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第29話


 女性――シルビア様のお腹はぽっこりと大きかった。

 ただ、 顔つきまで同じように太っているわけではない。

 その不自然なお腹のふくらみは恐らく、

 

「赤ちゃんがいるんだよ」


 私がじっとシルビア様のお腹を見ていたからか、シルビア様が微笑みながらそう言ってきた。

 

「し、失礼いたしました」

「いいのよ、気にしていないよ?」


 にこっと笑ったシルビア様はお腹をそっと撫でていた。

 もちろん、国王様との子どもだろう。

 あとは、この子が優秀であればもしかしたら彼女が后となるのかもしれない。


「シルビア様。彼女が新しく第三師団に入りましたルクスと申します。実力は申し分ありませんが、まだまだ宮廷での生活に慣れていませんのでご迷惑をおかけすることもあるかと思われますが、見守っていただけると幸いです」

「いいよそんなこと! もう、ファイランちゃんは相変わらずだね。これからよろしくねルクスちゃん」

「……はい、よろしくおねがいいたします。こっちの子は、私の相棒のティルガです」

「ティルガっていうんだ! 可愛いね! 撫でてもいい!?」

「はい。顎の下を撫でられるのが好きです」

「そうなんだ……っ! よしよーし」


 シルビア様は満面の笑顔とともにティルガの顎下を撫で始める。

 ティルガは「む、むぅ……」と唸りながらも尻尾をぶんぶんと振って嬉しそうだ。

 しばらくしたところで、シルビア様が席を立った。


「それじゃあ、私は少し用事があるからこれで失礼するね? また今度、ゆっくりお話ししましょうね?」

「はい……ありがとうございます」


 私が礼をすると、シルビア様はそれこそ友人と別れるような調子で手を振って去っていく。

 笑顔で歩いていく彼女の隣を侍女がついていった。


「挨拶はこれで終わりよ。シルビア様、どうかしら?」

「とても親しみやすい人」

「そう思ってくれたのなら良かったわ。場合によっては身辺警護を行うこともあるわ。もちろんそれだけではなくて、例えば有事の際に我々第三師団はシルビア様の保護が任されているわ」

「……有事の際?」

「例えば、魔物が王都を襲ってきたときや、クーデターなどによって宮廷や王都が危険にさらされたときね」

「うん……わかった」


 そんな日が来ないことを祈るばかりだ。

 後宮での用事を終えた私たちは、一度宮廷の方へと戻る。

 すれ違うように一人の男性が歩いていく。


 後宮への出入りができる男性ということは……恐らくは王族なんだろう。

 王族の男性はこちらに気付くと、笑みを浮かべた。


「ファイラン。その子はもしかして新入りの子かい?」

「はい、ガルス様。こちらはルクスと言います。ルクス、この方は第六王子のガルス様だ」

「……初めまして、ルクスと申します」

「ああ、初めまして。……なるほど、とても可愛らしい子だ。どうだ? オレの側室にならないかい?」


 ガルス様は整った顔でこちらを覗きこんできた。

 距離近い……。

 ていうか、側室とか興味ない。

 私はただ血沸き肉躍る戦いがしたいだけだ。全力拒否。


「申し訳ありません。私は宮廷精霊術師になったばかりで、今は仕事に励みたいのです」


 私がそういうとガルス様は、きょとんとした後で笑いだした。


「は、ははは……! そうかそうか! いや、真面目な子だな、余計気に入ったよ!」

「……はい?」


 いや、気に入らなくていいんだけど?


「それじゃあ、また後でな」


 ガルス様はすっと手を挙げ、去っていった。

 ファイランも苦笑を浮かべた後、ガルス様へと一礼をして歩き出した。


「ガルス様はああいう人でね。とりあえずからかい半分で誘うのよ」

「そうなんだ」

「それと、嘘を見抜く魔法も得意でね……よく尋問とか拷問をするのよ。ベールド様とガルス様は尋問、拷問大好き王子なの」

「……いやな王子たち」

「まあまあ、そう言わないで。宮廷の女性たちには、二人に虐められたい! っていうほど人気なんだから」


 ……この宮廷は変態揃いなの?

 ファイランは苦笑しながら続ける。


「たぶん、さっきもルクスが本気で嫌がっているのに気づいたから笑っていたんだと思うわ。本気で拒絶されたことなんてないだろうしね」

「……な、なるほど。なら、もうちょっと興味でも持った方が良かった?」

「そこまで見透かされてしまうと思うわよ? まあ、良かったじゃない。王族の方たちに気に入られて悪いことはないわよ?」


 でも面倒なことに巻き込まれるかもしれないし……。

 はぁ、とため息をつきながら、私はさっきちょっと考えていたことをファイランに質問する。


「后候補の方たちは各師団で護衛しているという話だったけど……それじゃあ、国王様の護衛はどうなっているの?」

「常に、総師団長がお守りしているわ。ゼロのバッジを付けた方ね」

「総師団長……?」

「ええ。宮廷精霊術師、そして精霊術師たちのトップに君臨する方ね。入団式の時にも挨拶をしていたでしょう?」


 やっぱりあの人が一番偉いんだ。



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