【閑話】Gypsophila - after story 1 (1)
【ご注意】
作品の構成の都合上、一部の人にとってはトラウマを思い出させる事になるような描写があるかもしれません。
また、全てフィクションであり、登場人物、時代背景、起きた事件など全て実在するものではありません。
1話辺りの文書量が多い話につきましては分割して投稿していきます。
次話の投稿につきましては筆者のTwitter ( @SekkaAsagiri ) または、下部コメント欄でご案内します。
(案内忘れも発生するかもしれませんが、お許しください。)
【閑話】Gypsophila - after story 1
私はカフェを出るとバス停に急いだ。ちょうどタイミングよく駅行きのバスが来ていたのでそれに乗り、駅を目指す。
カフェのあった場所からは、何十にも連なったカーブのある坂道を下り、御用邸や世界的に有名な観光地を通り過ぎなければならない。
土日祝日だったならば、道は大混雑し、駅に着くまでどれぐらいの時間がかかるのかわからなかっただろう。
幸い平日だった事もあり、道は比較的空いており、スムーズに駅に向かっているようであった。
―――1分でも1秒でも早く街に戻り、絢が消えた神社を調べたい―――そういう気持ちが、この駅に向かう時間を長く感じさせていた。
駅に着くと、最も早い時間で街に帰れる電車を探した。
時間さえ早ければ、電車の座席はどこでも構わない。
到着駅は来る時に乗った駅ではないが、この私鉄が走っている路線の終着駅があるのは街のある都市。そこから地下鉄を乗り継いでいけば、あの神社へは日のあるうちに行けるだろう。
そう判断した私は急いで切符を購入し、特急電車に飛び乗った。
2時間ほどで終着駅に着くと、鉄道系電子マネーを財布から取り出し、早歩きで地下鉄に向かい、何度かの乗り換えをして目的の神社にたどり着いた。
まだ、日は落ちていない。
あの日の光景を思い出し、絢が消えていった方向へ周囲と足元に注意しながら進んでいく。
鳥居を過ぎて、何本目かは忘れてしまったが灯篭を過ぎた辺りで足元で何かが輝くのが見えた。
ゆっくりと注意しながら、石畳をみる。
そこには、絢が小さい頃からつけていたお守りと言っていた変わった石のついたペンダントと、その隣には漆黒のような今にも吸い込まれそうな色をした石が落ちていた。
周囲を気にしながら、落ちていたペンダントを拾い上げ確認すると、無数のヒビが走っており今にも砕け散りそうになっていた。
絢いわく「ひいおばあちゃんから貰った絶対に傷がつかないお守り」のハズであったのに。
実際に子供心に本当かな―?と二人で傷をつけようと何度もしたのだが、傷がつく事は絶対になかった。
傷をつけようとカッターの刃をあてれば刃こぼれをおこし2度と使いものにならなくなる、ボールペンの芯で思いっきりつついてもボールペンが曲がってしまい2度と書けなくなるなど色々とあった石。それがこのような事になるなんて信じられなかった。
そして、ペンダントの傍に落ちていた漆黒の色をした石・・・手に取った瞬間、今までに襲われた事がないほどの悪寒と頭痛、吐き気が全身を駆け巡ったほどだった。
素手でこれに触ってはいけない―――そう察した私は持っていたハンカチで包み、ペンダントとは別の場所に入れておく事にした。
それから日が暮れるまで神社を調べてみたが、他に手掛かりとなるようなものは見つかる様子もなく、その場を後にして、絢の家に向かう事にした。
この時間なら、きっと絢の両親は帰宅しているハズ。そんな予感がしたからだ。
電車を乗り継ぎ、実家と絢の家のある街に向かった。
神社のある街からはそれほど遠くない。神社を出てから40分もかからない程度で絢の家の前についた。
まずは一息をつく。
本来であれば、絢と二人で絢の両親とは話がしたかったが今はそんな場合じゃない。
覚悟を決めてインターホンを押す。
そうすると、私が来るのをわかっていたかのように、家の扉が開いた。
一人の男性が私に声をかけてくる。
「淳君、ひさしぶりだね。そろそろ来る頃かと思っていたよ。」
その男性は絢の父親であった。
「おひさしぶりです。小さい頃から色々とお世話になっています。」
そういって頭を下げると絢の父親がそんな堅苦しい挨拶をしないでもいいのにという顔をされてしまった。
「まぁ、上がって。話があるんだろう?」
「あ、はい。それでは失礼します。」
小さい頃から良く来ていた家とはいえ、このような形で来る事になるとは思っていなかったのもあり、少々気不味いのもあった。
絢の父に案内されるまま、リビングに通される。
そこには絢に似た女性―絢の母親が待っていたのだが、子供の頃や数年前にみた姿とは少し違っていた。
子供の頃や数年前にみた姿は、どこをどうみても普通の人であったはずなのに、今の姿には耳が生え、尻尾が生えていたからだ。
「淳君、おひさしぶり。この姿を見せるのは初めてですね。」
絢の母親はそういうと、子供の頃や数年前に見た時と同じ笑顔をしてくれた。
「お、おひさしぶりです・・・。こ、これはいったい・・・。」
私が吃驚した顔をしていると、絢の父が絢の母の耳をふさふさといじりはじめた。
「この触り心地・・・何時になってもいいものだ・・・。」
そうつぶやいた途端、どこから隠し持っていたかはわからないハリセンが父の顔面に飛ぶ。
『スパーン!!』
ものすごく良い音が部屋中に炸裂する。
「あなた、こんな時に何をしているのですか!!春太郎は本当に変わらないのだから・・・。そんなだから千歳に間違って伝わった時なんて大変な事になったのに。」
「うぅ・・・すまん、ついな。絢が産まれてからというもの千秋は触らせてくれなかったじゃないか。そんなだから昔を思い出して無性に触りたくなって。」
「そんな事は今はいいのです!!・・・そんなに触りたかったら二人の時に言ってくれればいいのに・・・」
絢の両親は、かなり若い分類に入るだろう。昔聞いた話だと、絢は、絢の母が19の時に産まれたと聞いた覚えがある。
絢の父と母は同じ歳とも。ただ、二人のなりそめは絢自身も聞いた事がないと言っていた事をふと思い出す。
今になって思えば、知らないのも仕方ないのかもしれない。
そんな考えに耽っていると、場の空気を変えないとと思ったのか絢の父、春太郎が話を切り出した。
「・・・淳君、見て驚いたかも知れない。」
なんて答えていいのかわからなかった。長い沈黙の末、絢の母、千秋が話し出す。
「・・・私の正体は見てのとうり。人と狐の魂を持つの。ねえ、あなた、淳君になら私達の馴れ初めなど話してしまった方がいいのかもしれないわね。」
「ああ、そうだね。そこは俺から話す事にしよう―――」
絢が知る事のなかった絢の両親の秘密―――私はそれを知る事となる。
お読みいただきありがとうございます。
続きの「【閑話】Gypsophila - after story 1 (2)」は2020/06/02 00:00頃公開します。
また、誤字報告&評価、本当にありがとうございます。
基本的に予約投稿して放置プレイしてる事が多いので気がつくのが遅くて申し訳ございません。
(TwitterやLINEはチェックしてますが、投稿作業する時以外は見てない事が多くてごめんなさい。)