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recollection  作者: 朝霧雪華
第 2 話 Honeysuckle
3/62

第 2 話 Honeysuckle (1)

 【ご注意】


作品の構成の都合上、一部の人にとってはトラウマを思い出させる事になるような描写があるかもしれません。

また、全てフィクションであり、登場人物、時代背景、起きた事件など全て実在するものではありません。


1話辺りの文書量が多い話につきましては分割して投稿していきます。

次話の投稿につきましては筆者のTwitter ( @SekkaAsagiri ) または、下部コメント欄でご案内します。

(案内忘れも発生するかもしれませんが、お許しください。)

第 2 話 Honeysuckle


 窓際の面会者用のソファーのそばに立つ彼女に気がついた僕は、彼女に見惚れていた。

白銀色の髪が腰の辺りまで伸び、白く透き通るような肌、細くしなやかに伸びた手足―――着ている服も白一色で統一されていてこの国では見かけないようなデザインでありながら落ち着きがある。

『こんな綺麗な人、初めて見た―――』言葉にはしなかったけれど、内心そう思った。

見惚れていたのもあってか、気がつくのに遅くなってしまったのだが、彼女は何故ここにいるんだろうか?

ふとそんな疑問が湧き上がってくる。

「君は一体―――」

思わず言葉が口をついた。僕の漏らした言葉に気がついたのか彼女は

「―――ごめんなさい。」とうつむき謝るだけ。

何が何だかわからなかった。僕は思わず頭を悩ませてしまっていると彼女は

「あの時は助けてくださり、ありがとうございました―――。」そう言って頭を下げた。


正直言うと、頭を下げられるような事をした記憶がない。というか、何の事だろう?とまだ完全には回りきっていない頭で考える。

そんな中で思い出せたのは、あの会社からの帰りにあった事だった。

「もしかして、君はあの時の・・・」

それ以上言葉に詰まってしまい出てこない。

もし、あの時落ちてきたのが自殺をしようとしていた高校生ぐらいの女の子なら、何故ここにという疑問があるし、もしそうなら、ここは病院ではなく何なのだろうかという疑問もある。

その時、僕は彼女のあるモノが目に入った。それは、彼女の背中には大きな翼がみえた気がしたからだ。

右の翼は何かに襲われたのか赤く血に染まり折れかかっており、左の翼は辛うじて原型はとどめているようだけれど、痛ましい傷が多数あるようにみえた。


―――今、目の前にいる彼女はいったい―――人なのだろうか、それとも―――ダメだ、頭が回らない。

ただ、彼女が人でなくてもいいじゃないか、もしあの時落下してきたのが彼女で、彼女が助かったのなら―――。

「無事でよかった」

無意識のうちにそんな事を言っていた気がする。

ただただ、この光景が、この状況が夢であるかもしれない、夢であってほしい。

そんな事を考えているうちに何時の間にか、また僕の瞳は閉じ、眠りについていた。


◇◆◇◆◇◆◇◆


「―――さん、―――さん、分かりますか?」

誰かに声をかけられた。ゆっくりと眼を開けるとそこには看護師が心配そうな顔でみていた。

「気がつかれたと、ずっと看病をされていた方から声をかけられまして。」

看護師はそう言うと、脈拍と血圧を確認し、そばにある機器のデータを見ていた。

「大丈夫そうですね。ドクターにはこちらから伝えておきます。」

「あぁ、はい・・・。」

僕はわけがわからないまま、空返事をしていた。

「ここに運ばれてから2週間、ずっと意識を失ったままだったんですよ。」

「そうでしたか・・・。すいません。意識が今もはっきりしないとこがあって。」

思い出そうとしても、何故、ここに運ばれてきたのかわからない。上司達から「無理せず、帰れ」と言われて会社をでて家に向かっていたハズだ。

「駅前で事件があって、その現場で突然倒れて運ばれてきたのですから、仕方ないですよ。まずは、安静にしていてください。」

「わかりました・・・」

駅前の事件?突然倒れた??僕には違う事が起きていたような気がする。

「それにしても、秋月さんが倒れて運ばれてきたのを聞いて、顔面蒼白になりながら心配そうにこちらに来られた女性、凄く綺麗で素敵な方ですね。もしかして、奥さんですか?それとも彼女さん??あの見た感じの若さだと彼女さんなのかな?」

「えっと。そ、その・・・」

「倒れてからずっとこちらでつきっきりで看病なされていたのですよ。うちの病院は個室に関してはそれが可能ですし。」

看護師が笑いながらそんな事を言ってきたのだが、何の事やらさっぱり理解できていなかった。

奥さん?彼女??だ、ダメだ。冷静にならないと。僕が倒れてたと言われる日から2週間の間に何が起きたのか、全く理解できていない。

ふと室内が気になり、見渡すと、看護師の邪魔にならないようにと少し離れた場所で僕を心配そうに見つめる姿があった。

あれは彼女。夢とも現実ともわからない状態でみた人物。あの状況では翼があるように見えたのだけれど、今はそんなものは見えない。あれは単なる僕の夢だったのだろう。

そうしていると、彼女と視線が合った。思わず頭を下げると、彼女は安心したのか顔が緩み、少し涙目になりながらも優しい微笑みを浮かべている。

思わず、可愛いと思ってしまった。口には出さなかったけれど。

お読みいただきありがとうございます。

続きの「第 2 話 Honeysuckle (2)」は2020/05/16 04:00頃公開します。

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