①-3
今の季節は夏、日差しが眩しくなって朝から晩まで暑い。日本の良いところでもありだめなところだよな、四季ってものはさ。
そしてここはとある高等学校。
今、1日の授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。
と、そうだ。まずは自己紹介をしないとね。僕の名前は湊、高校二年生だ。名前は女っぽいがこれでも男だから間違えないようにね。
まあ確かに、身長は165センチで低いし、見た目もパッとしない野暮ったい人間だから、女の子に間違えようがないと思うけどね。
でも、脱げばすごいぞ。所謂着痩せするタイプってやつだ。まあ、脱ぐことなんて無いからモテることは無いんだけどね。
それに僕は人とのコミュニケーションがあまりうまく取れないし、この力を知られないように出来るだけ仲のいい友達、親友ってやつを作って来なかったから、そもそも女の子に言い寄られても困ってしまうだろう。
だからだろう。クラスじゃ浮いている。こんなんじゃ女の子から声をかけられるどころか声をかけることも出来ないだろうな。
そんなことを心で言っているうちに気がつけばクラスメイトたちはチャイムの音を皮切りに荷物を持って席を立ち始める。教師はまだ終わりを告げては居ないがその様子をみてため息を吐き、
「では今日はここまでとする。気をつけて帰宅するように」
と、おきまりの定型文をただ口からだす。
生徒たちのこの後の予定はバラバラだ。
部活動に精をだす者もいれば帰りに何処かに寄って行こうと相談する生徒もいる。もちろん何もせずにそのまま帰る生徒も。
ちなみに僕はそのまま帰る生徒の一人だ。
「それじゃあ、また明日。元気に来いよ!湊」
今、僕に声をかけたのは学校一、いや、自称日本一優秀な科学者の空海だ。
そして、その見た目も学校一だ。
身長は180センチと高い上に科学者のくせにつねに最高のパフォーマンスを出すためとかで、最低限は引き締まった肉体を持っている。
なのにだ、髪型は切るのが面倒と言う理由で伸ばしたままでテキトーに束ねてしまっている。
それじゃあ、まるで浮浪者の様だぞ?
だけど、まあ。悲しい(俺にとっては悔しい)ことにそんな髪型でもかっこよく見えてしまう。
その見た目を少しはこっちにくれないものだろうか…。
「ああ、君こそ実験に失敗して爆発頭のパーマにならない様にね」
「ハッ!オレを誰だと思っていやがる!史上最高の天才、空海様だぞ!」
自信満々に、堂々と言い放つ。
誰だと思って、とか、そんな事を言えるような人は中々いないと思うけどね。
そして、少し、本当に少しだけど、ムカつくことに空海はかなり頭がいい。まさに天才と呼ぶにふさわしい。
だろうけどこの痛い発言のせいで天才から変態へとグレードアップさせている。まあ、そのお陰もあって浮いているもの通し仲は良い。今まで生きてきた人生で一番の友だろう。
空海はハハハ!と高笑いをしながら教室を出ていった。きっと今日もどこかで変な実験でもするのだろう。
僕もそろそろ帰るとしよう。
まあ、そのまま帰宅するふりではあるんだけどね。