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recollection  作者: 朝霧雪華
第 9 話 Bindweed
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第 9 話 Bindweed (1)

 【ご注意】


作品の構成の都合上、一部の人にとってはトラウマを思い出させる事になるような描写があるかもしれません。

また、全てフィクションであり、登場人物、時代背景、起きた事件など全て実在するものではありません。


1話辺りの文書量が多い話につきましては分割して投稿していきます。

次話の投稿につきましては筆者のTwitter ( @SekkaAsagiri ) または、下部コメント欄でご案内します。

(案内忘れも発生するかもしれませんが、お許しください。)

第 9 話 Bindweed


 私はこのままやっていけるのだろうか―――。

少しずつ前へ前へと歩んでいるつもりではいるのだけれど、所詮、私なんて末端中の末端でしかない。

この世界には自称で何の成果がなくても大物ぶる者達も多い。井の中の蛙大海を知らず。本当に大物と言われる人達を知っていれば、自称でそんな事なんて恥ずかしくて名乗れないのに。

そんな自称大物を名乗る人達から好き勝手言われるのにも疲れ果ててきた。

何時でも辞められる。何時辞めても構わない。全てを投げ出し、全てを捨てて楽になってもいいのではないか?

そう思う日々だ。


◇◆◇◆◇◆◇◆


 私は取材を兼ねてある場所へとやってきていた。

書けるなら何時か書きたいと思っていた切ない恋物語の世界を作り上げる為に、綺麗な場所を見て歩き続けている。

先々月は大都市から程近いある温泉地にある湖、先月はかなり離れた場所ではあるが、何度かアニメや漫画の舞台になったある湖、今回は、世界遺産がある場所に近いこの国立公園内にある湖だ。

3ヶ所とも有名な観光地だけあって旅行で訪れている人達が多い。参考資料として残すためにスマホで写真を撮るなどしているのだが、観光客が写らないように苦慮しているのもあって少しばかり気疲れ気味になっていた。

そこに、運動不足なのも相まってか疲れが出始めている。まあ、言い訳がましい事を言ってしまえば、朝イチで来て殆ど休みなく歩き続けているのもある原因なのかも知れないが。

何処か休める場所はないかな?と思った私は、ふと、先ほど乗った遊覧船から見えたお洒落なカフェを思い出した。

確か、あのカフェは遊覧船乗り場から程近い場所にあったハズ。今私が居る場所からはそう離れてはいない。遊覧船に乗った後に向かった一般車両は入れない浜辺の辺りからでは遠すぎて諦めるしかないが、ここからなら徒歩5分もせずに行けるだろう。

湖畔沿いの道を決して軽快とは言えない足取りでカフェに向かって一歩ずつ近づいていく。

カランコロ~ン♪

「いらっしゃいませ。」

何とか辿り着いく事の出来た私は、カウンタの中にいた男性に声をかけれらた。多分、この店のオーナーかマスターなのだろう。

その隣には外国籍と思われる白銀色の長い髪をした女性が、なにか作業をしながら、男性へと寄り添っている。

店内を見渡すと、午後3時に近い時間もあってか、空いている席はなかなか見つからない。ふと窓際の方へと眼を向けると、奥の窓際のテーブル席が空いているのが目に入ってきた。

少し、人とは関わりたくない気持ちもあった私は迷わずその席へと向かった。

 席について、それほど経たないぐらいにカウンタの中にいた女性が私の元へとお冷を持ってきてくれた。

「ご注文がお決まりになりましたら、お呼びくださいね。」

そう言えば、ここはカフェだ。席に着いたのはいいものの、何を頼むかすら考えていなかった。普段なら、先回りしてメニューなどがあれば目を通して頼むようにしているのだけれど、今日ばかりはそんな余裕がなかった。正直言えば、何処か疲れ切っているのかも知れない。

テーブルの上に置かれたメニューを一通り見て、知っているモノを頼むようにした。何時ものテンションなら見た事ないモノ、聞いた事ないモノ、食べた事のないモノ、飲んだ事のないモノを最優先に選ぶ私が安牌しか選べない。

正直、情けないなーと思うのだけれど、それほど精神的に参っているという事なのだろう。

私は先ほどの女性を呼び、セイロンティーを注文をすると女性は注文内容を確認し、そのままカウンタの中へと戻って行った。

注文したお茶が届くまで、何をしよう・・・あまり何も考えたくはないのだけれど。そんな気持ちのまま、窓の外を眺めている。

窓の外には、太陽の光を反射させ眩い輝きをみせる湖が広がり、その光景はとても儚くも美しい。あの湖の中に飛び込んだら私のモヤモヤは消え失せてくれるのではないかと思うほど。

そんな思いに駆られながら、外を眺めているとカウンタの方からとてもいい香りが漂ってくる。

その香りに包まれていた私は何時の間にか、自らの思考の奥底へと誘われていた―――。


◇◆◇◆◇◆◇◆


 この世界には二つの人種がいる。男と女。ただ、その二つだけかと言うと今の世の中は変わりつつあって、第三の選択肢も生まれてきている。決して二つと決められるような時代ではない。そして、この世界には色々な人達がいる。国籍が違う人達、血液型が違う人達、年齢が違う人達と、千差万別だ。

そんな時代に、そんな世界に生きているハズなのに私はある事で悩まされていた。

「お前の描く世界は、劣化コピーだ!」

「お前の書く話は、誰々のコピーだ!」

「お前の言葉は、説得力がない!」

「お前はこの世界に存在しちゃいけないんだ!」

何故、私はここまで言われなければならないのだろう。私は自分のペースで、自分のやり方で、自分なりに描きたい世界を描き、書きたい世界を書いているだけなのに。

そのような言葉を私に投げかける人達は、自分自身がそれだけの事をしてきたのだろうか、言えるだけの存在なのだろうか、それとも、言われるような私が悪いのだろうか、私が存在する事が間違いなのだろうか、答えは分からない。

ただただ、私が言える事は、私もそう言う人達も、所詮は井の中の蛙に過ぎない。

本当に有名な人や著名な人は腰が低いが多いという話を聞いた事があるだけに、苦労して実績を作り上げてきた人ならこんな高飛車な物言いはしないと思う。

注意する必要があるなら、上から目線ではなく、対等な目線でアドバイス的に何処が悪いのかを指摘をしてくれるのではないだろうか。

職人気質でキツくしか言えない人でも、怒る時は何故怒っているのかわかるように言葉以外の方法で教えてくれる人が多い。それは、愛情があるから出来る事、失敗したら大変な事になるからと、気付かせる為にどうしてもキツい言い方になってしまうだけだから。

何時の頃からそうなったのはかはわからないけれど、今ではそのような職人気質な物言いはよく思われていない。

理由は分からないけれど、一部の高飛車な人達と同じように受け取る人達が増えたからなのかもしれない。本質を知れば、あまりにも違うモノなのに、表面しかみない、全体を見ずに端的に一部分の怒られたという部分だけしか見ない人が多くなったからなのだろうか。

私は、子供の頃から感性が強かったのもあってか、色々な事に興味を持っては触れる機会を与えられてきたと思う。

大人になるまではそんな気にした事はなかったのだけれど、幼い頃から、劇場には映画を見によく連れて行ってもらっていたし、演劇も何度も見させてもらったりしてきた。それ以外にも親が秘境の山の中で育ったのもあって、お盆や正月に親の実家に帰るとなると、都会の喧騒を離れ、1週間程度、従姉妹達と山の中で生活をするような経験を繰り返してきた。

普通の人には経験できないような事・・・例えば、野山を駆け回り、時には親や従姉妹達と川で泳いだり、川で魚を捕まえて炭火焼きにして食べたり、夜にはBBQをしながら盛大に花火をするなど、都会暮らしでは経験できない生活をしてきた。

そういえば、こういう経験をしているのを、小学校のクラスメイトにバレて何度もいじめられた。理由は、今覚えば、単純な事なんだと思う。ただ単に、羨ましいからって事だったのかも知れない。

いじめていた人達はそういう経験をしたくても出来ないから、その腹いせにいじめるって事で晴らしていたのかも知れない。

ただ、あの頃はそれが嫌で、何度も親の実家には行きたくないと駄々をこねた事もあって、実家で待っているお婆ちゃんを悲しませた。

お婆ちゃんが亡くなった後、あの頃それで悲しませた事を何度も悔いたっけ。ごめんね、お婆ちゃんって、火葬場の隅で一人誰にも見つからないように泣いていた事をふと思い出した。

もう、今となっては謝る事は出来ないのだけれど・・・。

お読みいただきありがとうございます。

続きの「第 9 話 Bindweed (2)」は2020/08/25 00:00頃公開します。

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