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その後の事を語るのはあまりにも簡単だろう。
彼らは皮肉にもこの戦いで、実の父親との戦いで、この街のヒーローだと広く、世界に知れ渡った。
「ジャック!次はどこに行けばいい?」
「ああ、少し待ってくれ。少し可笑しなことがあってな……」
ジャック・ラビットが飛び跳ねるのを止め、ビルの屋上に立つ。
「どうかしたの?」
「いや、ここから離れてる所なんだが、銀行とその周りの監視カメラ全部の映像が数分間完全に消えていたらしい」
「電波障害とか、太陽風がどうのこうの?」
「分からねえ。だが、今調べてみても特に問題はなさそうだ。すまない、関係のない事で引き留めた」
「いやいや、気になった事はどんどん調べていかないとね」
『談笑中に失礼します。南に3キロ行ったところでひき逃げが発生しました』
「頼んだぞ」
「任せてよ!」
これは僕がヒーローになりたいと願い、叶えようとする話だ。
だって、僕はまだ、本当のヒーローではないだろうから。
「やあやあ、ご機嫌麗しゅう」
帽子の男が楽しそうに―――
「魔法に興味はありませんか?」




