①-16
学校が終わり、ラボにまず向かった僕は学校で会えなかった空海と話をしようと決意する。
父親の事を言おうと。そう決めたのだ。
それにしても、どうして空海は学校に来なかったのだろうか。
「空海いる?」
僕は中に入りながら名前を呼ぶ。だけど、返事をする気配はなく、試しにもう一人(?)の名前を呼んでみた。
「アビス……?」
『はい、何でしょうか』
「おお、びっくりした」
試しにアビスを呼んでみれば反応が返ってきた。
『すみませんが、ただいま空海さまは席を外しています』
「そうか」
仕方ない、また今度にしよう。
「それじゃ、僕も一旦出かけるよ」
そう言いながら、僕は前のスーツ(笑)に着替える。今となっては笑えないくらいにダサいけどね。一旦アレを着てしまうとどうしても、前に来ていたのはただの服でしかないと思い知らされる。
『少しお待ちを』
「どうしたの?」
アビスが僕を呼び止める。すると、床から小さな箱が僕の腰くらいの高さまでせり上がってきた。
『こちらをどうぞ。空海さまが普段の時用にと』
箱を開けてみると縁が細身のおしゃれそうな眼鏡が入っていた。でも、僕は目が悪くはないので何の意味があるのかと思い、つけるが、
『ようこそ、改めましてアビスです』
声が聞こえてきた。いや、実際には聞こえては来ていないが、不思議な感覚だ。
『骨伝導を使い、私の声を届けております。なので、他の人に聞かれる心配はありません』
「へえ、そうなんだ。っていうか、これってスーツと同じ?」
『いえ、同じではありません。こちらで出来るのは犯人の顔の照合や今見ているものの録画など、あくまでこちらとつながって出来ることだけです。暗視や視力聴覚強化は出来ません」
そうなのか。
「でも、せっかく作るならこの見た目でスーツと同じ性能のが欲しかったよ」
『空海さまがもしそういったのなら伝えてほしいと言われていた言伝があります」
「なんだい?」
『俺はセンスのないモノは作りたくはない。それに、俺のいないところで使われて無茶をされたら困る。との事です』
「そうかい」
なんだろう、信用が無い気がする。
でも、これは作ってくれたんだ。感謝はしないとね。
『近くで老人のバッグを奪った男が逃走中』
「え?そんな機能も付いてるの?」
『ええ、ですので急いでください』
「ああ、分かったよ」