第19話 次女レイン視点
私の名前はレイン。リースト家の次女として生まれた。
そんな私には、腹違いの姉がいた。
名前はヨルバだ。精霊術師の才能にあふれ、長女という立場で何かと自慢してきた。
おまけに、第二王子様と同年代だったこともあり、なんだか関係があったらしい。
それを自慢ばっかりしてきてあんまり好きではなかった。
とはいえ、最近そんな姉は……何でも精霊魔法が使えなくなった!
私は表向きヨルバのことを嘆きながらも、内心では馬鹿にしていた。ざまぁみろ、ということだった。
姉ばかり注目されていたが、これからは私の時代だ。
なんていったって、私には才能があった。将来は宮廷精霊術師になれるとも思っている。そして、宮廷で仕事をしている貴族……もっと言えば王族の人と関係を持ち後宮入りだって――。
この家での立ち位置を確実なものにするため、今日も私は精霊魔法の練習を行う。
私は、どうにも精霊魔法の才能はなかった。
というのも、私の父ゴーシュは精霊魔法の才能がなかったので恐らくその血を継いでしまっていたのだろう。
けれど、私も父もほとんど同じ時期に精霊術師の才能が覚醒した。
今ではヨルバに並ぶほどの天才精霊術師と呼ばれている。
……並ぶ? ううん、私の方がもっと才能はある。
私は精霊術師学園に向かうため、部屋を出たところでゆらゆらとまるで幽鬼のような足取りで歩いてくるヨルバの姿を見つけた。
精霊魔法が使えなくなってからのヨルバは一気に老け込んだ。
昨日も情けなく一日泣いていたのだろう。目の下はクマだけではなく赤く腫れあがっている。
いい様ね。
「おはようございます、姉さん」
その姿を見てついつい笑みをこぼしてしまいそうになるが、それを押さえつける。
ヨルバはこちらに気づいたが、ぼーっとしたやる気のない目をしていた。
「なんで……あんたが……! あんたは精霊魔法が使えたままなのよ!!」
八つ当たりだ。
元々才能がなかっただけでは?
後天的に精霊魔法が使えなくなるというのは聞いたことがほとんどないが、ないことはないらしい。
たまたま姉はそういう体質だったんだろう。
ある意味才能だ。誇ればいいんじゃないだろうか?
胸倉をつかみ叫んできた姉の手首を握り返す。
そして私はにこっと微笑んでやる。
「姉さんもそろそろ学園に来てはいかがですか? 第二王子様もきっと寂しがっていますよ」
そういうと、ヨルバが拳を振り上げてきたけど、私は短く口を動かした。
風の微精霊の力を借り、風の精霊魔法をヨルバへと放った。
彼女の体が大人に突き飛ばされたように私から離れた。
「申し訳ありません。身の危険を感じましたので、精霊魔法を使わせてもらいました」
私は自分の精霊魔法を自慢するように見せつけ、悔しげに拳を固めたヨルバに背中を向けた。
……ああ、気持ちいい!
ルクスとかいう双子のゴミが消えてから、本当に世界がうまく回り出している!
姉と別れたあと、私はいつものように学園へと向かう。
今日は精霊術師の訓練として、課外活動となっている。
内容は魔物狩りだ。
王都から少し離れた場所にある森へとついた私は、それから同行していた騎士とともに訓練を開始する。
この森にいる魔物はウルフとゴブリンといった弱い魔物たちばかりだ。
この魔物たちは精霊魔法を使える私にとって、雑魚そのものだ。
私はちらとクラスの面々を見る。
魔物狩りによる訓練では安全面に十分な配慮がなされている。
グループごとに分かれ、そこに騎士、あるいは精霊術師の護衛がつくといった感じだ。
私のグループにも騎士がついているのだ。
狩りは順調に進んでいく。
しかし、私はもっと圧倒的な成績を残したい。
精霊術師の腕を示すために、もっと魔物をたくさん倒して魔石を集めたい。
それには、このままグループの者たちとともに活動していては駄目だ。
私が個人で動けば、きっとそれも可能なはず。
「すみません、少し疲れてしまったので休んでいます」
「そうですか。分かりました。それでは、ここで休んでいてください」
護衛についていた騎士からそう言われ、私はこくりと素直に頷いた。
騎士が指定した場所は森の中央だ。
ここには、他にも騎士がいて、休憩場所として利用されている。
だから、安心安全の場所だ。
騎士がちらちらと私の方を見ているが、この休憩場所にいるのは私だけではない。
騎士の注意がなくなったところで抜け出すのは、造作もない。
皆も特に怪しむということはなく、私はしめしめとその場を後にする。
一人になった私の目的は簡単だ。
一人で大量の魔物を狩り、それを先生に見せる!
私への注目度が一気に上がるだろう。
そのまま、国の偉い人たちにも注目されて……ふふ、そこから私のバラ色の人生が始まるんだ!
その輝かしい未来を得るためには、まずは魔物を討伐する必要がある。
一人森の中を移動していくと、ウルフを発見した。
「さて、さっさと仕留めてやりましょうか」
私はいつものように魔力を込める。
そのウルフは反応が良かったようですぐにこちらへと気づいた。
向かってくる。
は、速い。
護衛がない状況で魔物と対面したのは初めてだ。
手足の先がじわりと湿るような緊張感。
少し焦りはあったけど、精霊魔法を放てば余裕で仕留められる。
私はすぐに片手を魔物へと向ける。
「火の微精霊たちよ。わが魔力を糧に、火の魔法を授けたまえ!」
そう言って魔力を差し出すと、すっと体から魔力が抜ける。そして、私は精霊魔法を放とうとした。
「ファイアボール!」
そういった瞬間、指先程度の小さな火の弾が放たれた。
それはまっすぐにウルフへと向かい、ちょんとぶつかって消えた。
「え!?」
な、なんで!? いつもは人間の頭くらいの魔法が出るのに!
そんな一撃でウルフが止まることはない。ますます怒らせてしまったようで、加速する。
ウルフが私の左腕に噛みついてきた。
牙が腕に食い込み、血がだらだらと落ちてくる。
ウルフを引きはがそうと力を入れると、より牙は食い込んでくる。
「い、イヤァァ! 痛い! いだぁぁぁ!」
もはや言葉にならない悲鳴が上がる。
引きはがすために腕を動かそうとしたけど、感覚がない。
まるで体内が直接火であぶられているような痛みと熱が左腕を襲う。ウルフが口を開くと、私は反動で倒れてしまう。
「ガアア!」
ウルフが私の体に馬乗りになり、頬に唾液が落ちる。
臭く、熱を持った息が私の顔を撫でる。死が目の前へと迫り、私の体はがたがたと震える。
「だ、だれか……」
満足に助けを呼ぶこともできない。次の瞬間だった。ウルフが顔へと噛みついてきた。
それを最後に、私は意識を手放した。
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