①-17
『そこを右に』
いや、これ便利だな。
僕は走りながら感心した。空海はやっぱりすごい科学者だと思う。普通人工知能なんて作れないからね。
『目標まであと200メートル』
「オッケー」
目視をする事が出来るくらいまでの距離まで来た。
「多分、あの男かな?」
女性物のバッグを大事そうに抱きかかえて走っている男が見える。
「人の物なのにあんなに抱きしめて。それともそういう性癖なのかな?」
僕はスピードを上げ、男の上を飛んでいき、目の前に着地する。
「やっほー、随分かわいらしいバッグをお持ちで」
「な、なんだ!?」
男は明らかに動揺していた。それはそうか、いきなり目の前に人が現れたんだから。
「退け!」
男は僕を殴ろうと拳を振り上げる、上げるけど、そんなに大振りだと僕が先に殴っちゃうけどなあ。
「えい」
軽い力で相手のお腹を殴る。
すると相手はその場にうずくまってしまった。僕はすかさずバッグを奪い取る。
「これは返してもらうよ」
「くそぉ……、こんなヘンテコなやつに……」
男はお腹を押さえ蹲りながらも悪態をついてきた。まあ、確かに昼間だとこんな格好しか出来ないけどさ。
近くにあるもので適当に男を縛っていると、バッグを取られた老人がやってきた。
「はい、おばあさん。もう取られちゃだめだよ?」
「ええ、ありがとうございます」
遠くからサイレンの音が聞こえてくる。急いでここを離れないと。
『あと5分ほどで警察が到着します』
「はいはい、それじゃあまたね」
僕は急いでビルの屋上までモノを伝って飛んでいく。あとはいつものように上からパトロールをしよう。
『ここから東に800メートルの所で事故が発生』
「え!、もう次!?」
その後も何件か事件事故が起こり、僕はアビスの指示で急いで向かった。
けど、今日は妙に多い日だなぁ。