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recollection  作者: 朝霧雪華
第 7 話 Spring starflower
37/62

第 7 話 Spring starflower (1)

 【ご注意】


作品の構成の都合上、一部の人にとってはトラウマを思い出させる事になるような描写があるかもしれません。

また、全てフィクションであり、登場人物、時代背景、起きた事件など全て実在するものではありません。


1話辺りの文書量が多い話につきましては分割して投稿していきます。

次話の投稿につきましては筆者のTwitter ( @SekkaAsagiri ) または、下部コメント欄でご案内します。

(案内忘れも発生するかもしれませんが、お許しください。)

第 7 話 Spring starflower (悲しい別れ)



 この幸せは私が見ている夢なのかもしれない。夢ならば何時か醒めてしまう。

そうなった時に私は私で居られるのだろうか―――。夢なら醒めないで―――そう願っても終焉の時は訪れる。きっとそれは私が望まない形かも知れない。


◇◆◇◆◇◆◇◆


 私と彼の出会いは不思議なモノだった。何時も何気なく見ているSNSで変わった事をしている人がいるなーって感じで私からフォローして、フォロー返しをしてもらった事が始まりだった気がする。

彼の投稿にコメントをつけたり、その返事を貰ったりとよくある感じでコミュニケーションをとっていたのだけれど、その関係が変わったのは、仲良しフォロワーさん達で会おうって話になって、それで実際にあってからだと思う。

最初会った時は、イメージとは違うかなーと思っていたのだけど、話しているうちにやっぱり彼は彼なんだと思うようになって、何時の間にか惹かれるようになっていた。当時の私は、自らがそんな気持ちを持つなんて思ってもいなくて、その感情に気がついた時には思わずどうしたらいいのか分からなくなっていた。

私にとって、その気持ちは初めてのものだった。そして、気がつくと私にとって彼の存在がどんどんと大きくなっていて、何時も彼の事を考える様な日々になっていた。そんな想いが募りに募ったある日、彼へと思いを伝えた。最初のうちは、私と彼との年齢差の事もあって、冗談だと思われていた。8歳差とはいっても、私は高校を卒業して短大に入ったばかりの18歳。彼は26歳になったばかりの社会人。

彼からしたら私はまだ子供同然なのだろう。だけど、私がどれだけ本気なのかを自分の言葉で精一杯伝えたのが功を奏したのか、理解してもらえて、それから彼氏彼女の関係になった。

気持ちが伝わってそのような関係になれてとても嬉しかった事を今でも覚えている。あの日は、家に帰ってから嬉しくて一人で泣いていたぐらいだったから。


 そんな関係になってから半年過ぎたある週末。

私と彼は住んでいる場所がとても遠く離れていて、なかなか会う事が出来ない。会いに来るとしたら新幹線や高速バスを乗り継いで来ないとならないほどだけに、学生の私には会いに来るのは覚悟がいるのだけど、彼は、そこそこいい給与を貰っているようで、私が会いたいというと週末の度に会いに来てくれていた。

そこまでしてくれる事が本当に嬉しくて、この日は、私から彼の元に会いに来ていた。

本当なら彼の予定を考えれば、我慢すべきなのかもしれないけれど、私がそれに耐えられそうもなかったのが大きい。

仕事帰りに会社の人の送別会があった彼は、1次会のみ参加して、駅で待つ私の元へと駆けつけてくれた。

「遅いー!そして、お酒臭いよ?!」

「ごめんごめん、もう少し早く終わると思っていたんだけど、延びちゃってね。」

「もう、来てくれたからいいけど。遅れるなら一言連絡欲しかったなー。」

少しワガママかも知れないけれど、これぐらいの事は何時も許してもらっているだけについついやってしまう。仕事の付き合いが大切なのは分かっているのだけど、少しだけ寂しく感じていたのもあって甘えたくなって、ついだ。

「メール入れようかと思ったんだけど、なかなかそんなタイミングがなくてね。そうだ、泊る所はどうするんだい?」

「そんな理由だったの?酷いー。あ、家に泊めてくれるなら許すからね。」

「泊るとこ探せって言っても酷だものな。こっちこそごめん。それじゃ行こうか。」

「うん」

彼の左腕に絡みつき、そのまま彼の家へと向かう。私と付き合う前までは実家で家族と暮らしていたようだけど、仕事が忙しくなったのもあり、何時の間にか駅から近い場所に家を借りて一人暮らしを始めたようで、こっちに来た時は彼の家に泊る事が多い。

駅から彼の住むマンションまでは徒歩で10分程度。ちょうど街の中心部に新しくできた高層マンションの一室が彼の家だ。

ここは首都圏に近いとはいえ地方都市だけあって、夜ともなると人通りは疎ら。すれ違う人も少なく、二人だけの世界に浸れる。

ちょうどこの夜は夜風も気持ちよくて、彼に甘えたい気持ちが何時もより強くなっていたのかも知れない。本当なら、この日は、彼に言わないといけない事があったハズなのに、それすら忘れるぐらいに。

二人で街を歩き続け、彼の家に着いた私は、何時ものように荷物を置くと、彼の着替えの手伝いをはじめた。私がちょっとした新婚気分を楽しみたいというのもあって、ここに来るとしてしまう事だった。

着替えを終えた彼は、疲れた表情でソファーに座ると、私に明日の事について聞いてきた。

「そういえば、こっちに来るのはひさしぶりだっけ。土日は休みだから、歩美が行きたい所に連れて行こうと思うんだけど。何処がいい?」

「そうだねー。ひさしぶりに、二人で初めていったあそこがいいなー。」

「そっか。それなら、ちょっと早目に起きて行こうか。」

「うん。楽しみ♪」

この日は、そのまま何時もと同じように二人だけの世界の一夜を過ごした。彼がお酒に強かったのもあって、歩いて帰ってくるうちにある程度酔いが醒めていてくれたのも大きいかったのだけど。


 翌朝、同じベットで寝ていた私は、彼がまだ起きていないのを確認して、起こさないようにベットを抜け出し二人分の朝食の準備を済ませ、彼を起こしに一度ベットの所まで戻る。

「朝だよ。起きて。」

ゆっくりと体を揺らし続けるとやっと気がついたようだ。何時もの事だけど、何気なく起こす

「おはよう。」

「朝食は出来ているからね。それと今日は例の場所行くんでしょ?早く行きたいなー。」

「あはは。朝から元気だね。それじゃさっさと朝食を済ませて出発するか。」

「うん、そうしよう!楽しみー!」

何故、私がこんなに急いだのかは今となっては分からない。ただ、何処か今のままじゃいけないという焦りが大きくなっていくのを忘れたかったからかもしれない。

朝食を済ませ、出発の準備を済ませ、家を出る。私はてっきり彼の運転する車で行くものだと思っていたのだが、この日は違うようで思わず聞いてしまった。

「あれ?車で行かないの??」

「あー、たまには電車で行って、駅からはフリーパス使って回るのもいいかなーって思ってね。それに・・・」

「うん?それにって?」

「ま、行ってからのお楽しみだよ。」

ただ、そこ言葉を私は素直には受け取れずにいた。私の為に色々としてくれる彼はとても頼りがいがあるし、大切にしたいとは思っているのだけれど、そんな彼だからこそ、今のままでは私は彼を傷つける事になる。そんな気持ちが頭の中をずっと駆け巡っていた。心の中では、そんな思いとずっと格闘し続けている。


 家を出た私と彼は、そのまま駅まで歩いて行き、そこから電車に乗り、目的地の駅まで行くと窓口でバスのフリーパスを購入し、世界遺産に登録されているある湖へと向かった。

ちょうど時期的には夏の観光シーズンと言うのもあって、道は混んでいて、なかなかバスは前へと進まない。どうしてもこの辺りは車で来る人が多いから仕方ないのだけれど、昨日から私が早く行きたいと騒いでしまったのもあってか、彼は気不味そうにしている。

そんな風に彼を思わせてしまっているのは、家を出てから無言な事が多くなっているのも原因かも知れない。そうなってしまっているのは言うまでもなく、私の中での葛藤が原因なだけなのだけど、その事実は言えないでいた。

そんな状況を変えようと思ったのか、彼が私に話しかけてきた。

「大丈夫かい?なんか、体調悪そうにも見えるのだけど。」

「うん・・・大丈夫・・・。」

「なんか、大丈夫そうには見えないよ。湖についたら何処かで休憩しようか?」

正直な気持ちを言えば、大丈夫だから心配しないでと言いたかったのだけれど、心配性の彼にそれを言ったら逆効果になるかもと思い、素直にうなずくしか出来ないでいた。

そうこうしているうちにバスは湖の畔の所まで何時の間に到着し、バスを降りた私達は湖畔沿いをゆっくりと歩きながら休めそうな場所を探していると、以前に来た時にはなかったカフェが何時の間にか出来ていて、そこに入る事になった―――。


お読みいただきありがとうございます。

続きの「第 7 話 Spring starflower (2)」は2020/07/17 20:00頃公開します。

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