①-6
目を覚ますと白い照明が目に入る。どうやらベッドの上に寝ているようだ。
まあ、硬い地面の牢屋じゃないだけ良かったかな?
「ここは…?」
「やっと起きたか」
目を開けたばかりで周りがあまり見えなかったが、聞き覚えのある声がした方を向く。
「よう、天才のラボへようこそ」
話しかけてきた男の輪郭がだんだんと見えてきて、その姿に驚いた。
「空海!?なんでお前が─」
と、言ったところで今の自分がマスクを付けていないことに気がついた。
焦って手で顔を隠したが、
「今更遅い遅い。それにしても、まさか正義の不審者の正体がお前だったとはな」
と、空海が笑いながら言う。
「違う、ヒーローだ!」
突っ込んだのは良いが僕はさっきのことを思い出し、
「まて!まさか空海…お前が犯人なのか!?」
僕はベッドの上にしゃがむようにして立ち、いつでも相手を倒せるよに構える。
「まてまて、違う違う。あれは俺の自作自演」
「はあ?」
「前から噂されてはいたが、どうにも街のヒーロー(笑)の動きが人間離れしているからな。研究材料にちょっと血を頂きたかったんだ。あと、簡単な全身の検査とな」
「(笑)ってなんだ」
「まあ、それで捕まえようと一芝居打ったところに」
「無視したな?まあいいよ。それで、その三文芝居に騙された間抜けな僕が現れた?」
「そう、その通りだ」
その話を聞いて頭を抱える。唯一の友達に間抜けと思われたのもあるが、今はそれは置いておく。
今まで秘密にしてきたことがバレてしまったのだ。それに相手は変態。解剖されるかもしれない…。
「おいおい、何をそんな頭を抱えて」
「こっちは父さんしか知らない、とても重大な秘密がバレたんだ。頭くらい抱えるさ…」
「大丈夫だ、秘密は守る」
「解剖は?」
「しない。まてまて、解剖ってお前は俺を一体何だと思ってやがる。…簡単な検査はいいよな?」
「空海は天才の変態だろ?検査は痛くしないならいいさ」
「なら、オッケーだ。交渉成立」
空海は僕に近づいて手を差し出した。
「握手だよ。そんな変なことはしないって」
僕はその言葉を素直に受け取り、固く握手を交わした。
『そろそろ喋ってもよろしいですか?』
突然、女の人の声がした。
どこからともなくだ。
「誰だ!」
「あー、そんなに焦るな。大丈夫だ、俺の助手―――アビスだ」