①-29
それからだろう。僕たちがジャック・ラビットとしての、ヒーローとしての活動をし始めたのは。
学校へ行き、放課後には2人でラボに帰る。そして、それからヒーローとしての活動を毎日していた。
いい事なのか、悪い事なのか。ジャック・ラビットの活動は毎日のようにしていた。
だけど、あの日以降からマシンに関する事件は一切発生しなかった。
『次の角を左に』
「了解!」
スーツを着て、アビスに指示された方へと飛び跳ね、移動する。
「こちらジャック。今から行く現場だが、道端で女性からスリをしようとした所を失敗してそのままその女性をナイフで脅している様子だ。もう少し急げそうかラビット?」
「なら、使っていい?」
「分かった。ただし、限界いっぱいまで使うなよ?モード・マーチヘア」
『モード変更、承認。マーチヘア作動』
そして、スーツの形が変わる。僕はそれを感じ取ると、すぐに足に力を入れさっきよりも速いスピードで現場へと駆け付けた。
「さっさと金目のモンだせ!」
男が40代ほどの女性を脅していた。
だが、ジャック・ラビットは普通の人間では目で追えない速度で近づき、ナイフを取り上げ、女性を片手で抱え距離を取った。
「マーチヘア解除」
『了解しました。モード変更、終了』
シューと言う音を上げながら、スーツが元の形へと戻っていった。
「はい、強盗さんはそこまで」
「な、なんだてめえ!」
男が右手に持っていると思い込んでいるナイフをジャック・ラビットに向け、狼狽えていた。
「ねえ、ただ手をかざしてれうだけだと脅しにもならないよ?」
「あ!?」
男が気が付いた時にはもう遅い。拘束用のワイヤーで男を縛った。
「それじゃあ、私はこれで」
「あ、ありがとうございます」
女性がお礼を言う。
「いえ、ヒーローとして当然の事をしたまでです」
そう言い残し、ジャック・ラビットは去っていった。
と、そうだ。そう言えば空海にも何かネームが必要だって話をしていたよね。それが決まったんだ。
まあ、さっき呼んでた通りだけど、彼はジャック。それで僕はラビット。単純だけど、僕たちは2人いてジャック・ラビットだからね。
それと、マーチヘア、時間制限付き強化フォームってところかな。それは基本的に空海の承認が無いと使えないらしい。
理由は使いすぎると僕とスーツへの負担が大きいからだそうだ。
だから、使う時は空海が承認してくれないとマーチヘアには出来ない。まあ、なったところでさっきみたいに限界までは使わないけどね。
これが、あの日から今までの僕、いや、私たちの日常だ。




