表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/85

第44話


 ラツィも思うところがあったみたいで、申し訳なさそうに頬をかいていた。


「わ、悪かったわね! あたし、そういう優しく声をかけるのとか……苦手なの! ていうか! こんな話するためにここに来たんじゃないのよ! さっさと、あたしたちも巡回にでも行くわよ!」

「ううん。スティーナたちが夜間を担当したいって言った以上、私たちは休んだ方がいい」

「なんでよ!」


 私の言葉に、ラツィが気にくわなさそうに眉間を寄せた。


「みんなで夜回っていたら、昼の担当がいなくなる。昼、夜で担当を分けられるならそれに越したことはない。通常、夜の方が大変だからこうやって分担できたことをむしろ喜ぶべき」


 私がそういうと、ラツィは大きく息を吸ってから、頬を叩いた。


「……うし! そうね! あの子たちを守るためにも、今日はゆっくり休むわよ!」


 ラツィが納得したところで、私たちは孤児院近くの宿へと向かった。

 ラツィが先頭を歩き、宿での手続きを済ませていく。

 といっても、こちらの騎士団が宿の確保等は行ってくれているため、特にこちらから何かするわけではない。

 ラツィが宿の店員と話をしているとき、アレアがこちらに耳打ちしてきた。


「良かったです……ラツィさん、うまく誘導できましたね」

「誘導?」

「はいっ。ラツィさん、よく暴走しちゃいますからね。ナイスですルクスさん」


 苦笑気味にアレアが言ったその背後。ラツィがじーっと目を吊り上げていた。

 私はアレアに見えるよう人差し指を向けると、アレアが首を傾げた。


「なんです? って、わ!? ら、ラツィさん!?」

「アーレーアー? 聞こえているわよ!?」

「わあ!?」


 ラツィはムスーッとした様子で頬を膨らませ、仕返しとばかりにアレアの胸を揉みしだいた。

 顔を真っ赤にさせたアレアが抵抗しようと力を入れ、ラツィを突き飛ばした。ラツィは小柄なこともあり、あっさりと弾かれた。

 

「い、いたた……あ、相変わらず力強いわねあんた……」

「す、すみません……! だ、大丈夫ですか?」

「仕掛けたのはあたしなんだから気にしないの! よし、部屋に行って今日は休むわよ!」


 ラツィが階段をびしっと差し、それから二階へと上がる。


「あたしが201号室、アレアが202号室、それでルクスが203号室ね。はい、鍵! それじゃあ、明日は朝7時に起きて食堂に集合よ!」

「は、はい! 分かりました! あっ、そ、そうだ……は、初任務ですし……み、みんなでその頑張ろうって! やりませんか?」

「はぁ? なによそれ?」

「こ、こうやって手を合わせてですね」


 アレアが片手を前に差し出す。アレアがやりたそうにこちらを見たので、私も手を差し出した。

 じっと私と二人でラツィを見る。


「ラツィ、やらないの?」

「……もう、恥ずかしいわね。まったく」


 しぶしぶといった様子でラツィが手を差し出し、アレアがにこりと微笑む。


「えいえいおー! 頑張りましょう!」


 アレアがみんなの手を掴みあげた。

 私も一緒に声を出すと、ラツィも遅れて小さく声を出した。

 耳まで真っ赤にした彼女は、


「もういいわよね!? それじゃ、お休み!」

「はいっ、おやすみなさい」


 私も二人にぺこりと頭を下げ、部屋へと向かう。


「うん、おやすみ。それじゃあまた明日」


 部屋に入ったところで、私は近くにいた微精霊を確認する。

 微精霊たちはぷかぷかと私の方へとやってきた。餌である魔力を出すと、嬉しそうに私の手のひらに集まってきた。


「みんな、街の状況はどう?」

『みんなに声をかけてきたよ!』

『犯人は人間じゃないよー!』


 当たり前のようにそう言われ、私は思わず近くの微精霊へと目を向ける。

 微精霊たちはすぐに言葉を続ける。


「どういうこと?」

『なんだか嫌な魔力を持ってたよ!』

『魔人だよ! 他の微精霊たちも近づきたくないって!』

『居場所も良く分からないけど、嫌な魔力があちこちにあるんだよ!』

『きっとどこかにいるはずだよ!』


 ……犯人は魔人で確定みたい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ