようだ。


 こちらに気づいた魔人が、スティーナとパーニュから視線を離す。

 二人はボロボロの状態ではあったが、魔人の体にもいくつか傷は目立っていた。


 魔人も無傷ではない所を見るに、やっぱり二人も宮廷精霊術師の試験を突破しただけはあるんだと思えた。

 魔人は舌打ち交じりに後退し、視線を外へと向ける。


「今日のところは退散させてもらうぜ、精霊術師様よぉ」


 そういった瞬間、魔人の姿が消えた。

 何かしらの魔法を使ったのだろう。魔物が進化した魔人であれば、高等な魔法が使えてもおかしくはない。


「ちょっと! 待ちなさいよ! どこに逃げたの!?」

「それよりも二人の治療をしないとですよ! 確か、ラツィさんは回復魔法が使えましたよね!?」

「つ、使えるけどぉ……!」


 ――見つけた。

 私は微精霊を通じて魔人の居場所を特定した。魔人は今、家の屋根を足場に逃走中のようだ。

 多少離れていたけど、まだ追いつける距離。

 私は全身に精霊魔法をまとっていく。


「二人とも、スティーナとパーニュのこと、任せてもいい?」

「え? どういうことよ!?」

「魔人の足取りが追えた。すぐに追う」

「ああ、もう! あたしだって行きたいのに……っ! まあ、いいわ! こっちの治療は行っておくから、魔人とっ捕まえてきなさいよ!」

「が、頑張ってください!」


 アレアとラツィにスティーナたちをお願いし、私は跳躍する。

 家の屋根へと着地した私は、月明りの中、遠くへと逃げていく魔人の姿を発見した。


 ……まだ、気づかれていない。

 一気に私は跳躍し、距離をつめる。


 遠くに魔人を発見し、私はそちらへと駆けだした。

 家の屋根を足場に、一気に迫る。


「……ハア!」


 そして、距離を詰め切った私が刀を振りぬいた。そこで、魔人は気づいたようだ。驚いたように目を見開き、その場で身をひねった。

 咄嗟の行動にしては、よくかわしたと思う。けれど、体勢を崩した彼はそのまま地面へと落ちた。

 そちらへと追いかけるが、魔人は顔を顰め、すぐに走り出した。


転送ワープ!」


 と、魔人は何かを手から放つと同時、どこかへと消えた。

 ……ワープ? つまり、移動魔法を使ったんだ。

 移動魔法なんてかなりの高等魔法だ。


 そんなものを使えるなんて。

 ……でもなら、なぜもっと早くに使わなかったのだろうか? 何かしらの制限があるのは明白だ。

 私が周囲を探していると、微精霊から声があがった。


『あっちだよ!』


 微精霊たちが的確に道案内をしてくれる。大地を蹴りつけ、追いかける。


「チッ!」

 

 魔人は苛立ったように声を上げる。

 ……ワープはしない。やはり、何かしらの制限があるので確定だ。


 私が一気に迫り、刀を振りぬく。

 魔人の腕を刀が霞め、まとった風の刃がその体を切り刻む。


「ぐっ!? てめぇ、ざけんじゃねぇぞ!」


 魔人は苛立ったように拳を振りぬいてきた。しかし、私はそれをかわし、その場で回るように足払いを行う。

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