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recollection  作者: 朝霧雪華
第 6 話 Lycoris
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第 6 話 Lycoris (3)

◇◆◇◆◇◆◇◆


 私は気がつくと暗く狭い部屋の中にいた。

あまりの暗さに灯りを求めて動こうとしても手足が動かない。

両手は縛られ、足には足枷がつけられている。

『助けて・・・』と声を出そうとしても、声が出ない。口には何かを詰め込まれているようだ。

何故、私がこうなったのかはわからない。オーディションと言われて事務所に行っただけなのに。

何がどうしてこうなったのか理解できずに私は混乱の渦の中にいた。

身動きも取れず、声も出せず、ただひたすらこうなってしまった事に対して自分自身を攻め立てていると、部屋の外から何やら声が聞こえてきた。

「上物が手に入りましたね。」

「ああ、これで客達も満足するだろ。」

「一部のセンセや常客達が五月蠅いですからね。」

「あの連中もよく見つけてきたもんだ。これでこっちも首が繋がるってもんだよ。」

「で、どうするんです?客に出す前に味見するんですか?」

「そうだな―――」

これ以上は覚えていない。その後に起きた事が衝撃的過ぎて思い出したくもない。

そんな話をしていた男達に部屋から連れ出された私は、服を剥ぎ取られ、身動きをとれなくされた後、力づく全てを奪われた。

初めてを奪われた時の痛みは耐え難いもので、今でも思い出すと身震いが止まらない。

顔を叩かれ、髪を掴まれ、逃げようとする私を力づくで抑え込んで、私が「痛い」と泣け叫んでも聞き入れてもらえずに―――。

行為を終えた男達は満足した顔をし、両手の拘束はされなかったけれど、首輪と足枷をつけ、私また暗い部屋に連れ戻した。

それから、何度も客と言われる男達をあてがわれて行為をさせられた。

最初のうちは抵抗をしていたのだけれど、抵抗すればするほど、顔を叩かれ、殴られ、時にはお腹を蹴られたりした挙句に行為をさせられ続けた。何時しか私は抵抗する気力すら失っていっていた。


もうここにどれぐらいいるのかわからない。

暗く狭く、足を動かす度にジャラジャラという金属音が聞こえるだけの部屋。部屋の外から物音が聞こえる時もあるけれど、それは私にとっては苦痛の始まりの合図。

時には同じぐらいの年齢の子と思える子の悲鳴や嗚咽が聞こえてくる事もあった。

私とは別の部屋に同じく監禁されて同じような事をさせられているのかもしれない。そう思うと余計に辛くなる。悲鳴や嗚咽を聞く度に、男達や客と呼ばれる人達にされた行為がよぎって震えがとまらなくなる。

食事もたまにしか出ず、菓子パンやジュースを少し与えてもらえるだけ。そんな毎日。


そんなある日、男達が大きなスーツケースをもって私のところへやってきた。

「よかったな。お前のご主人様が決まったぞ」

力なくうなだれたままの私の両手を拘束し、首輪と足枷につながったチェーンと外すと、体育座りの格好をさせ、スーツケースに入れられた。

抵抗する気力も尽きていた私はされるがままになっていた。このまま何処かに連れていかれるのだろうとは思ったけれど、あの客と言われる人達の相手をしないで済むのかもしれないと思うと緊張の糸が切れたかのように眠りについてしまっていた。


私が寝ている間に何処かに運ばれたようで、目が覚めると暗い部屋ではなく、狭いけれど、そこそこの灯りがある部屋のような所の中だった。

外からは車の走行音らしい音が聞こえるけれど、窓がないから確認はできない。ただ、灯りがあるだけでも安心できた。今までが今までだったから。


そのうち車の走行音がしなくなった。何処かに着いたか止まったのだと思う。

音がしなくなって暫くすると、部屋の中に一人の男が入ってきた。

「ぐふふふ。やっと美希ちゃんを手に入れる事が出来た。」

脂ぎっていてニヤニヤと笑みを浮かべた男が私に近づいてくる。

私には絶望しかなかった。本当に売られたのだと理解したからだ。

これからされる事はあの暗い部屋に閉じ込められていた時よりも恐ろしい事になるかも知れない―――そんな予感がよぎると震えが止まらなかった。

そして、その予感が現実となった時には、私は完全に壊れ始めていた。この男にとってのただの性処理用の人形と化して行くのを感じながら。


叩かれたり殴られたりするだけならまだ良かった。時には首を絞められたまま行為をされたり、異物を挿入されたまま行為をさせられたり、何度か死ぬかと思うような事をさせられたまま行為をさせられたりもした。

抵抗する気力もなくなっていた私との行為を男は最初のうちは楽しんでいたようだけれど、抵抗しない私に対して飽きてきたのか、ますますその行為は激しいものとなっていた。

それでも私は抵抗することが出来なかった。それぐらい壊れていたから。


この男に買われてから何日か過ぎたある日、私以外の子が連れ込まれてきたようだった。

何時ものように車の走行音がし続け、何処かの場所につくと音がしなくなり、男が入ってくる。

ただ、その日は違かった。男は私の居る部屋には来たけれど、私を拘束するのに使っていた首輪につながっていたロープと足枷につながっていた鎖をとると部屋を出て行った。

男にとって抵抗を示さない私は逃げる事がないと判断したのだろう。

部屋の外からは、連れ込まれたと思われる女の子の泣き叫ぶ声や嗚咽などが聞こえてきている。

その声が聞こえなくなったら、私を拘束するモノがない今なら逃げられるかもしれない。そう思った私は、しばし息をひそめてチャンスを伺う。

暫くすると部屋の外からは何も聞こえてこなくなった。

何時もは外から鍵がかかっているハズのドアもこの日は運よく開いていて、音を立てずにゆっくりとドアを開けて部屋からでた。

部屋からでると、奥の部屋が見え、その部屋では行為を終えた男が連れ込まれたと思われる女の子の上に覆いかぶさり、寝息をたてている。

その男の下では女の子がまるでこの世界が終わったかのような虚ろな目をし、涙を流したまま、倒れていた。

その女の子も助けてあげたいと思ったのだけれど、ここでまた捕まったらと思い、足音を立てずに外に出られると思う扉を開けてそっと逃げ出した。


外に出ると真っ暗で周囲には人影も車もなく、ただ、広大な駐車場に1台のキャンピングカーが止まっているだけ。

目が外の暗さになれると星明りでなんとか周囲が見えるようになり、出られたという実感が湧くと同時に逃げなきゃという気持ちでいっぱいになってその場から走り出した。

どっちに進めばいいかなんてわからないけれど、下り坂の方を選べばきっと人の居る所に出られると信じて―――。

お読みいただきありがとうございます。

続きの「第 6 話 Lycoris (4)」は2020/07/08 19:00頃公開します。

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