第23話
次の番号札の女性が呼ばれる。
だが、1番の人同様、戦う前から萎縮していた。
私は自分の番号札を確認する。
7番だ。……とりあえず、早く私の番が来ないかな?
そんなことを考えながら、もう一人の仮面をつけた男性の方を見る。
そちらも似たような様子だった。
現役の宮廷精霊術師に手も足も出ていない人がほとんどだ。
あっちの人も強そうだ。
ファイランとだけじゃなくて、あの人とも戦ってみたい。
むずむずと感情が興奮が沸きあがる。
今ここで乱闘騒ぎでも起こしたら二人と戦えるのだろうか?
精霊術師ならば男女の違いは関係ない。
筋肉や体格の差など、精霊魔法によっていくらでも強化できるからだ。
どちらが有利かに関しては、確か研究がされたことがあったけど……どっちも別にさして違いはない。
細身の女性の方が当たる範囲が狭いから有利だとか。
やはり身長がある男性のほうがリーチ的に有利だとか。
結局結論は出なかった気がする。ただ、一つだけ違いがあるとすれば、精霊術師は女性の方が多い。
精霊が女好き……というのは冗談として、女性の魔力の方が精霊たちに好まれるというのはあるらしい。
そのため、この試験会場も、男性3女性7くらいの比率である。
そのため、試験自体は男性の方が早く終わる。
男性側の試験が終わったら、あちらの男性がこちらの対応もするのだろうか?
そんなことを考えていると、
「次! 番号7番! 前に出てこい!」
声が聞こえ、私は自分の番号札を確認する。
うん、私だよね。
慌てて前に出ると、他の精霊術師たちが呟くように言った。
「……ねぇ、あの子ってたしか15歳の子よね?」
「……どうせ無理だわ。これまでの誰も手も足も出なかったのよ?」
「ねっ。ていうか、こんな試験理不尽すぎない?」
「去年は違う試験だったらしいわよ? まったく、ついてないわよね……」
私は彼女らの言葉を無視するように、ファイランの前に立つ。
ファイランは仮面をつけていたけど、笑っているように見えた。
あの仮面は本来の視界よりも狭いはずだ。
できれば取って戦ってほしいんだけど、そういうわけにもいかないんだろう。
「どこからでもかかってきなさい。それが戦いの開始だわ」
これまで同じように、試験開始は受験者に委ねられるようだ。
ファイランは私と向かい合うと殺気をぶつけてきた。
本気だ。肌がぴりぴりと焼き付く感覚は、外野としてみていたときよりもさらに鋭さを増している。
この感覚が……心地いい! いつまでも浴びていたいほどの緊張感。
これほどの戦いは久しぶり。
私も同じように殺気を放つと、ファイランが目元を緩めたのが分かった。
向こうもやる気満々。私だって負けるつもりはない。
ファイランには一切の隙が見当たらない。
これまでの受験者たちには、わざとらしい隙を見せていたのに。
私は小さく息を吐いてから、微精霊たちに声をかける。
「私が突っ込むのに合わせて魔法お願い」
『まっかせてー!』
『どんな魔法がいい?』
「それじゃあみんなの気まぐれフルコースで」
『りょーかーい!』
あっけらかんとした返事がきたところで、私は大地を蹴りつけた。
その瞬間私の体に風の力がまとわれる。そして、ファイランへと突っ込んだ。
その瞬間、周囲が息を飲んだのが分かったが……私は戦いに集中させてもらう。
私の一閃は、ファイランの剣に防がれる。
「早いわね……っ!」
「今のが受けられるとは思わなかった」
「舐めないでちょうだい!」
ファイランが剣を弾くように振り上げる。
私はすかさず微精霊に視線を送り、魔法を放ってもらう。
風、水、火、土。四属性の魔法がファイランの四方から迫るが、ファイランはその場で回転する。
剣に風をまとわせ、その周囲を薙ぎ払ったのだ。すべての魔法を一度ではじいた彼女に、私自身の魔法を放つ。
準備していたのは風魔法。ティルガとの契約によって使用可能になった風の刃は、まっすぐにファイランへと向かう。
ファイランはそれを剣で受け止めたが、精霊魔法で受けられなかったことでわずかに体勢を崩した。
そこに私が突っ込む。身体強化を乗せた一撃を放つが、ファイランも正面から受け止めた。
……身体強化で肉体を強化している。
押し切ろうとしたが、ファイランの方が力は……上かもしれない。
剣を弾き上げるように刀を振りぬき、二撃目の剣に当てる。
攻撃をそらしながら一度距離を取ると、ファイランはこちらへと駆け出す。
同時だった。ファイランの口元が動いたのは、
「風の微精霊たちよ……」
何かの精霊魔法が来るのが分かる。
「微精霊たち、土の壁をお願い。いつものカウンターもセットで」
『りょーかい!』
『僕たちの力見せちゃうよ!』
元気の良い二匹の微精霊たちが声を上げる。
すぐにファイランが剣を振りぬいてきて、風の刃が放たれた。
それに合わせるように、私の眼前に土の壁が出現する。
微精霊たちに用意してもらった魔法だ。土の壁が、風の刃を完全に防いだ。
この魔法はまだ終わりじゃない。攻撃を防ぎ切った土の壁は、ぐにょんと歪んだ。
そして、土の弾丸を放ち、ファイランへと向かっていく。
「面白い魔法ね!」
ファイランはそれを剣で捌きながら距離を詰めてくる。さすがに風の微精霊の力を借りているだけあり、速い。
私もまた、微精霊たちに声をかけ、風の力を纏う。
ファイランの剣に私も刀を振りぬいていく。
彼女の剣術は華麗だった。
それを破るために刀を振りぬいていくが、受け切られる。
ファイランが両手の剣を振りぬいてきて、私は攻撃をかわし回るように後方へと跳ぶ。
どこからどう崩す? 魔法をもっとたくさん放って、そこから追いこんでいこうか?
楽しい。ただ楽しかった。この時間が永遠に続いてくれればと思えるほどに、この戦いは楽しい。
私が追撃を仕掛けようとしたところで、ファイランが剣を手放した。
そしてこちらに手のひらを向けてくる。
「試験はここまでにしましょう。これ以上は、どちらかが怪我をしてしまうわ」
「……それは、確かに」
ファイランの仮面から見える目が笑っているように見えた。
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