①-10
「おかえり、湊。ダッセエ服着てんのな」
「ただいま、どう?誰か変な人は居た?」
ラボについた僕はスーツを着ながら空海と話していた。
「お前を抜かせば、今のところはないな」
僕は早くこのスーツの性能を試したくてウズウズしていた。
が、ひとつあることを思い出す。
「そういえば、空海用でコレを作ればふたりで出来て効率もいいんじゃないの?」
コレとはスーツの事だ。空海の腕があれば自分用を作るのなんて簡単だろう。
「もちろん最初はそのつもりだったさ。少しの苦痛は耐えてやるつもりだった。だが、俺はあくまで科学者だ。より効率の良い方法があればそっちにする。俺なんかよりも湊、お前のほうが遥かにそれを使いこなせる。俺はそう信じている。それに俺が表に出張ってもお前ほど動けないから足を引っ張って終わるさ」
「そうか、そうだったのか…。期待に答えられるようにするよ」
「おう、そうしてくれ。あと、名前も考えておいたぞ」
「は!?」
僕は驚いた、そりゃそうだ。それは僕が楽しみに考えていたことだからだ。
「名前はジャック・ラビット。意味は野うさぎだ。そのままの意味だけどカッコイイだろ?」
「野うさぎって…」
確かにスーツのイメージに合うけどさ。
だけど、だけどさ
「自分で決めたかったなぁ」
肩をガクリと下げ、うなだれる。
まあ、いいか。僕は今日からヒーロー、ジャック・ラビットだ。
新たに覚悟を決めているとアビスが、
『町外れの倉庫に大型のトラックが向かっているみたいです。この時間帯にあちらの方向に行く予定のトラックはないので、例の物が乗っている確率は92パーセントほど』
アビスが簡単な説明をする。
空海は手を一回叩き、気持ちを切り替える。
「よし、初陣だ。行ってこい!ジャック・ラビット!!」
「了解!」
僕は外に出てうさぎのように飛んだ。飛んだけど、
「すごい!着ていたときから思ってはいたけど、体がすごく軽い!」
僕がラボに居る空海に話しかけた。
「そりゃそうだ。普通の人間でもかなりの動きを補強、増強出来るものをお前専用にチューンしたからな。今までの比じゃないくらいの動きが出来る」
確かにその通りだった。今までは何個か仲介地点を経由してビルの屋上まで行っていたが、コレを使えば一回で行ける。
足も早くなっているし、この様子だと腕力も相当なものになっているだろう。
『もうすぐ、目的のトラックが見えてきます』
「了解、アビス!」
画面に矢印が出てきてトラックの方向を示しているようだ。
僕はそっちに向かって飛ぶ。
「あれだな…。空海見えてる?」
「ああ、こっちにもジャック・ラビットが見ている様に写ってるよ。つーか、俺にもヒーローネーム、いやコードネームか?必要じゃねえかな」
「それはまた今度考えようよ」