①-24
「俺を呼んだか?」
見覚えのあるスーツがその暴れまわる男に近づいて行く。
「ジャアァァック・ラビット!」
「何回も呼ぶんじゃねえ。うるせえな」
聞き覚えのある声がそのスーツを着ていた。
「前もって教えられてた形と一緒だな?さあて、あとはお前を潰せばコレを報酬に貰えるせェ!」
「出来るものならな」
男が近くのガレキを無造作に投げつける。
僕から言わせれば、―――スーツを着ている僕ならば―――、それは簡単に避けることができる攻撃だった。
だが、それはあくまでも僕が『普通』ではないからで、
「っ!クソが!」
今のジャック・ラビットではそれを受け止めるしかできなかった。
「オイオイ、聞いてた話とちげえナァ。もっとすばしっこいって話だったぞ?」
「ハッ!てめえ程度本気を出す必要はねえんだよ!」
「そうかよォ!」
男は軽口にワザと乗るように、近くにある物なんでもを投げ付け始めた。
「っ!」
ジャック・ラビットは先ほどの言葉とは裏腹に見るからに限界がすでに近かった。
防戦一方でいつ倒されてもおかしくはない。
更に言えば、その戦っている姿で、すでにそのスーツを使いこなせていない事は誰にでも分かるだろう。相手のスーツはガタイが良く、パワーがある。その分、スピードは落ちているだろう。
比べてこちらはシュッとした形で見るからにスピード、テクニカル型だろう。
いや、実際はパワーもあるが。それはあくまでも僕が使った場合だ。普通でない人間が着たからこその反則技の様なものだ。
「はぁ……」
男は突然がれきを投げるのを止めた。まるでそれが飽きたかのようだ。
だが、飽きたのはガレキを投げる事ではなく、
「もういいや。思ってたよりも弱いしツマンネェ」
「何だと!?」
「じゃ、今度は弱いくせに粋がったりすんなよ」
男はひときわ大きいガレキを取り、無造作に雑ではなく、明確に殺意を持ってジャック・ラビットにそれを投げつけた。
大きいおかげだろう。先ほどのガレキよりかは少しだけ投げるまでの動作が遅く、投げた速度も少し落ちていた。
もちろん、それを見逃さずにジャック・ラビットは避けようと左へと動いていた。でも、間に合わないだろう。きっと、
ガレキに押しつぶされる。まあ、スーツの耐久力を考えれば、無傷とはいかないけれど、せいぜい骨折程度で済むだろう。
「でも、どうして僕の足は動いたんだろうね!」




