【閑話】vergissmeinnicht - after story 1 (4)
お姉ちゃんの安全宣言を受けてから暫く走ったところで何かを思い出したかのようにお姉ちゃんに謝られた。
「あ・・・雪華ちゃん、ごめん。あの道、こんな時間帯に通っちゃダメだったわ。」
「へっ?」
間の抜けた返答をするとお姉ちゃんは苦笑いをしながら話を続ける。
「いや、私もすっかり忘れていたんだけど、半年前にあそこをバイクで通った時に検問やってたんだよね。しかも、その検問の理由があの街道沿いで白骨化しかけた死体が見つかったからって事で。」
私はもう何が何だかわからないよ状態に陥っていた。ポカーンとした状態でお姉ちゃんの話を聞き続けていた。
「実はさ、こっちに家建てたのはいいけど普段は向こう(さっきまで買い物に行ってた大都市にある大きな街)に住んでいるでしょ。それで2週間に1度、週末になると空気の入れ替えと掃除に通っているんだけどその帰り道、大都市に向かう上りの大渋滞避けるのにあの道使って帰るようにしてるのよ。それで検問に出くわしちゃって。流石に2週間に1度とはいえ通ってるというと面倒になるかなーってあんま通ってないって答えちゃったんだよね。それで忘れてた。」
しばし間が空き、お姉ちゃんは話を続ける。
「死体見つかって検問あって暫く経った頃なんだけど、見つかった死体の身元と犯人が分かったんだよね。どうも、私が普段住んでいる街の教師が不倫なのを隠して付き合っていた不倫相手から相当逆恨みされるような事をしたようで殺されて、あそこにビニールシートにくるまれた状態で破棄されたみたいなんだよね。」
親戚の家がある所からかなり離れた所に住んでいた私はそんな事件があった事は知らなかった。ましてや普段住んでいる所でとっている新聞は全国紙ではなく地元紙だし、その手の話題の大好きなワイドショーが流れている時間は学校に行っているから見られない。
「本当にごめんね。あの街道、昔からある街道で心霊スポットっていう話もあるけど、そんなオカルトじみた事は信じてなかったから、こんな経験するとは思ってもみなくて。」
このお姉ちゃんにして私あり。私もお姉ちゃんと同じでどーでもいいと思うとすぐに頭から抜けるタイプなので従姉妹とはいえ血は争えないし、ここまで謝られたら何も言えなかった。
それに、どう考えても私より怖かったのはお姉ちゃんだろう。あの危険な山道をずっと運転し続けてきたのだし。
そうこうしているうちに無事に親戚の家に着いた。
その時の時間は20:45。親戚一同集まったばかりという感じだったのもあってお咎めはなし。
私もお姉ちゃんもさっき経験した事はとっとと忘れ去りたかったのもあって、集まった従姉妹達と徹夜し2日の朝を迎えるまでの大ゲーム大会に突入した。
どちらかと言えば、こっちのゲーム大会の方が怖かったかもしれない。
よりによって『友情破壊ゲー』と言われるアレを買ってきてしまったのもあり、血で血を洗う従姉妹同士の抗争になるかという直前まで行ったからだ。まあ、そうはならずに済んだけど。
ただ1名、一番年下の従兄弟が生贄としてオモチャにされたお陰で回避されたとだけ語ってこの話はおしまいにしよう。
他にもお姉ちゃんと一緒に遊んでいると怖い経験をする事があったけれど、それはそれで封印で。
徹夜で某乙女ゲー完全クリア目指して朝方散歩に山の中を流れる渓流に降りて行ったら血塗れの人(そんな早朝に絶対に人が歩いているとは思えない場所で)に遭遇したとか書いても仕方ないでしょうからね。
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「唯!!それのどこが怖い話なのよ!!」
話が終わると速攻で麻衣からツッコミを食らった。怖い話が大好きな伊織ちゃんも呆れて苦笑いしている。
「唯ちゃん、どう考えても最後のオチって単なる笑い話じゃないのかなー?血で血を洗う抗争って、何してたんだろ。その人達。」
「伊織、それツッコんじゃいけないとこじゃ。」
元子ちゃんは冷静な顔で伊織ちゃんにツッコミをいれると、怪談話大会のハズが何時の間にか漫才状態になっていた。
場の空気を変えようと、普段はかけてない眼鏡をかけた麻美ちゃんがトーンを落とした声で何時の間にか伊織ちゃんが持っていた懐中電灯を奪っていたようで顔の下から照らしながらゆっくりと話し始める。
「ふふふ・・・怖い話っていうのはこういうものって話聞きたいでしょ・・・。それなら私の出番・・・ふふふ・・・」
この時、伊織ちゃんに続いて何時も明るい麻美ちゃんの知ってはいけない一面を知ってしまった気がした。
「これはね、私の中学時代の友達から聞いた話なんだけど、私達の今いるとこの隣の県のキャンプ場にある専門学校の生徒達5人が夏の思い出作りって事で遊びに行ったんだ。そこであった話なんだけど―――」
まさか、語り部 麻美ちゃん爆誕。その後もずっとずっと話は続いた。
「ちょうどその5人がいたキャンプ場のそばに、かなり昔に廃棄されたと思われる病院のような廃墟があってね、そこは危険だから立ち入ってはならないってキャンプ場の管理人さんにも言われていたのに5人は肝試しにちょうどいいって行っちゃったんだよね。とりあえず、車で行けばそんなに遠くないからって軽い気持ちで。ただ、5人がその廃墟がどんな所に建っているか分かってなかったみたいで着いて驚いたらしいんだ。まさかの断崖絶壁にあるなんて思わなかったから。車で行ける所まで行ったのは良いけど、それ以上近づこうと思ったら徒歩で行くしかなくて、5人は廃墟の方に藪を掻き分けながら恐る恐る近づいていったんだ―――」
私はこれ以上、麻美ちゃんの話は覚えていない。というか、思い出したくない。だって私が嫌いなJホラーって言われる世界にどんどん進んでいくのだもの。
ホラー映画も怪談話も苦手な私にとって、何時もの話し言葉なのに口調はどんどん恐ろしくなっていく麻美ちゃんのダークサイド面が怖かった。
何もないのに、何処から多数に見られている気がしたから。伊織ちゃんはとても喜んでたみたいだけど。
◇◆◇◆◇◆◇◆
「唯!起きなさい!!こんなとこで寝たら風邪ひくよ!!」
突然麻衣に揺らされて気がついた。完全に私の意識は途中で飛んでいたみたいで、今まで何も聞いてなかった。
「ほぇ?あれ、麻衣??」
「ほぇ?じゃないよ。もう怖い話は終わったから大丈夫だから。何時の間にか伊織ちゃんが寝ちゃったのもあって、元子ちゃんがこの辺でお開きにって片付けはじめて、今さっき片付け終わったとこだし。」
この時、怖い話が何時の間にか終わっていてくれて本当に良かったと心底思った。
そして、リビングのソファーをみるとすやすやと寝息をたてている伊織ちゃんがいた。
その隣には元子ちゃんが優しい目をしながら寝ている伊織ちゃんにそっと毛布を掛けて、別の空いているソファーで眠ろうとしていた。
「伊織の事は私が見ているから大丈夫だから。みんなは部屋でゆっくり休んで。」
その言葉に甘えて、私達は部屋に戻ってベットでゆっくりと眠る事にした。
翌朝、何もなかったかのようにみんな目を覚まし、帰るまでの間、とても楽しい時間を過ごした。
私は、昨日の夜の事は夢だったと思いたい。まさか、友達の意外な一面を知る事になるとは思わなかっただけに。
もし夢じゃなくてもいいかなーとも思う。誰しにも意外な一面性ってあるものだから。
これからも、このメンバーで楽しく付き合えますように。私は心からそう願った。楽しい時間を過ごせる仲間って素敵だもの。
実を言うと、なんとなく書いた怖い話もどきを修正・加筆して利用できないかなーと思いついたのがこの方法でした。
まぁあの後の唯がどうなったかもちょっと書こうかなーと思っていたのもあって、一石二鳥やでーって感じでこんな事に。
読んでみると結構グダグダなような気もします。スイマセン。(私の脳みそ&表現力のなさが原因です。反省しても反省しきれない・・・。)
それと、作中で麻美が話していた廃墟の話に関連した話が何故か完成済み(全48回)だったりして。
たぶんそのうちこっそりと公開するかもしれません。で公開した私は後悔をする事になるのは間違いないかと思います。
次話の更新予定は 今のところ未定です。決まり次第、Twitterやここの欄で報告します。
2020/06/23(追記)
お読みいただきありがとうございます。
次話は 2020/07/01 00:00頃 公開します。




